8月24日、茨城県は、東日本大震災を受けて全面的に見直した「茨城県津波浸水想定」を公表しました。
 新たな想定には国が去年、施行した「津波防災地域づくり法」が初めて適用され、県内の自治体は国の特例措置や補助を受けて、住民の避難対策などを進めていくことになります。
 今後の津波対策に当たっては、基本的に2つのレベルの津波を想定して行います。
比較的頻度の高い津波(L1津波)
津波レベル
発生頻度は高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波(数十年から百数十年の頻度)
基本的考え方
  • 人命・住民財産の保護、地域経済の確保の観点から、防護施設等を整備

  • 防護施設等については、発生頻度の高い津波高に対して整備を進めるとともに、設計対象の津波高を超えた場合でも、施設の効果が粘り強く発揮できるような構造物への改良も検討していく。

  • 堤防整備等の目安になる「目指すべき堤防高」を設定する。

最大クラスの津波(L2津波)
津波レベル
発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす津波
基本的考え方
  • 住民等の生命を守ることを最優先とし、住民の避難を軸にとりうる手段を尽くした総合的な対策を確立していく。

  • 被害の最小化を主眼とする「減災」の考え方に基づき、対策を講ずることが重要である。そのため、防護施設等のハード対策によって津波による被害をできるだけ軽減するとともに、それを超える津波に対しては、ハザードマップの整備や避難路の確保など、避難することを中心とするソフト対策を実施していく。

  • ソフト対策を講ずるための基礎資料である「津波浸水想定」を設定する。
参考写真 津波高は低くとも発生頻度が高いL1津波対策では、右の表のように堤防整備等の目安になる「目指すべき堤防高」が設定されました。
 北茨城市大津町で7.0メートル、日立市の河原子、水木町で6.0メートル、鹿嶋市平井から神栖市日川にかけては8.0メートルの堤防高が必要とされました。東海第2原発付近の海岸(日立市大みか〜東海村豊岡)には、7.0メートルの堤防整備が必要としています。
 最も巨大な地震を想定したL2津波対策では、茨城県は去年の震災を受けて、平成19年にまとめた津波の被害想定を見直し、去年3月の東日本大震災と、茨城県沖などを震源とするマグニチュード8クラスの巨大地震の2つの地震を基に浸水が予想される地域を予測しました。
 地震による地盤沈下や津波で護岸が壊れる影響なども考慮した結果、予測される津波の最大遡上高は、北茨城市大津町で16メートル、日立市の河原子、水木町で14.6メートル、神栖市の波崎では8.4メートルといずれも以前の想定を大幅に上回っています。
 東海第2原発付近の海岸には、原子炉建屋など主要設備がある標高8メートルを上回る最大遡上高12.3メートルの津波が到来すると想定しました。
 この想定を基に茨城県が県内全域で津波の浸水が予測される地域をまとめた結果、面積は62.8平方キロメートルと5年前の想定の6.7倍に広がりました。
 南部の神栖市では、鹿島港の西側を中心に以前の想定の20倍の20.4平方キロメートルに広がるなど、県の南部では沿岸部に高台がほとんどないなか、避難先が限られる実態が改めて浮かび上がっています。
 茨城県の新たな想定には、震災を受けて国が全国各地で津波対策を進めようと、去年、施行した「津波防災地域づくり法」が初めて適用され、津波避難ビルを建てる際に容積率が緩和されるなどの特例措置や防災事業への補助が受けられるようになります。
 茨城県内の各市町村はこうした措置を活用して防災対策の整備を進めていくことになります。
参考写真