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 10月11日、公明党東日本大震災復興対策本部は、首相官邸に藤村修官房長官を訪ね、本来の趣旨と懸け離れた事業への“流用”が指摘されている復興予算について、使途の適正化を求める緊急提言を申し入れました。
 これには対策本部長の井上義久幹事長のほか、党対策本部の石田祝稔事務局長(衆院議員)、西博義、竹内譲の両衆院議員、荒木清寛、渡辺孝男、浜田昌良、横山信一、竹谷とし子の各参院議員が参加しました。
 席上、井上幹事長らは、党対策本部が関係府省庁から事業の説明を受け、精査した結果、「緊急性の高い復興予算ではなく、一般会計で対処すべき事業が多々盛り込まれている」と指摘。5年間で19兆円規模の復興予算は財源を所得税や住民税の臨時増税などで賄うことを踏まえ、「これでは復興の加速を待ち望む被災者、国民の理解は得られない」と強調しました。
 緊急提言では、被災地だけでなく全国各地に広く交付された「国内立地推進事業費補助金」をはじめ、復興予算(2011年度3次補正予算と12年度予算)の事業について、東日本大震災復興基本法の基本理念と、政府が策定した「基本方針」の趣旨に合致した内容かどうかを早急に検証することを要請。その上で必要に応じ、復興庁が関係府省庁に勧告権を行使することや、予算の組み替えや執行停止を求めました。
 さらに13年度の予算編成に際しては、政府が復興事業の趣旨をあらためて示し、各府省庁の概算要求を厳格に査定するよう提案。復興事業は被災地の意向を最優先させ、特にニーズ(要望)が高い「ふくしま産業復興企業立地補助金」や井手よしひろ県議らも強く追加実施を要望している「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」(グループ補助金)については、予備費の活用を含め十分な予算確保を迫りました。
 これに対し、藤村官房長官は「提言を重く受け止め、趣旨に沿うよう適切な予算執行に努めたい」と回答。グループ補助金などの予算確保について「十分に検討したい」との考えを示しました。
参考写真 東日本大震災の復興予算は「少なくとも5年で19兆円」が必要とされています。その財源の半分以上が、新たな増税でまかなわれています。
 昨年、民主党政権は5年間で19兆円を、被災地のガレキ処理やインフラ投資のほか、原発事故の除染費用などに使うと定めました。これら事業の財源は、復興増税や政府保有株の売却、公務員給与の削減などでまかなわれています。
 その中で増税は、主にに三つの手法で行われています。
 まず、所得税は2013年1月から37年12月まで25年間、納税額に2.1%が上乗せされます。財務省の試算では、夫婦と子ども二人の世帯で増える所得税の年間負担額は、年収300万円で200円、500万円で1600百円、800万円で7000円などとなっています。
 次に住民税は2014年6月から10年間、世帯収入に関係なく一律年1000円が上乗せされます。
 法人税はいったん減税した上で2012年4月から3年間、納税額に10%上乗せします。
 こうした増税という多くの国民の負担の上に、復興予算19兆円は成り立っています。逆に言えば、被災地の復興という“大義”があるからこそ、国民は増税を受け入れたということができます。
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 その復興予算が目的外の使い方をされては、納得できるはずがありません。各省庁の“火事場泥棒”と言っても過言でない状況です。
 そこに、9月9日、この復興予算が果たして適切に使われているのか、予算化された事業を検証するという番組・NHKスペシャル『追跡 復興予算19兆円』が放送され、話題となりました。「復興は進んでいない。お金は一体どこに使われているのか。」今、被災地から切実な悲鳴があがっている。大震災後、被災地復興のためつぎ込まれる巨額の“復興予算”。増税を前提につぎ込まれることになった“復興予算”はいったいどのように流れ、使われているのか……。この番組のあまりの反響に、平野達男復興相は9月11日午前の記者会見で、東日本大震災の復興に関する予算について「復興財源として妥当なものか、使うのに適切なものか疑問を持たざるを得ない部分もある」と、一部で不適切な使途があることを認め、その上で、被災地のために適切に使われているかどうかを財務省に実態調査するよう求めたことを明らかにしました。
 復興予算の流用と疑われる事業を具体的にみてみたいと思います。
 まず経産省。「国内立地推進事業補助金」2950億円。金額も最大です。全国の製造業の設備投資を支援する目的で、雇用や地域経済の要となっている企業を支援して、被災地復興の後押しするという目的です。しかし、510の補助決定のうち被災地企業はわずか30にすぎません。NHKの報道では、被災地から遠く離れた岐阜のコンタクトレンズ業者(メニコン)の工場増強に補助金が使われたことが紹介され、大きな反響を呼んでいます。
 次に文科省。独立行政法人日本原子力研究開発機構(いわゆる原子力機構)の核融合エネルギー研究費に42億円が計上されています。文部科学省は来年度13年度予算の復興特別会計でも、48億円の研究費を概算要求しています。原子力機構には、12年度予算の復興特別会計からは100億円超が支出されました。このうち、福島第一原発事故の収束や除染に関する技術開発費などを除く42億円は、日本や欧州連合(EU)、米国、中国など7カ国・地域が核融合エネルギーの実用化を目指して共同で進める国際熱核融合実験炉(ITER)の研究事業に充てられました。エネルギー政策の見直しが叫ばれている中で、復興予算の中から、多大な予算が支出されることはいかがなものでしょうか。
 また外務省は「アジア大洋州地域、北米地域との青年交流」に72億円を割り当てました。今年7月、宮城県南三陸町を外国人の若者たち100人が訪れました。震災前も「キズナ強化プロジェクト」として、こうした外国から青少年を招く予算がありましたが、今年3月に打ち切りになりました。それが、正に復興予算で復活されました。
 農林省は、反捕鯨団体シー・シェバード対策費23億円を復興予算から捻出しています。水産庁は「調査捕鯨で得られた鯨肉が、宮城県石巻市の産業復興に貢献する」と説明しています。
 殿軍は財務省。2011年の三次補正の復興予算12億円を使って、12の税務署の耐震改修を行いました。大阪福島、姫路、荒川、富岡、向島、藤沢、館山、武蔵野、柏原、舞鶴。そして茨城県内の龍ヶ崎、古河税務署。2012年当初予算の復興予算に、大阪福島、姫路、荒川の3税務署の改修予算5億6000万円が計上され、2013年度の概算要求に大阪福島、姫路の2税務署の改修予算3億2200万円が含まれていることが分かっています。
 民主党政権は一刻も早く国会を開き、こうした不透明な復興予算の使い方について、現状を正し被災地の震災復興に全力を挙げるべきです。