
自然エネルギーの活用には、その安定性の確保や効率を飛躍的にあげる技術革新などが不可欠です。当面の間、日本のエネルギーを支えるのは火力発電であることは論を待ちません。
環境にやさしく、低費用、再エネ電力の予備電源にも
火力発電とは、石炭や石油、液化天然ガス(LNG)を燃やして水を沸騰させ、その水蒸気の力で蒸気タービンを回転させて電気を発生させるのが発電の仕組みです。
日本の総発電量に火力が占める割合は、資源エネルギー庁によると、2010年度時点の国内の総発電量は約1兆キロワット時です。そのうち石炭、石油、LNGといった火力発電は全体の6割、約6200億キロワット時を占めています。この割合は高度経済成長が始まった1960年頃から一昨年までほぼ同じでした。しかし原子力発電の運転停止などを受け、火力発電の割合が高まり、2011年度以降は総発電量の8割を占めています。
火力発電のメリットは、電力需要に合わせて発電量を操作しやすい点です。一方、原子力発電は一定の発電量を生み出すことはできますが、自由に発電量を増減させることはできません。
ものづくりの高い技術で産業を支える日本では、質、量ともに安定した電力が年間を通じて絶え間なく供給される必要があります。例えば、日本が世界に誇る製品である自動車の部品総数は3万点以上ともいわれています。これらの精密部品を製造する際には数ミリの誤差も許されません。電気供給にむらがあると、そうした部品の大量生産は困難です。
再エネは原発ゼロ社会の柱となるエネルギーですが、自然条件に発電量が左右されやすい面があります。そのため、安定的に発電できる火力発電が、予期しない停電などに備えるバックアップ(予備)電源としての役割も担います。
反面、火力発電のデメリットは、環境への悪影響や、燃料調達のコスト高です。
火力発電の発電効率が悪い場合には、大気汚染がもたらされます。日本では古い時期に建設された火力発電所も含め、ほぼ全ての火力発電所で大気汚染を防ぐ環境対策が施されています。例えば、1967年に運転開始した、大都市部に位置する磯子火力発電所(横浜市)は大気汚染の原因物質である硫黄酸化物(SOX)などを、ほとんど除去する排煙脱硫装置を既に備えていました。
日本の石炭火力の発電効率を米国、中国、インドの3カ国に適用した場合、合計13.5億トンの二酸化炭素(CO2)を削減できるという政府の試算もあります。これは日本の石炭火力の年間CO2排出量の約5倍にあたります。
また、燃料調達にお金がかかります。東日本大震災以降、日本では燃料に使うLNG輸入が急増しました。2011年度の輸入金額は21兆円と前年比5兆円も増えました。調達費用の増加による電気料金の上昇が国民生活を圧迫するのではないかと懸念されています。
こうした環境負荷の問題もコスト問題も、火力発電所の高効率化で解消できます。

発電所で燃やした燃料のすべてが電気に変換できるわけではありません。いわゆる熱効率は中国、インドなどの新興国や途上国では、100のエネルギーに対し30程度。日本の原発も30程度です。これに対し日本の火力発電は平均で40台。最先端の火力発電技術では60にまで熱効率を高めた「コンバインドサイクル発電」が登場しています。さらに捨てられてしまう排熱を再び利用する「コジェネレーション」を活用すれば、熱効率は80以上にまでなります。この技術は世界的にトップレベルであり、2030年までに予想されている世界の火力発電市場(規模2000兆円)で、日本の火力発電技術が活躍する場ができます。大型投資を内外ともに活発化させることで、経済成長にもつながるはずです。
「第1世代」と呼ばれる蒸気タービンだけで発電する現在の火力発電所を、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「コンバインドサイクル発電」を中心にした「第2世代」に置き換えた上で、第2世代に高温型燃料電池を組み合わせたトリプル発電を中心にした「第3世代」も商用化する必要があります。原発が担う3割分を、再エネや省エネルギーの普及拡大で1割補い、残り2割を高効率の火力発電でカバーするというのが理想的ではないでしょうか。そういう意味でも一刻も早く高効率の火力発電を実現させることが重要です。
「第2世代」の一つで、石炭をガス化して発電する「石炭ガス化複合発電(IGCC)」の商用機は即刻建設可能です。それでIGCCへの全面移行は10年だと見ています。トリプル発電は20年です。ただ、古い火力発電所を全て置き換える時間が必要ですので、全体で約40年程度かかるといわれています。
東日本大震災以降、火力発電に大きく依存する状況が生まれ、割高な液化天然ガス(LNG)を大量に輸入せざるを得ない状況が続いています。これが、日本の貿易収支を大幅に悪化させた原因の一つです。そして、重要な点はLNG輸入による費用が、やがて電力料金に跳ね返らざるを得ないということが、課題となってきました。
電力料金が上がると産業界の負担も大きくなります。特に、中小企業への悪影響です。日本経済は原料を輸入して加工し、付加価値を高めて輸出することで成り立っています。その産業技術力は中小企業が支えています。中小企業と協力し合ってこそ火力発電技術の発達もあります。高い品質の電力を安定的に確保できないために中小企業がダメになると、日本の産業は再起不能になるのではないかと非常に懸念しています。
(写真は、国内でも最も効率の高い石炭火力発電所・常陸那珂火力発電所)
火力発電の発電効率が悪い場合には、大気汚染がもたらされます。日本では古い時期に建設された火力発電所も含め、ほぼ全ての火力発電所で大気汚染を防ぐ環境対策が施されています。例えば、1967年に運転開始した、大都市部に位置する磯子火力発電所(横浜市)は大気汚染の原因物質である硫黄酸化物(SOX)などを、ほとんど除去する排煙脱硫装置を既に備えていました。
日本の石炭火力の発電効率を米国、中国、インドの3カ国に適用した場合、合計13.5億トンの二酸化炭素(CO2)を削減できるという政府の試算もあります。これは日本の石炭火力の年間CO2排出量の約5倍にあたります。
また、燃料調達にお金がかかります。東日本大震災以降、日本では燃料に使うLNG輸入が急増しました。2011年度の輸入金額は21兆円と前年比5兆円も増えました。調達費用の増加による電気料金の上昇が国民生活を圧迫するのではないかと懸念されています。
こうした環境負荷の問題もコスト問題も、火力発電所の高効率化で解消できます。

発電所で燃やした燃料のすべてが電気に変換できるわけではありません。いわゆる熱効率は中国、インドなどの新興国や途上国では、100のエネルギーに対し30程度。日本の原発も30程度です。これに対し日本の火力発電は平均で40台。最先端の火力発電技術では60にまで熱効率を高めた「コンバインドサイクル発電」が登場しています。さらに捨てられてしまう排熱を再び利用する「コジェネレーション」を活用すれば、熱効率は80以上にまでなります。この技術は世界的にトップレベルであり、2030年までに予想されている世界の火力発電市場(規模2000兆円)で、日本の火力発電技術が活躍する場ができます。大型投資を内外ともに活発化させることで、経済成長にもつながるはずです。

「第2世代」の一つで、石炭をガス化して発電する「石炭ガス化複合発電(IGCC)」の商用機は即刻建設可能です。それでIGCCへの全面移行は10年だと見ています。トリプル発電は20年です。ただ、古い火力発電所を全て置き換える時間が必要ですので、全体で約40年程度かかるといわれています。
東日本大震災以降、火力発電に大きく依存する状況が生まれ、割高な液化天然ガス(LNG)を大量に輸入せざるを得ない状況が続いています。これが、日本の貿易収支を大幅に悪化させた原因の一つです。そして、重要な点はLNG輸入による費用が、やがて電力料金に跳ね返らざるを得ないということが、課題となってきました。
電力料金が上がると産業界の負担も大きくなります。特に、中小企業への悪影響です。日本経済は原料を輸入して加工し、付加価値を高めて輸出することで成り立っています。その産業技術力は中小企業が支えています。中小企業と協力し合ってこそ火力発電技術の発達もあります。高い品質の電力を安定的に確保できないために中小企業がダメになると、日本の産業は再起不能になるのではないかと非常に懸念しています。
(写真は、国内でも最も効率の高い石炭火力発電所・常陸那珂火力発電所)