120920ninnchi 高齢化の加速に伴って認知症が急増しています。認知症の高齢者は305万人に達し、13年後の2025年には470万人へと、今年の1.5倍以上に増加する見通しです。このため、厚生労働省は先ごろ、早期診断と早期対応を柱とした、わが国初の総合的な認知症対策5カ年計画を策定しました。
早期診断・早期対応を柱に、かかりつけ医の対応力など向上へ
 計画の柱は「早期診断・早これまでの認知症対策は、症状が悪化してから医療機関を受診する「事後的な対応」が中心でした。このため、認知症になると、自宅で生活することが難しく、施設への入所や精神科病院に入院するしかないという考えが一般化しています。
 しかし、5カ年計画では、この考えを一変させ、「早期診断」に重点を置くことで、たとえ認知症になっても、住み慣れた地域で暮らし続けられる社会をめざすというものです。
 早期診断のためには、高齢者の変化を見逃さない、かかりつけ医の対応力の向上が重要です。今や認知症は誰もが発症する可能性のある疾患です。このため、認知症高齢者への日常的な診療や家族への助言は、かかりつけ医が担う必要があリます。家族と共に、かかりつけ医による初期段階での“気づき”が症状の悪化を防ぐことにつながるはずです。
 そこで、厚労省は2006年度から「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を実施し、適切な認知症診断の知識や本人・家族への対応力を身に付けてもらうための事業を行っています。その修了者数は今年度末で3万5000人になる見込みです。5年後の17年度末には5万人の受講をめざしています。これでやっと認知症高齢者約60人に対して、1人のかかりつけ医の受講が終了することになります。
 また、厚労省は地域医療体制の中核的な役割を担う「認知症サポート医」の養成も行っており、今年度末2500人の見込みから、17年度末には4000人の受講終了をめざします。
専門家チームが訪問ケア身近型疾患医療センターの拡充も
 早期診断・早期対応の目玉として期待されているのが、「認知症初期集中支援チーム」の創設です。
 この支援チームは、看護師や保健師、作業療法士などの専門家で構成するもので、地域包括支援センターなどに配置し、認知症高齢者や家族に対して、自立した生活に向けたサポートを行います。
 家庭訪問を通し、生活現場でさまざまな情報を収集して、本人や家族の状態を理解するとともに、認知症の症状や病気の進行状況に沿った対応についてアドバイスしたり、認知症ケアの適切な情報提供も行っていく計画です。
 一方、今回の5カ年計画には、認知症高齢者の自宅や施設への往診などにも当たり、早期診断を担う「身近型認知症疾患医療センター」の整備が盛り込まれました。
 身近型のセンター整備は、現在173カ所ある認知症の早期診断・治療の拠点である「認知症疾患医療センター」に加えて、診療所や中小病院などが、かかりつけ医や地域包括支援センターなどと連携するもので、新たに300カ所程度を整備し、5年後までに約500カ所に増やすとしています。
 このほか、認知症ケアにおいては、公明党が主張してきた受け皿としての施設整備や在宅医療・介護の連携、支援体制の強化が重要ですが、多くの自治体では、その取り組みが遅れています。
 今後、認知症の高齢者が増加していく中で、住み慣れた地域で生活し続けていくためには、今までの居住系サービスや在宅サービスに加え、24時間365日の定期巡回・随時対応サービスの大幅な拡充も待ったなしです。
 公明党は2010年に発表した「新・介護公明ビジョン」で、25年までに特別養護老人ホームを2倍に増やすことや認知症高齢者グループホームの3倍増、日常生活を支援するサポーターの育成などを提案し、施策の拡充を着実に進めてきました。
 ほかにも、認知症に関する正しい知識を持ち、地域で本人や家族に対して手助けをする「認知症サポーター」を増やす必要があります。今年度末には350万人に達する見込みで、5年後には600万人にまで増加させる方針です。
 新・認知症対策は、これまでのケアの流れを変え、新たな視点で早期診断・早期対応への転換を図るとともに、医療・介護の基盤整備や地域の助け合う体制の充実などを進め、認知症高齢者を支える地域づくりをめざして、人材の育成を図ることが求められています。
 そもそも茨城県においては、「地域ケアシステム」という高齢者や障がい者をトータルに地域で身守り、適切な介護や医療サービスを提供するシステムを志向してきました。「身近型認知症疾患医療センター」は、まさにこうした考え方を現体化したものと評価します。現実に地域にどのよう展開していくか、努力していきたいと思います。