再稼働には、専門家の判断、東海村の判断、県議会の判断の3つが必要
 6月18日、橋本昌茨城県知事の定例記者会見が行われ、東海第二原子力発電所の再稼働について、「専門家(県原子力安全対策委員会)、東海村、県議会の3者のうち一つでも再稼働に反対すれば再稼働を認めない」との考えを明らかにしました。
 「大飯原発が再稼働が東海第二原発の再稼働に何らかの影響を及ぼすか」との記者の質問に、橋本知事は「必ずしも大飯が再稼働したから東海も再稼働に動き出すということではない」と、その影響を否定しました。
 その上で、「東海第二の再稼働については、県の技術的な委員会の技術的な判断、そして地元議会、いわゆる東海村の判断、そして県議会の判断というステップを踏まれて最終的な知事の判断になるという、福井県知事のステップというのは東海村にも当てはまるのか」との質問に対して、「再稼働の要請があれば、そうゆうことは十分に考えられます」と答えました。また「(再稼働の)要請があれば、まず、技術的な判断もあり、そして、まず村側の判断があり、そして県議会の判断があって、最終的に知事の判断というスケジュールが考えられるということか」との問いかけに、「そのようにしていくのが筋だろうと思っています」としました。
 さらに、別の記者が「(専門家の判断、東海村の判断、県議会の判断の)全部が必ず揃わないと(再稼働を)容認をしないということか?」と更に質問すると、橋本知事は「容認することはなかなか難しいと思います」と明言しました。
 現状では、東海第2原発の再稼働を国が要請してくる可能性は、極めて低いと言えます。さらに、橋本知事の「専門家の判断、東海村の判断、県議会の判断の3つが全て揃わないと、再稼働を容認をしない」との姿勢は、高く評価したいと思います。
 専門家の判断はどのような結果となるか想定できません。県議会は最大会派のいばらき自民党と第2会派の民主党が再稼働に積極的な判断をする可能性があります(もちろん、自民党、民主党の中にも再稼働に強く反対する議員はいます)。井手よしひろ県議ら公明党は、現状での再稼働は認められないという立場ですが、再稼働反対派が多数を占められる確証はありません。一方、東海村は村上達也村長が東海第二原発の廃炉を求めており、再稼働の了解を得ることは村上村長が首長を務める限り極めて困難です。橋本知事の発言は、再稼働に一段と高いハードルを課したことになります。
橋本昌茨城県知事の定例記者会見
2012/6/19
毎日(幹事社):大飯原発の再稼働のことをお伺いしますが、16日に正式に再稼働が決まって動きが出ておりますが、これもコメントはいただいておりますが、改めてご所見を伺えませんでしょうか。
知事:野田総理大臣のほうで(大飯原発の)安全が確認できているということを表明され、それをもとにして福井県の原子力安全専門委員会が十分な技術的、科学的検討を行って、それを踏まえた後に、おおい町、あるいはまた、福井県議会の意見も踏まえ、西川知事が判断されたことでありますので、私どもとしては、西川知事は大変苦労が多かったと思いますが、それを評価するといいますか、見守っていきたいと思っております。
毎日(幹事社):再稼働の条件として、西川知事が、首相に、直接国民に訴えるということを求めていらっしゃって、それを受けて首相が安全だという会見をされたという流れがあるかと思うのですが、橋本知事として、そのような手法にどのようなお考えをお持ちでしょうか。
知事:安全であることと住民の理解を得られることというのが(再稼働の)大きな前提であるということは、私は常々申し上げてきているところであります。そういう中で、安全について国として確約できるのか、あるいはまた、特に住民の理解という点で、電力消費地の方々の理解も得られるのかどうか、そういうことについて西川知事は大変危惧していたのだろうと思います。特に関西地方からいろいろな意見が出されていたものですから、そこについては、西川知事としては、どうしても原子力の必要性について国に強く言っていただきたかったのではないかと思っております。
毎日(幹事社):周辺の世論やそういう今回の動きが、知事自身が東海原発を判断される場合にはご参考になるというお考えでしょうか。
知事:本県の場合、17万人以上の方の(東海第二発電所の廃炉を求める)署名が来ておりますから、これは当然、判断する場合の大きなポイントになってくると思います。
朝日:関連で、大飯原発の再稼働の件ですが、国では安全性はある程度現時点では確認できたということを言っておられますが、例えば、非常用の拠点は免震棟ができるのはまだまだ数年先ですし、安全上かなり早いのではないかという声もいろいろな方面からありますが、それについてはいかがお考えでしょうか。
知事:免震事務棟というのは何か非常事態が起きたときに対応するための施設ということでありますので、(福島第一原子力発電所事故のような)非常事態が起きる可能性はほとんどないのではないかということで、今回、安全を確認したということになったのだと思います。そこは我々としてはその主張を理解していきたいと思います。
朝日:非常事態が起きる可能性はほとんどないという想定そのものにちょっと違和感を感じるという国民もかなりの数いるかと思うのですが、それについてはいかがでしょうか。
知事:そこは福島の事故も踏まええた形で、暫定的かもしれませんが、新しい安全基準をつくって、それに則って判断したということでありますから、我々、それ以上のことは申し上げられません。
茨城A:原子力の規制組織として、原子力規制委員会が発足する見通しとなっておりますが、知事はどのように評価されていますか。知事:環境省の外局として置くよりは、今度(国家行政組織法第3条に基づく委員会)のほうが形としてはいいのかなと思っております。独立性が高まったという点では評価したいと思います。
茨城A:その中で、廃炉が40年との話を、発足後に見直す余地があるということで、この辺が気になるとの指摘もされていますが、知事のお考えは。
知事:まだそういった議論は始まっておりませんので何とも言いようがありませんが、十分に専門家の間で議論をしていただきたいと思っております。政治があまり口を出さない形で、専門家がきちんと議論していけばいいのだろうと思います。
茨城A:40年の規制自体を設けることについてのお考えはいかがでしょうか。
知事:40年ということがどういった根拠に基づくのかというのは必ずしもはっきり示されてはいないのですが、これまでの経験等からして、40年というものを一定の基準として示されているのだと思います。これについても、原子力規制委員会の中で、仮に必要があれば、議論していかれればいいのではないかと思います。
NHK:大飯原発の再稼働についてなのですが、東海第二原発の再稼働をするかどうかということがずっと懸案になっていますが、今回、大飯原発が再稼働したことというのは、東海第二原発が再稼働することに何らかの影響を及ぼすと知事はお考えでしょうか。
知事:これは、総理も、今後、具体的に個別の場所については丁寧に安全性を判断していくということを先般の会見で言っておられますので、必ずしも大飯が再稼働したから東海も再稼働に動き出すということではないと思います。
 ただ、大飯で適用した基準というものが、ある程度、ほかにも適用されていく可能性は大きいと思います。
NHK:例えば、そういう意味では、東海第二原発に当てはまる基準なり状況というものはあると考えられますか。
知事:それは具体にいろいろな項目があると思いますので、先般も(総理が)新しい安全基準、暫定基準ということを言っておられますが、それをひとつひとつチェックしていくことも必要だと思いますし、原子力規制委員会がスタートすれば、そこで新しい安全基準についても本格的な検討がなされていくと思いますので、それを踏まえての判断になってくると思います。
NHK:現時点では特に東海第二原発の再稼働についての国からの情報はないということでしょうか。
知事:ありません。
茨城C:今の関連なのですが、東海第二の再稼働につきまして、県の技術的な委員会の技術的な判断、そして地元議会、いわゆる東海村の判断、そして県議会の判断というステップを踏まれて最終的な知事の判断になるというふうな、福井県知事のステップというのは東海村にも当てはまるのでしょうか。
知事:再稼働の要請があれば、そういうことは十分に考えられます。
茨城C:要請があれば、まず、技術的な判断もあり、そして、まず村側の判断があり、そして県議会の判断があって、最終的に知事の判断というスケジュールが考えられるということでしょうか。
知事:私としては、そのようにしていくのが筋だろうと思っております。
朝日:先ほどの東海第二の再稼働についてのプロセスで、県の技術的判断なり、東海村での議論なり、県議会での議論なり、それを踏まえた上での知事のご決断になるということでしたが、それぞれのステップで、例えば、1カ所どこかで再稼働はしないほうがいいのではないかという結論が出た場合は、それはどうされるのでしょうか。
知事:それはその段階で判断します。
朝日:全部が必ず揃わないと容認をしないというわけではないということでしょうか。
知事:容認することはなかなか難しいと思います。
朝日:全部が揃わないと。
知事:はい。