参考写真 9月11日、東日本大震災から一年半。この間の民主党政権の震災復興戦略は、あまりに稚拙であり、評価に値しません。
 総額15兆円に上る2011年度の東日本大震災復旧・復興予算のうち、約4割が年度内に使われなかったという事実は、“自治体任せ”の政府・与党の姿勢を端的に示しています。
 予算は現場の需要があって要求されたものであり、それを計上したことは、国がその必要性を認めたことです。そうであれば、予算の執行段階まで国が責任を持って取り組むのが当然です。
 にもかかわらず政府・与党は“責任は地元にあり”とばかりに、予算未執行の原因を「被災自治体の復興計画の策定の遅れ」にスリ替えてはばかりません。「遅い、鈍い、心がない」対応に終始してきた民主党政権の限界と言うほかありません。
 被災自治体にとって今、最も頭の痛い問題は人材・職員不足です。しかし、国に再三にわたり要望している人員の充足率は、いまだ半分程度です。これでは、国の本気度が疑われます。
 15兆円もの予算が計上されながら、がれき処理も除染も復興住宅建設も全てが遅れている原因は畢竟、この一点に尽きると強調しておきたいと思います。
 今、震災から1年半。民主党政権による“人災としての3・11”の様相がますます鮮明になる中、真に被災者と被災地に寄り添う“現場主義の支援”が求められています。
 9月13日には、公明党の前身である公明政治連盟が設立され、50周年の節目を迎えます。「人間の復興」を掲げ、被災地の最前線で闘い続けてきた公明党が、さらに一歩前へと踏み込むべき時と決意している。議員ネットワーク、チーム力をこれまで以上に駆使し、挑んでまいりたい。
着工率わずか1%台、課題尽きない被災地
国の“平時対応”に不満:復興住宅


参考写真 復興住宅の建設が遅れています。岩手県釜石市は、住宅再建の意向調査に基づき、市内に約1050戸の復興住宅を建設予定。入居者の選定ではコミュニティーを重視し、震災前の居住地区への入居希望を最優先としています。建設場所と戸数の具体化に向け、市は先日、再調査を実施。しかし「土地の買い上げ価格が出ないと判断できない」などとして、自立再建か復興住宅かを決めかねている被災者は少なくありません。
 また、「震災で失職し、復興住宅に入れたとしても家賃が払えない。苦痛だが仮設住宅のままでいい」という声もあることも現実です。
「着工に遅れを出すわけにはいかない」。釜石市の担当者は再調査の行方が気が気でないようです。地権者との用地交渉に臨む職員不足や、不透明な用地確保の現状などにも頭を痛めています。
 土地区画整理事業などの際の埋蔵文化財調査も不安の種となっています。仮に移転候補地で遺跡が見つかれば、計画の見直しを迫られ、復興の足かせになりかねません。釜石市は「後世に残す重要性は分かるが、なんとか法制上の運用を弾力的にしてほしい」と話しています。
 岩手県によると、2015年度末までに5601戸(7日現在)の復興住宅を11市町村に建設予定ですが、現在着工できているのは釜石市平田地区など3カ所170戸(同)のみに止まっています。東北3県で見ても着工率はわずか1%台にとどまり、復興の象徴ともいうべき「住環境の確保」の大幅な遅れは誰の目にも明らかです。
 今、被災地の“住”をめぐる取り組みは正念場を迎えています。にもかかわらず、事業手続きなどあらゆる面で、国の対応は平時の域を出ません。「安心の住居があることが魂の復興につながる」ことを忘れてはなりません。

処理率25% 政府目標達成に赤信号、震災がれき処理 

 宮城県東松島市の震災がれきの1次仮置き場では、全身をマスクやヘルメット、作業服で固めた80〜100人の作業員が連日、がれきの山を前に分別作業を行っています。
 分別作業を機械で行う被災地が多い中、約157万トンのがれきを抱える東松島市は(1)分別精度を上げ、できる限りリサイクルする(2)被災者雇用を重視する―などの観点から、「人海戦術」による作業で効率化を図っています。だが、市内にはいまだ浸水区域があり、処理の道筋が見通せない地域もあります。
 一方、被災自治体で最もがれき量が多い宮城県石巻市の1次仮置き場は、すでに満杯状態。今月から2次仮置き場の焼却作業を本格化することで、家屋などを解体し、1次仮置き場への搬入作業の加速化をもくろむが、技術系職員の不足という壁が立ちはだかっています。
 環境省は9月7日、東北3県のがれきについて、推計1802万トンのうち、8月末までに442万トンを処理したと発表。処理量は約25%にとどまり、現状では2014年3月までに処理を終える目標の達成は困難となりました。
 処理の加速化には、いまだ稼働していない仮設焼却炉の本格稼働のほか、広域処理の具体化が急務です。現在、1都9県で44万トンの受け入れが決まっていますが、残り124万トンの行方は不透明なままです。

国の方針不明で一向に進まず、除染対策

 9月3日、福島県南相馬市で市が行う住宅の除染作業が始まりました。今年2月開始とした当初計画から7カ月遅れのスタートです。
 大幅な遅れは、除染廃棄物の仮置き場の確保に時間を要したためです。原町区片倉では、地区内での仮置き場設置でようやくまとまりました。
 ただ、こうした紆余曲折の末、除染が始まったのは4行政区のみ。市が行う残り131行政区の除染開始の見通しは立っていません。
 背景にあるのは、国の中間貯蔵施設の設置が一向に決まらないことです。南相馬市の除染対策課は「国の方針が決まらないため、3年という仮置き場での保管期限が疑問視され、市民に不信が募っている」と頭を抱えています。
 市民の間からも「除染の進ちょくが目に見えないから、復興に向かっているという希望が持てない」などとの嘆きの声が絶えません。
 このような状況は福島県内どこも同じです。事実、県内各市町村の住宅除染の実施状況はいまだ3.6%(7月末)にとどまっています。
 国の直轄除染も進んでいません。原発周辺の対象11市町村のうち、除染計画を策定できたのは6市町村で、本格除染の開始に至っては田村市1市のみです。