中央銀行の独自性を担保する日銀法の改正は必要なし
参考写真 民主党政権から自公政権への政権交代で、やっと日本銀行(日銀)が、デフレ経済克服に向けた金融政策にその重い腰を上げようとしています。
 日銀は12月20日の金融政策決定会合で、現行の「中長期的な物価安定のめど」(消費者物価で前年比1%上昇)の表現を見直し、拘束力のある物価目標の導入を来年1月下旬の決定会合で検討する方針を打ち出しました。
 公明党は一定の目標年次を定めて1〜2%程度の物価目標を設定することが望ましいと、今まで一貫して提言していました。効果の高い金融政策の実施を日銀に望みたいと思います。
 金利操作など従来の金融政策に対し、物価目標の設定は“非伝統的”金融政策と呼ばれています。目標の設定は「将来もデフレが続く」という市場の強い不安心理を払拭するのに極めて有効であるとされています。
 日銀が物価目標を明確化した上で、今回決定した「資産買い入れ基金」の10兆円増を含む金融緩和と合わせれば、長期金利の低下が促され、企業や家計は資金を借りやすくなるはずです。そのプロセスが広がれば市場の資金循環が正常化し、デフレ状態から抜け出す大きな力となると確信します。
 物価目標の効果を疑問視する声もありますが、先進国では米国や英国、ニュージーランドでも導入され、物価安定に貢献しています。何より8カ月半ぶりに1万円の大台を回復した株式市場の反応が、その必要性を訴えています。また、「早期のデフレ脱却に向け、金融政策にはまだできることがある」(岩田一政・日本経済研究センター理事長 12月12日付「日経」)と、物価目標設定を期待する識者も多いのは事実です。
 一方、日銀に対して強力な金融緩和を促すために日銀法改正を求める声も安倍総裁を中心に自民党内にも根強くあります。しかし、歴史的経緯や日銀の金融政策が国内だけでなく海外経済にも影響を与える点を踏まえれば、政策の独立性を脅かす法改正には慎重であるべきです。
 そもそも日銀法は1997年に、長年の反省を生かして抜本的な法改正を行ったばかりです。その反省とは、金融政策には「自主性」と政治・政府からの「独立性」が不可欠であるという、バルブ経済への対応の失敗から生まれたものです。
 独立性を担保する仕組みとして、(1)日銀の最高意思決定機関である政策委員会のメンバーは、政府と意見を異にすることを理由に解任されることはない(2)政府は日銀に対して業務を行うことを命令できない。との2つの仕組みを取り入れました。つまり、政府は一度任命された人事や日銀の金融政策に「口出し」はできないということです。
 この大原則を反故にし、先祖返りすることにどんなメリットがあるのでしょうか?法改正よりも重要なのは、「政策協定(アコード)」といった形で政府と日銀が物価目標を共有し、日銀の金融政策と政府の財政政策の両輪で長引く経済低迷の克服を図ることです。
 デフレ脱却は、巨大な凧を浮かす作業に似ているといわれます。風の流れ(金融)と糸を引っ張る力(財政)のどちらが欠けても、またバランスが崩れても上手く浮揚しません。
 その意味で公明党が先の衆院選で掲げた、老朽化した社会資本の改修など10年間で100兆円の集中投資を行う「防災・減災ニューディール」は雇用と需要創出に即効力があります。大型補正予算による緊急経済対策とともに実施を急ぐべきです。
 12月20日、公明党の山口那津男代表はBSの番組に出演し、自公連立政権に向けた政策協議に関して、「(東日本大震災の)被災地復興を加速し、景気・経済を回復軌道に乗せる第一弾として10兆円規模の補正予算(を組んで)、国民の生命を守るための防災対策に力を入れる点でかなり一致している」と述べました。
 補正予算については「政権発足後、速やかに編成に取り掛かりたい」とした上で、「来年度予算案は衆院選が遅れたため、年度内に成立できないかもしれない。経済が息切れしては困るので、大型の補正予算でつないでいくという重要な意味がある」と強調しています。
 さらに、「来年度予算が12カ月だとすれば、補正予算を3カ月分たっぷりやって、15カ月の連続した予算を行っていくということだ」と述べるとともに、「雇用を生み出す景気対策をやることが大事だ。人為的に雇用を維持するには限界がある」と指摘しました。
 こうした発言や他の公明党幹部の話しを総合すると、来年2月までのは大型補正予算を上げる。その後、暫定予算を組み、本予算は4月をまたいでも良い、と腹を決めているように感じました。
 15ヶ月予算を組んでも、不況を克服するという力強いメッセージです。
 来年平成25年は、新政権での金融政策と財政政策のベストミックスで、不況克服“元年”となることを大いに期待します。