120921miki 9月21日、井手よしひろ県議ら茨城、青森、千葉の県議会議員の地方有志は、NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構の事務所を訪ねました。理事長の三木一正先生より、胃がん撲滅のために、ピロリ菌のABCリスク検診の普及を図る重要性を伺いました。
 三木先生は、1968年東京大学医学部卒業後、71年に東大第一内科に入局。1996年ワシントン大学客員教授を経て、98年に東邦大学第一内科教授、2003年より東邦大学消化器内科主任教授を努めました。2008年定年退官ののちNPO法人を立ち上げました。日本消化器内視鏡学会をはじめ多くの学会に属し、2005年日本対がん協会賞特別賞(朝日がん大賞)、2008年には、大変名誉ある高松宮妃癌研究基金学術賞を受賞されています。
 三木先生の最大の功績は、胃がんのリスクを見極める“ペプシノゲン法”の開発です。
 1980年代、海外で胃がんの発生につながる胃粘膜の状態と、ペプシノゲンという消化酵素ペプシンのもととの間に関係のあるとの研究成果が、海外で次々に発表されました。それを応用して“ペプシノゲン法”という検査法を、1987年に三木先生が開発。胃がんへのかかりやすさが血液検査によって簡単に調べられる画期的な検査法です。三木先生は、厚生労働省から委託されてさらに研究を深めました。ピロリ菌検査とペプシノゲン法を組み合わせることで、より早く、より正確に、より簡単に胃がんのリスクを検査できると、三木先生は提唱しています。これが、ピロリ菌ABCリスク検診です。
参考写真 三木先生は井手県議らに対して、「ピロリ菌の発見、内視鏡の進歩によって、胃がんを克服できる時代が来ています。現在、胃がん検診はレントゲン検診が奨励されていますが、現場ではすでに内視鏡による診断が主流となっています。しかし、厚生労働省は胃内視鏡による胃がん死亡率減少効果が十分には得られていないという理由で、内視鏡検診を推奨していません。胃がんのリスク診断として常識になっているピロリ菌検査も、また、私が開発したペプシノゲン法も、同様に推奨されてはおりません。胃がん予防を目的としてピロリ菌除菌療法も保健適応になっていません」と、国の胃がん検診の現状をわかりやすく説明してくださいました。
 その上で、「がん検診は、有効性の証明には大規模な調査と長い時間を要します。検診による死亡率減少効果を証明していくことは大切なことですが、それを待っていては、毎年5万人もの人が胃がんに苦しんでいる現状を変えることはできません。胃がんに関しては、様々な学会において議論の場があります。しかし、学会の議論だけでは、その実りを国民には十分に届けることはできません。そこで、私たちは有志とともに、学会と連携し、学会で得られた成果を、現在を生きる人たちに速やかにもたらすことを目的として、NPO法人「日本胃がん予知・診断・治療研究機構」の設立を決意しました」と、NPOの設立に至った経過を強調。医学界だけではなく、行政や国会議員、地方議員、そして市民と連携しながら「一刻も早く“胃がんを日本から撲滅”したい」と、熱い思いを語られました。