参考写真 若干旧聞になってしまいますが、9月5日、民主党政策調査会がまとめた次期衆院選マニフェスト(政権公約)の素案「再挑戦宣言」が、マスコミに紹介されました。それによると、重点政策として子育て支援を掲げ、子ども1人当たり原則1万円から1万5千円支給している児童手当の給付額5割増が明記されています。所得税の配偶者控除を全廃して財源に充てるといいます。またぞろ子ども児童手当増額か、と呆れる限りですが、一番の注目は配偶者控除を廃止しようとする考え方です。こうした負担増には、公明党は絶対反対です。
 民主党は旧子ども手当を増額する際に、年少扶養控除を配し、子育て家族の負担を重くしてしまった前歴があります。
 2010年度税制改正で0〜15歳の子どものいる納税者に適用される所得税の年少扶養控除(38万円)と、住民税の年少扶養控除(33万円)を、民主党政権が廃止した結果、所得税は昨年1月から、住民税は6月から対象家庭には大幅負担増になりました。
 民主党は、「所得税の扶養控除や配偶者控除を見直し、子ども手当を創設」と公言していましたが、結局、子ども手当は頓挫しました。しかも、公約に入っていなかった住民税の年少扶養控除まで廃止し、子育て世帯を混乱させた民主党の責任は重大です。
年少扶養控除を復活させるべき!
 民主、自民、公明の3党で修正合意し、今年3月に成立した改正児童手当法の付則には「扶養控除の廃止の影響を踏まえつつ、その在り方を含め検討を行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずる」と明記されています。
 ただし、年少扶養控除廃止に伴う税の増収(平年度ベースで所得税6600億円、住民税4800億円)は既に児童手当の財源と子育て関連事業の財源に回っています。2009年度時点の「旧児童手当」は1兆円の予算規模でしたが、今年度からの「新児童手当」は約2.3兆円になります。このため、元に戻す場合、代わりの財源をどうするかが最大の問題となります。
給付(児童手当)と負担(年少扶養控除廃止)で見た場合の家計の損得
 新児童手当は旧児童手当と比べると、全体的に低所得層はプラスになっています。高所得層を除き、(1)児童手当支給額の拡充(2)中学生まで支給対象の拡大―などを通じ、おおむね年少扶養控除の廃止による負担増を吸収するからです。
 子育て世帯には、住民税額に応じて対象範囲や金額を決定する各種の支援制度があります。年少扶養控除の廃止で対象外にされたりしないよう配慮するのは、政治の当然の責務です。ところが、国民生活に鈍感な民主党政権の不手際で私立の幼稚園に通う子どもがいる世帯を対象とした「私立幼稚園就園奨励費補助」などで大きな混乱が生じています。公明党は、保護者の負担増につながらないよう改善策を政府に強く迫っています。
扶養控除とは
 「扶養控除」は、所得控除の一種。納税者本人に子どもや父母らの扶養親族がいる場合に適用となります。所得から一定の金額を控除(差し引くこと)することで、課税の対象となる所得金額を減らし、税負担を軽くする仕組みです。
 民主党政権は2010年度税制改正で16〜18歳の「特定扶養控除」の上乗せ分(住民税12万円、所得税25万円)とともに、0〜15歳の「年少扶養控除」(住民税33万円、所得税38万円)を廃止してしまいました。扶養控除が廃止になった分だけ課税所得金額が大きくなり、そこに税率を掛けて算出される税額も増えることになります。
 今回の年少扶養控除の廃止に伴い、0〜15歳の子どもがいる子育て世帯は、住民税(税率一律10%)で子ども1人につき年間3万3000円の負担増(年少扶養控除の廃止分33万円の10%)。一方、所得税(税率5〜40%の6段階)では、高所得者ほど負担が重くなる。たとえば、税率20%の場合、年少扶養控除の廃止分38万円の20%で子ども1人につき年間7万6000円の負担増となります。