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消費税と政党の責任 国民への説明が不十分
参考写真 消費税増税について、国会(衆議院)の判断と世論調査の間には、余りにも大きな落差があります。
 消費税増税法案は、先月26日の衆院本会議で、賛成363票(反対96票、棄権・欠席19票)という、圧倒的多数(4分の3以上の賛成)で可決されました。
 しかし、各種の世論調査では、「『賛成』45%、『反対』47%」(読売新聞、7月16日付)や「『賛成』30%、『反対』38%、『どちらともいえない』29%」(NHK、7月9日報道)など、「賛成」は増加傾向にあるものの、依然「反対」と拮抗しています。
 消費税に関する「衆院の採決」と「世論調査」の数字の違いから見えてくるものは、賛成票を投じた政党、政治家の主張が十分、国民に伝わっていない現実です。
 消費税増税についての民主党政権の姿勢には、当初から問題がありました。党内合意を得る努力をせず、自民、公明両党に協議を求め続けました。「野党との協議で決着を付ける以外にない」とばかりに、国民への説明を怠ってきたのです。
 例えば、基礎年金の国庫負担割合を現在の36.5%から2分の1に引き上げるために、今年度は2.6兆円が必要です。2分の1負担は2009年度から実施されていますが、今まではいわゆる「埋蔵金」などで対応してきました。あくまでも臨時的な措置であり、恒久的な財源が求められています。
 また、現在の消費税率は5%ですが、地方消費税1%に加え、国の消費税収の一部は地方交付税の財源として地方分となるため、消費税収の国の分は56.4%、約7兆円にとどまっています。これはすべて、高齢者3経費(基礎年金、高齢者医療、介護)に充てられています。それでも約10兆円が不足しています。
 持続可能な安心できる社会保障制度を支えるためには、安定した財源の確保が不可欠です。野田内閣や民主党執行部は、造反組への対応や分裂騒動への対処に追われ、消費税増税について、国民への説明責任を果たしていません。
 一方、消費税に反対する政党、政治家も「反対」を叫ぶだけでは無責任の極みです。このままの財政状態で、あすの国民生活を守ることができるのか疑問です。社会保障の在り方や財源など、「国民の代表」として、何も重要なことを語っていないといえます。
 先進国に類を見ないスピードで進む日本の高齢化。「低負担・高福祉」はあり得ません。負担と受益の在り方や福祉国家像について、国民の合意形成を促す役割を果たすべき政党が、大衆の不安や不満に同調するだけでは、存在意義を失うことになりかねません。