参考写真 3・11東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県宮古市は、国の支援を待たず、企業とともに独自の復興策「BLUE CHALLENGE PROJECT」を打ち出しました。燃料電池車の量産をにらみ、地産地消の水素タウンを目指すます。
 11月26日、岩手県宮古市に、トヨタ自動車や八千代エンジニヤリングなど12社が勢揃いして、FCV(燃料電池車)が走る水素タウンを作ると発表しました。
 このプロジェクト目玉は、世界初のCO2(二酸化炭素)フリーの水素インフラとトヨタの量産型FCVです。トヨタは2015年に量産型FCVを発売します。福島第1原子力発電所事故で、日本のエネルギー政策の転換が迫られる中、電気に頼らないTCVの開発は、大いに期待されるプロジェクトです。
 水素インフラは、東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市圏から整備することで、国と関係業界は合意しています。ただし、既存の水素インフラは天然ガスや石油といった化石燃料から水素を作っており、根本的なエネルギーシフトを導くものとはなっていないのも事実です。
 一方、この4大都市圏以外で初めて水素タウンを目指す宮古市は、地元の木材を原料に世界初のCO2フリーの水素タウンをめざします。いわばエネルギーの『地産地消』を目指すわけです。木質バイオマス施設によって生み出される「電気・熱・燃料(水素エネルギー)」などを活用する取り組み。発電施設で既に一般的となっている電機と熱を利用するコージェネレーション(熱併給発電)に加えて、次世代自動車の燃料となる水素を利用でき、商用利用では初の試みとなります。このプロジェクトには、会長に名古屋大学教授の西村眞氏、副会長に長岡技術科学大学客員教授 石黒義久氏、宮古市長 山本正徳氏、トヨタ自動車や三井化学といった大手メーカーも参加しています。
 具体的には、木材チップをガス化し、生じたガスから水素を作ります。FCVの台数が少ないうちは、すべてのガスを水素製造に回すのではなく、発電機を通して電力と熱を得る。電力は再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」を利用して売電し、熱はビニールハウス栽培などで利用することでコストを回収するとしています。中核の木材のガス化技術は、ジャパンブルーエナジー社が開発します。ジャパンブルーエナジー社は、「ベンチャー企業である当社の試験設備に世界各国の企業が訪れる。自社製品が木材由来の水素を使えるか確認するのが目的だ」と語っています。
 水素社会の勃興をにらんで準備を進める企業は、日本だけでも相当数存在します。福岡県が産官学で運営する「福岡水素エネルギー戦略会議」の会員が666企業・機関に上ります。宮古市のプロジェクトの参加企業からは「再生可能エネルギーと水素社会をつなぐ初の試みであり、水素社会の成否を握る試金石。何が何でも成功させたい」という声が湧き上がっています。
 プラントの建設費用は約20億円。これから設計を詰め、トヨタのFCVの量産に間に合うよう2014年秋の稼働を目指します。