11月20日、公明党の石井啓一政調会長は、公明党の経済政策とデフレ脱却への方策について語りました。
参考写真金融政策について公明党はどう考えるか。
石井啓一政務調査会長:まず、物価目標とデフレ脱却の時期をきちんと設けるべきです。公明党は1〜2%程度の物価上昇率と2年以内のデフレ脱却を掲げています。
 物価目標とデフレ脱却の時期は政府と日本銀行(日銀)が共有し、デフレ脱却まで日銀は金融緩和を続けていく必要があります。
日銀法を改正し、政府と日銀の連携を強化していくべきとの主張が出ているが。
石井:政府と日銀が物価目標やデフレ脱却の時期を共有することが重要であって、日銀法改正は必ずしも必要ではありません。金融緩和の手段については、日銀の独立性を尊重し、日銀に任せるべきです。
日銀が国債を直接引き受ける案も出ているが。
石井:政府が日銀による国債の直接引き受けを強要すると、財政健全化に悪影響が生じます。
 国債は市場で売買され、金利がどうつくかによって国債の評価が得られます。金利が高くなれば、それだけ日本の財政への懸念が強くなったことを意味します。
 市場を通さず、日銀が国債を直接引き受ければ、市場での評価を気にせず、国債発行ができるようになるため、財政健全化のタガが外れてしまいます。その結果、市場は「日本の財政規律は緩んだ」と受け止め、国債金利が上昇しかねません。
現在の金融緩和策で十分か。
石井:日銀は91兆円規模の基金を通じて市場から国債などの資産を買い入れ、市中に大量の資金を供給しています。ただ、金融緩和の効果を一段と高めるには、買い入れる資産をより多様化しなくてはなりません。例えば、今より残存期間(償還日までの期間)が長めの国債を買い入れてもいいのではないかと考えています。
このほかデフレ脱却に必要なことは。
石井:金融緩和で市中に大量の資金が供給されても、企業や個人の借り入れが増えて設備投資や個人消費が活発化しなければ、景気は回復しません。
 そのために、政府が財政、税制上の措置や規制緩和を駆使して需要を喚起していく取り組みが重要です。
 その一環として公明党は、当面の対策として、今年度補正予算などを通じてエコカー補助金の復活などの緊急経済対策を講じます。
 その上で、需要を生み出す成長戦略として、(1)再生可能エネルギーや省エネルギーの拡大(2)人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用した再生医療など健康・医療産業の育成(3)農林水産業の活性化(4)観光産業の振興―などを推進します。
 また、同時並行で需要創出の“攻めの一手”である「防災・減災ニューディール」も進めます。
 国民の命を守るため、全国で総点検を行って真に必要な事業を精査し、社会資本の再整備だけでなく、防災教育などのソフト対策も組み合わせていることから、従来のバラマキ型公共事業とはまったく違います。

公明党が「日銀の国債引き受け」発言に待った
(ロイター東京2012/10/21)
政府・民主、日銀に次いで、公明党も安倍晋三自民党総裁が主張する「日銀の国債引き受け」に待ったをかけた。中央銀行の独立性と財政の信認をゆるがし、経済への悪影響が懸念される強硬論に慎重な対応を求めた。
こうした動きを察知してか、安倍総裁は政権公約発表の記者会見で自身の発言を軌道修正した。
ある関係筋は、財政法上の「禁じ手」との批判ラッシュに「軌道修正に追い込まれた」とみる。まして既に始まった票読みで自民党の獲得議席数は200議席前後。比較第1党は可能ながら単独過半数には届かず、公明党との連立は避けて通れない情勢だ。その公明党からも「直接引き受けは論外だ」(石井啓一政調会長)と厳しい声が上がった。
公明も重点政策に物価目標設定
石井氏は21日、ロイターの取材に「市場を経て国債を出すからこそ、金利で国債の信用が図れる。直接引き受けになれば、財政規律が決定的に損なわれ、金利は跳ね上がる」と懸念を示し、現実的な対応を求めた。
17日に公表された公明党の重点政策(マニフェスト)では、デフレや円高克服に向け、防災・減災ニューディールで需要を創出、成長戦略で2年以内にデフレから脱却し、実質2%程度、名目3─4%の経済成長を目指す方針を明記した。金融政策の強化も掲げ、「一定の目標年次を定めて1─2%程度の物価水準を達成すること」を盛り込んだが、自民党に比べればマイルドだ。
石井氏は「われわれは物価目標はやるべきと考える。2%程度をターゲットとした物価目標を設定し、政府・日銀が協定を結ぶ。政府と日銀が政策的に物価水準の目標を共有することが重要で、必ずしも日銀法改正が必要だと思わない」と指摘。物価目標の達成には政府・日銀双方が責任を負うとし、総裁の解任権についても「そこまで果たして必要なことかとの印象を持つ」と語った。
もっとも、日銀に対しては「デフレ克服までは金融緩和を続けるということだ」と指摘。これまでの金融政策については「小出し小出しだ。日銀の小心さが出ている」と苦言を呈し、「買い取り資産の多様化や、国債の残存期間の工夫」など検討の余地があると提言している。
安倍総裁は21日午後、衆院選で掲げる政権公約の記者会見で、日銀による建設国債買い入れ発言には、市場でオペを通じて行うことを述べたもので、直接引き受けを言ったわけではないと説明。「日銀が買いオペで市場から買う。直かに日銀が買うことを言っているわけではない」と軌道修正した。同席した甘利明政調会長も、政府・日銀の連携強化の仕組みとして「日銀法改正も視野」とした日銀法改正議論について「物価目標ができなければ総裁のクビを取れというようなことは考えていない。日銀の独立性は確保していく」と明言し、政治介入の批判をかわす柔軟姿勢に転じた。