参考写真 社会保障と税の一体改革の関連法案が成立し、低所得者対策や景気対策など国民生活に身近な政策具体化が喫緊の課題となっています。
 公明党は震災復興や来るべき大規模災害に備えて「防災・減災ニューディール政策」を掲げ、10年間で100兆円を公共事業に集中投資することで、景気回復を図ることを提案しています。
 こうした中、財務省は一部マスコミを巻き込んで、「消費税増税分で、公共事業の『バラマキ』をやろうとしている」という新たな悪宣伝を展開しています。その典型が、8月2日付けの東京新聞社説です。
公共事業増額 消費増税の地金が出た
東京新聞社説(2012年8月2日)
 消費税増税で増えた税収を公共事業の増額に充てる動きが出てきた。増税の名目は社会保障改革と財政健全化ではなかったのか。増収分が無駄な公共事業に使われるとしたら、とても納得できない。
 消費税増税の隠された狙いが露見したと言ってもよい。自民党が来週の参院採決を求めた社会保障と税の「一体改革」法案。その審議を通じて増収分を公共事業の増額に充てる議論が表面化した。
 法案が成立すれば、現在5%の消費税率は2014年4月に8%、15年10月には10%に引き上げられる。
 野田内閣は10%に引き上げられた際に見込まれる増収分13兆5千億円はすべて社会保障財源に充てる、1%分の2兆7000億円は社会保障の充実に、4%分の10兆8千億円は現行の社会保障制度の維持に使う、と説明してきた。
 これまで赤字国債など他の財源で融通してきた10兆8千億円を消費税で賄うことになれば、その分を国の借金返済に回せるはずだ。
 しかし、どうもそうではないらしい。参院質疑で「これまで社会保障に充てていた部分が消費税になるので、いろんな所に充てるのか」との質問に、自民党の野田毅税調会長は「大きな意味ではそういうことだ」と答弁している。
 自民党はすでに10年間で200兆円のインフラ投資を柱とする「国土強靱(きょうじん)化基本法案」を提出した。公明党も10年間で100兆円を投資する「防災・減災ニューディール推進基本法案」の提出準備中だ。
消費税の増収分は借金返済に回さず、公共事業増額に充てる。これが自公両党の本心なのだろう。
 はたして、東京新聞の指摘は正しいのか?社会保障と税の一体改革の附則18条を確認してみたいと思います。
第18条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
 税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。

 国会での議論で、公明党は消費税の景気に与える影響を最小限に抑えるために、「消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件」に加えました。そして、経済状況を好転させるために、「総合的な施策の実施」や「成長戦略」、就中、単なるバラマキの公共投資ではなく減災や防災に特化した投資を強調し、「事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点配分」と明文化したわけです。
 時の政権の判断で経済が好転しなくれば、「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」こともまで言及しています。
 公明党が主張する「防災・減災ニューディール」は、あくまでも三連動地震などの備える国家戦略がその本旨です。財源も、建設国債やあらたなニューディール債、民間資金の活用などを主張しています。それによって、結果的に日本経済を復活させることを念頭に置いています。付則で言うところの「消費増増税が可能な経済環境を構築するために、必要な施策」なのです。
 作家で経済評論家の三橋貴明氏は、この自らのブログで次のように分かりやすく語っています。
新プロパガンダ「消費税増税で公共事業のバラマキ」について
新世紀のビックブラザーへ(2012年8月17日)
 順番は、「国土強靭化などの公共投資=>デフレ脱却=>消費税増税」という法律なのですが、これがなぜか、「消費税増税=>国土強靭化などの公共投資の『バラマキ』」という、大プロパガンダが展開されているわけです。何しろ、大手紙の全て、さらには共産党までもが上記の「ウソ」を広めまくっているので、情けない限りです。「消費税増税⇒公共投資」では、消費税増税が実施される「可能性がある」2014年4月以前は、財源がないので国土強靭化等の投資はしないことになってしまいます。すなわち、2013年は丸々何もしないと・・・・、バカバカしい話です。
 当たり前ですが、国土強靭化や防災・減災ニューディールの財源は建設国債(および日本銀行とのアコード)です。そもそも、この手の投資のために建設国債があるわけですから、当たり前です。(中略)
 このまま「消費税増税で公共事業のバラマキ」という印象が国民の間に広まっていったら、どうなるでしょうか。当然、国民の間に「自分たちの生命や安全を守るための」公共投資に対する嫌悪感が生まれ、自民党の国土強靭化や公明党の防災・減災ニューディールがとん挫することになります。とはいえ、何しろ「社会保障と税の一体改革」は成立しているため、ときの政権によっては、「国土強靭化のための公共事業拡大は一切やらず、デフレは継続しているにも関わらず、増税実現」という、財務省が最も望むシナリオが現実のものになってしまうわけです。
 「消費税増税で(自民党や公明党が)公共事業のバラマキをしようとしている」という印象が国民に浸透すると、果たして誰が得をするのか。少し考えてみれば、誰でも分かると思うのですが、現在は共産党までもがこのプロパガンダの片棒を担いでいる有様です。
 上記のように「国民の生命と安全を守る公共投資」に反対し、それを押しつぶそうとしている人たちには、一つだけ問いかけたいのです。
 「あなた方は、日本国民に次の震災で『死ね』と言いたいのですか?」と。
 ちなみに、わたくしは財務省プロパガンダごときのために命を落とすのは、まっぴらごめんです。というわけで、できることをやっていきます。

 公明党が提唱する防災・減災ニューディール政策は、あくまでも迫り来る大規模災害への備えをどのように具体的に進めるかという発想がその原点です。同時に民主党政権の中でまったく顧みられなかった成長戦略に、責任政党としての具体的な提言です。その議論の本質を履き違えて、ミスリードしようとするマスコミの手口を、私たちは冷静に見破る必要があります。