白血病など血液の難病に有効な治療法である造血幹細胞(骨髄、末梢血幹細胞、さい帯血)移植を一体的に推進するための「造血幹細胞移植推進法」が今年9月に、国会で全会一致で成立しました。この法律は今、iPS細胞(人工多能性幹細胞)など再生医療研究にさい帯血の活用を認めた法律としても注目を集めています。

患者に“最適な移植”実現へ、“骨髄”“末梢血幹細胞”“さい帯血移植”を一体的に推進し、選択を可能に
 造血幹細胞は、血液中の赤血球や白血球、血小板をつくり出すもとであり、骨髄のほか、赤ちゃんのへその緒や胎盤の中にあるさい帯血などに含まれます。
 現状では骨髄バンクが骨髄、末梢血幹細胞のドナーのあっせんを行い、また、さい帯血バンクがさい帯血の調製等を行っています。しかし、法的な位置付けがないため、バンクの財政運営は不安定なものとなっており、存続すら危ぶまれるさい帯血バンクも出ています。
 このため、造血幹細胞移植推進法ではさい帯血バンクと骨髄バンクの財政運営の安定を図るための国による財政支援が盛り込まれました。
 造血幹細胞移植の非血縁者間の移植件数は年々増加し、2011年には骨髄移植を延べ約1200人、さい帯血移植を延べ約1100人が受けるまでに増えています。また、今後、高齢化などに伴う移植ニーズの増大に対応するためにも、法整備を急ぐ必要がありました。
 「造血幹細胞移植推進法」の背景には、15年にもわたる公明党の地道な取り組みがありました。公明党は1997年、さい帯血の公的バンク設立を求める署名運動を全国で展開。220万人を突破する署名を集め、98年にさい帯血移植術への保険適用、翌99年には公的バンク設立を実現してきました。
 法律制定は公明党が一貫して主導してきました。昨年5月にさい帯血法整備推進プロジェクトチーム(PT)を設立。昨年12月には骨髄移植なども含めて法制化をめざすことに転換し、党造血幹細胞移植法整備検討PTに改編、今年1月には党独自法案を取りまとめました。その後、6月に野党4党で法案を国会に提出した後、9月6日、衆院本会議で全会一致で「造血幹細胞移植推進法」を成立させました。
iPS細胞研究にさい帯血を活用
 「一日も早く、さい帯血という宝の山を、iPS細胞という違う形で患者のために使わせてもらいたい」。ノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった京都大学の山中伸弥教授は10月18日、公明党の再生医療推進プロジェクトチームの会合で、こう力説しました。
 さい帯血は年間1000件を超える移植が行われており、多くの患者の命を救っています。しかし、さい帯血は保存から10年以上たつと処分されています。また、細胞の数が少ないものも移植に適しません。山中教授は、この処分されているさい帯血を利用し、iPS細胞の作製をめざしています。
 公明党が成立を主導した「造血幹細胞移植推進法」には、さい帯血を研究のために「利用し、又は提供することができる」(第35条)との文言が盛り込まれ、移植に使わないさい帯血を研究のために活用することが法的に認められています。
 山中教授は、あらかじめ他人の細胞からiPS細胞を作って、備蓄しておく再生医療用の「iPS細胞ストック」という計画を進めています。
 しかし、他人の細胞を移植すると、拒絶反応が起きる可能性があります。そこで、細胞の血液型(白血球の型)といわれるHLA型を揃える必要がありますが、HLA型は数万種類以上あり、新たにHLA型を調べて揃えるとなると、膨大な費用が掛かってしまいます。
 ところが全国に8カ所ある公的バンクに保存されているさい帯血は、このHLA型が調べられており、その中から特別なHLA型のさい帯血を150種類ほど集めれば、日本人の95%に合うiPS細胞ができる可能性があります。
 万能細胞であるiPS細胞は体のあらゆる組織や臓器の細胞になることができる能力を持つ細胞です。さまざまな細胞への分化が可能で、再生医療や創薬への応用が期待されています。難病患者からiPS細胞を作って解析すれば、発症原因や治療の糸口も見つけられる可能性があります。