参考写真 6月26日、社会保障と税の一体改革関連法案が衆議院で採決され、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決されました。賛成は363票、反対は96票、民主党内から57人が反対票を投じ造反しました。
 採決に先立ち行われた討論では、公明党から斉藤鉄夫幹事長代理が登壇し、賛成討論を行いました。
 斉藤幹事長代理は、まず「消費税増税の前提として、社会保障の全体像を示すことや景気・経済対策、低所得者対策などの制度設計を明確にする必要がある、そのために、協議を通じてわが党の主張を最大限反映させるべきと考え、公明党は修正協議に臨んだ」と、公明党が三党協議に参加した理由を述べました。その上で、「協議の結果、社会保障の全体像は、今後設置される“国民会議”における審議を踏まえて消費税増税が実施されるまでに明確化することとし、それなしには増税ができない仕組みとなりました。また、デフレからの脱却に向けて防災・減災対策をはじめとする景気経済対策を講じ景気の回復を図ること、低所得者対策は最初の消費税率8%引上げ段階から講じることなど、“増税先行”ではない方向で合意に達し、あわせて関連法案の修正も行うこととなった」とし、公明党が関連法案・修正案に賛成する理由を述べました。
 賛成討論の圧巻は、結び部分でした。斉藤幹事長代理は「残念ながら、足元の政治状況を見れば、国の行方に責任を持つべき政権党である民主党内での内紛に象徴されるように、“決められない”政治が恒常化しつつあるように見受けられます。このように、まったくもって頼りない民主党は、政権党たる資格を持ち合わせておらず、いずれ総選挙において国民から厳しい審判が下されることは明白であります」と、野田民主党を一刀両断。
 さらに、「私たち野党が、日本の政治の危機に対して、まったく責任感を共有せず、すべての課題を単に先送りし続ければ、本当に日本が沈没してしまいます。少子高齢化が進む日本の中で、特に、社会保障と税の一体改革のような待ったなしの課題に対し、国民の皆さまに実状や政策の必要性を丁寧かつ真摯に説明することはもちろん、その上で、政治が合意形成を図りながら、決断し、結論を出していく、“決められる政治”を国民は強く望んでいるのではないでしょうか」と、訴えました。
 結論として「私たちは、言うべきことは言う、歯止めをかけるべきはしっかりと歯止めをかける、その上で、国民生活にとって重要な改革を前に進めていく」と、公明党の決意を披瀝して、討論を終えました。

社会保障と税の一体改革関連法案・修正案等に対する討論
公明党 斉藤鉄夫


 私は公明党を代表して、社会保障と税の一体改革関連6法案に対する民主・自民・公明提出の修正案、同じく3党提出の「社会保障制度改革推進法案」及び「認定子ども園法の一部改正案」について、いずれも賛成の立場から討論を行います。

 世界に類を見ない高齢化が進展するわが国において、持続可能な安定した社会保障制度をどのように構築していくのか、そしてそのための安定財源をどのように確保していくのかは、まったなしの課題であります。
 公明党は、政権を担っていた時から年金、医療、介護、子育てをはじめ社会保障制度の改革と税制の抜本改革、現政権の表現を借りれば、社会保障と税の一体改革の必要性を認識し、結果、2009年の改正所得税法の附則に改革の方向性を示す等の努力を続けてきたところであります。

 その後、政権交代が起こり、「4年間消費税は上げない」とした民主党政権になってから、一旦はこうした機運は大きく後退したものの、民主党政権3人目となる野田総理が、突如として消費税増税を掲げ、政治生命をかけるとまで言い切って、関連法案が提出されました。

 公明党は、消費税増税の提案そのものが民主党の公約にはなかったこともさることながら、社会保障と税の一体改革といいつつ、その実情は「増税先行」で国民の安心のセーフティネットである社会保障改革が置き去りにされてしまうのではないかなど、消費税増税に当たってのいくつかの条件が整っていないと、強く主張してきました。

 特別委員会では長時間に及ぶ審議がなされましたが、社会保障の全体像については、必ずしも政府から明確な姿が示されることはありませんでした。このままでは、形だけの社会保障と税の一体改革になってしまう。特に、先ほど指摘した消費税増税の前提として、社会保障の全体像を示すことや景気・経済対策、低所得者対策などの制度設計を明確にする必要がある、そのために、協議を通じてわが党の主張を最大限反映させるべきと考え、公明党は修正協議に臨みました。

 協議の結果、社会保障の全体像は、今後設置される「国民会議」における審議を踏まえて消費税増税が実施されるまでに明確化することとし、それなしには増税ができない仕組みとなりました。また、デフレからの脱却に向けて防災・減災対策をはじめとする景気経済対策を講じ景気の回復を図ること、低所得者対策は最初の消費税率8%引上げ段階から講じることなど、「増税先行」ではない方向で合意に達し、あわせて関連法案の修正も行うこととなったものであります。

 以下、修正部分を中心に、主な賛成理由を申し述べます。

 まずはじめに、社会保障制度改革推進法案では、年金、医療、介護、子育ての課題は、新設される「国民会議」での議論を経て、消費税増税前までに必要な法制上の措置を講ずるものとしています。すなわち、社会保障の全体像を消費税増税前までに明確にすることが法的に担保された点は極めて重要であると考えます。
 さらに3党合意では、「今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度にかかる改革については、あらかじめその内容等について3党間で合意に向けて協議する」としており、民主党のマニフェストをはじめ各政党の様々な主張がそのまま国民会議で議論されるのではなく、その実施時期を含め3党間で協議されたものが国民会議の議論の対象となると認識しています。
 一方、法案では「年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本」とするとしており、公明党としてもこの趣旨に沿って、制度改革を積極的に進めていく決意です。

 景気が低迷したままで、国民に新たな負担を求める増税を実行することは、かえって日本経済や国民生活に悪影響を与えかねません。
 政府案の「実質2%、名目3%の成長をめざす」との条文は政策努力の目標ではあるものの、少しでもそこに近づける具体的な方策が示されるべきです。公明党は、デフレからの脱却、景気回復を確実にするために、東日本大震災の教訓も踏まえつつ防災・減災対策に資する投資を集中的に行うべきと主張してきました。今般の税法の修正案にて、「成長戦略や事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」として景気経済対策の検討条項が盛り込まれたことや、増税の実施時期は時の政権が景気の回復などの状況を確認して判断することとなったことは、評価いたします。
 今後、現下の経済状況に鑑み、この条文の趣旨に沿って、できる限り前倒しで景気経済対策を講じることが重要である、必要に応じて補正予算も編成すべき、と強く申し上げます。

 次に消費税増税にあたっての低所得者対策、逆進性対策についてです。
 消費税には所得の低い方ほど負担が重くなるいわゆる逆進性の問題があり低所得者対策の実施は不可欠です。その手法としては、複数税率や給付付き税額控除などが考えられます。政府案では、消費税10%時点では複数税率は行わないこととし、いわゆるマイナンバーが定着したのちの給付付き税額控除などが記されていますが、その内容はもちろん、その間に実施される簡素な給付措置の内容すら不明確でありました。
 今般の三党合意では、低所得者対策は、消費税を8%に引上げる時から確実かつしっかりとした対策を実行すること、さらには、「複数税率」の導入も検討する旨を修正案等で明らかにしたことは大きな前進であると考えます。

 次に、年金、子育て、税制の各関連法案について、申し上げます。

 はじめに年金関連法案についてです。
 そもそも民主党が現行の年金制度は破綻していると主張し、最低保障年金の創設や国民年金も含めた年金一元化をマニフェストに掲げてきました。それにも関わらず、抜本改革の具体像を示せない中で、今般、現行制度に基づく改善案を提示してきました。この点は、これまで公明党が主張してきた方向性と概ね同じであります。
 政府案では、年金の受給資格期間の短縮、また、短時間労働者の社会保険の適用拡大や遺族基礎年金の父子家庭への支給拡大、産休中の社会保険料免除、さらに、官民格差解消を図るための厚生年金と共済年金の一元化や職域加算の廃止など、公明党が以前から主張してきたとおりの内容となっています。
 他方、低所得者等への年金額の加算については、政府案の定額加算6千円は取り止め、公明党が主張してきた定率加算する方法を参考に保険料納付済期間に応じた「福祉的給付」にて対応することで合意しました。また、消費税引き上げまでに、この給付に関する法律を成立させることとしており、公明党の主張する低年金対策の趣旨を踏まえたものと評価するものです。

 次に、子育て関連法案についてであります。
 私たち公明党は、真に子どもの幸福の実現に資するものであるか否か、また安心して子育てが出来る社会の実現に資するのか否かという視点を基本に検討してきました。
 特に、3党の修正協議の結果、幼保一体化への取り組みに関しては、現行の認定こども園の改正で十分に対応可能であり、その中で二重行政による手続きの煩雑さや財政的な支援の不足といった課題に対処することとなりました。また、関係者の間で強い懸念があった市町村の保育の実施義務も、わが党の主張どおり引き続き義務を担うように修正しました。今般、社会全体で子育てを支援する総合的枠組みが整備されたことの意義はきわめて大きいものと考えます。
 なお、政府の試算では必要とされる財源は1兆円ですが、現時点で、財源はなお不足しており、子育て・幼児教育・保育の質・量の充実のため、政府は財源確保に最大限努力すべきであることを強く申し上げます。

 次に、税制関連法案について申し上げます。消費税の税率引き上げについては、持続可能な安心の社会保障制度を構築するために必要な安定財源を確保することの重要性などに鑑み、また、消費税率引き上げまでに社会保障の改革を進めること、景気回復を確認すること、低所得者対策を具体化することなどが確保されたため、賛成するものであります。
 なお、消費税以外の税目については、今般の改正では実施を見送るもののとしたものの、再分配機能の強化の観点からの所得税の最高税率の引き上げ、相続税の見直し、さらには自動車取得税の廃止を含めた自動車関連諸税の抜本的見直し、消費税増税に伴う住宅対策などの課題は、消費税引き上げ前までに結論を得ることとしており、税制全体の改革が実行されることが担保されたものと考えます。

 以上、賛成する主な理由を申し述べました。

 残念ながら、足元の政治状況を見れば、国の行方に責任を持つべき政権党である民主党内での内紛に象徴されるように、「決められない」政治が恒常化しつつあるように見受けられます。
 このように、まったくもって頼りない民主党は、政権党たる資格を持ち合わせておらず、いずれ総選挙において国民から厳しい審判が下されることは明白であります。
 しかし、さはさりとて、私たち野党が、日本の政治の危機に対して、まったく責任感を共有せず、すべての課題を単に先送りし続ければ、本当に日本が沈没してしまいます。
 少子高齢化が進む日本の中で、特に、社会保障と税の一体改革のような待ったなしの課題に対し、国民の皆さまに実状や政策の必要性を丁寧かつ真摯に説明することはもちろん、その上で、政治が合意形成を図りながら、決断し、結論を出していく、「決められる政治」を国民は強く望んでいるのではないでしょうか。
 私たちは、言うべきことは言う、歯止めをかけるべきはしっかりと歯止めをかける、その上で、国民生活にとって重要な改革を前に進めていく、このことを最後に強く申し上げ、公明党を代表しての賛成討論を終わります。