参考写真 高齢者や障がい者など誰もが暮らしやすい街づくりを進めるためは、段差の解消や点字ブロックの設置といった「公共施設のバリアフリー化」の推進が重要です。
 国土交通省の最新調査によると、バリアフリー化の達成率は2011年3月末現在、鉄道駅(1日平均利用客数3000人以上)で78%、バスターミナルで83%、空港ターミナルで92%に上っています。バリアフリー化の流れは、一定の成果を上げていると言えます。
 しかしその一方で今、東日本大震災の教訓を踏まえ、災害弱者の命を守るためのバリアフリー化が喫緊の課題となっています。
 国交省は9月、新バリアフリー法施行(2006年)後の課題などを議論してきた有識者検討会の報告書を公表しました。そこでは、災害時や緊急時に備えたバリアフリー化の必要性が明示されています。
 実際、東日本大震災では多くの高齢者や障がい者などが逃げ遅れ、津波の犠牲になりました。安全な高台への道が急勾配であったケースも多く、高齢者や障がい者が避難する上で大きな障害となりました。
 仮に、車いすでも逃げられるなど避難路がバリアフリー化されていたならば、助かった命もあったのではないか、非常に残念です。
 また、避難所などで、体が不自由な高齢者や障がい者がトイレや風呂の利用に苦労したり、視覚障がい者などが情報を十分に得られず、孤立してしまうといった問題が相次いだことも記憶に新しいものがあります。
整備遅れる「福祉避難所」
 避難所の問題でも、バリアフリー化された施設などで高齢者らを受け入れる「福祉避難所」を指定している市町村は、昨年3月末時点で全体の41.8%(厚生労働省調査)でしかありません。こうした福祉避難所の整備も急ぐ必要があります。
 こうした状況の下、9月24日、井手よしひろ県議は県の担当者より、茨城県内市町村の「福祉避難所」の指定状況を聴き取り調査しました。
 それによると、茨城県の「福祉避難所」の指定状況は、今年8月末現在で、県内44市町村のうち指定しているのは17市町村のみで、全国平均を下回り38.6%と低迷しています。
 茨城県内では、震災のあった昨年3月末時点で11市町村が福祉避難所を指定していました。しかし、実際に福祉避難所を開設した市町村は一箇所もありませんでした。
 「福祉避難所」の指定が進まない要因は、1.バリアフリー化や予備電源の整備など施設の拡充が必要であること、2.開設時に運営するスタッフの確保が困難であること、などがボトルネックとなっています。
 その中で注目されるのが、笠間市や阿見町の取り組みです。
 笠間市は震災後、市内にあるすべての民間の障害者施設や高齢者施設と交渉し、高齢者施設20箇所、障害者施設2箇所を「福祉避難所」に指定しました。
 美浦村は、町内に立地している県立美浦特別支援学校に着目、協定を結んで「福祉避難所」に指定しました。その他にも、高齢者施設(1箇所)、児童福祉施設(2)、社会福祉施設(1)とも連携し、5箇所の「福祉避難所」を確保しました。
 現実的に災害が発生してしまった後で、「福祉避難所」を指定するのは困難です。各市町村で、早期の指定ができるよう公明党茨城県本部としても取り組んでまいります。
■福祉避難所の指定状状況(2012/8/31現在)
水戸市10高齢者施設
ひたちなか市11高齢者施設、社会福祉施設
笠間市22高齢者施設、児童福祉施設
龍ケ崎市13 
取手市高齢者施設、障害者施設
牛久市社会福祉施設
つくば市89高齢者施設、児童館、公民館、学校など
坂東市高齢者施設、児童福祉施設
つくばみらい市社会福祉施設
神栖市社会福祉施設
鉾田市高齢者施設他
大洗町高齢者施設
美浦村特別支援学校、高齢・児童・社会福祉施設
阿見町 
五霞町社会福祉施設
境町社会福祉施設
利根町社会福祉施設

福祉避難所
障害者らに配慮してバリアフリーになっていたり、個室や障害者用トイレ、簡易ベッドなどを備え、要援護者用の食事が提供できる専用避難所。あらかじめ市町村が公共施設を指定したり、民間の障害者支援施設などと協定を結んで災害時に開設します。2008年の国の指針では、1小学校区に1カ所程度、要援護者10人に1人の相談員を配置するのが望ましいとされています。