1月21日、原子力規制委員会の有識者チームの会合(発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム)に、原子力発電所の新たな安全基準の骨子案が示されました。
その柱は、原発事故などが起きた場合、原子炉の制御や冷却ができる施設を、原発から離れた場所に設置するというものです。この「特定安全施設」は、地震や津波だけではなく、テロや飛行機事故に原発が巻き込まれることも想定されました。
この新たな安全基準は7月までに決められ、それを基に全国の原発の再稼動を行うか、審査が行われることになります。
こうした新たな施設を作るとなると、膨大な費用がかかることも予想されており、すでに電力会社側から反対意見が出ています。
福島第一原発事故で、原発の“安全神話”は根底から崩れ、全ての原発の即時廃炉を求める声も大きく上がっています。
これに対して、国の原子力規制委員会は、国際的にも認められる基準を元に、原発の新たな安全基準を作り、電力会社に義務づける方針です。その基準を満たした原発にのみ再稼動を許す方針です。
福島第一原発の事故で大きな問題となったのは、複数の非常用の発電機などが、同じ施設内に設置されていたことで、想定外の大津波によって水没した結果、同時に機能を喪失してしまうという、それまで考えていなかったような事態が起きたことでした。
大規模な自然災害、テロなどといった設計の想定を超える事態で起きる、いわゆる“シビアアクシデント”への対応は、事故前まではほとんどなされていなかったといっても過言ではありません。
新たな安全基準はそれまでの設計基準を厳しく見直すとともに、大規模な自然災害への対応や、テロ対策を、原子力発電施設に法律で義務づけることになります。
その柱は、原発事故などが起きた場合、原子炉の制御や冷却ができる施設を、原発から離れた場所に設置するというものです。この「特定安全施設」は、地震や津波だけではなく、テロや飛行機事故に原発が巻き込まれることも想定されました。
この新たな安全基準は7月までに決められ、それを基に全国の原発の再稼動を行うか、審査が行われることになります。
こうした新たな施設を作るとなると、膨大な費用がかかることも予想されており、すでに電力会社側から反対意見が出ています。
福島第一原発事故で、原発の“安全神話”は根底から崩れ、全ての原発の即時廃炉を求める声も大きく上がっています。

福島第一原発の事故で大きな問題となったのは、複数の非常用の発電機などが、同じ施設内に設置されていたことで、想定外の大津波によって水没した結果、同時に機能を喪失してしまうという、それまで考えていなかったような事態が起きたことでした。
大規模な自然災害、テロなどといった設計の想定を超える事態で起きる、いわゆる“シビアアクシデント”への対応は、事故前まではほとんどなされていなかったといっても過言ではありません。
新たな安全基準はそれまでの設計基準を厳しく見直すとともに、大規模な自然災害への対応や、テロ対策を、原子力発電施設に法律で義務づけることになります。
21日の会合で提示された新たな骨子案のポイントは、以下のとおりです。
【設計段階で求めるもの】
【シビアアクシデントに対する基準】
電力会社からは異論も
こうした骨子案に対して、すでに対策の実施を求められる電力会社からは異論や注文が出ているようです。新たな安全基準では福島の事故を教訓に、安全上重要な設備の「多重性」や「多様化」を厳しく求めています。しかし、電力会社側は、骨子案のように厳格に新たな施設の設置を求める方が、リスクが高まったり、現実性が乏しかったりすると主張しています。
今月18日の専門家会議で電力会社から初めて意見を聞いた際には、例えばフィルターベントの設備を2系統求める方針について、「1系統でも十分、信頼性を確保できる」とか、「配管が長くなると地震で破損するリスクが高まる」などと異論が相次ぎ、「既存の設備を活用して要件を満たせる場合は、新規の設置を免除するなど電力会社が柔軟に対応できる基準にしてほしい」などと要望が、出されています。
運転再開の審査が焦点に
新たな安全基準は、新しく原発を作る際にはもちろん、すでに建設済みの原発にも適用されるため、ことし7月以降に実施される原発の運転再開の審査にも使われることになっています。
規制委員会はこれらの対策のうち、テロなど設計で求める基準を超える対策の一部については、起こる頻度が小さいなどとして、一定の条件を満たせば、運転再開の審査をする段階では、猶予を認める方針です。
どの対策を審査の段階で求めるのかは、今後、議論することになっていて、原発の運転再開の時期にも影響することから今後の焦点の1つです。
2度と福島のような事故を起こさないために、安全を第一にした基準が求められるなか、それぞれの対策を求める意味や、なぜ対策に猶予期間を認めるのかなど、国民に分かりやすく説明していくことも、今後、規制委員会は問われることになります。
と同時に、建設後30年を経過しているような原発や活断層が疑われているような原発に、こうした安全基準を義務付けることが経費的に意味があるのかの議論も不可欠です。例えば、東海第2原発は稼働後34年目(1978年11月稼働)になりますが、こうした大規模な安全対策公示を施すと過大な費用がかかる上に、準備ができるまでに40年の寿命に達してしまいます。規制委員会が示す安全基準とともに、政府の政治判断により高寿命化した原発やリスクの高い原発に関しては、廃炉への選択をできるだけ早く行うべきと主張します。
参考:第11回発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム関連資料(2013/1/21)
【設計段階で求めるもの】
- 福島第一原発の事故ではすべての電源が失われて事故が拡大したことから、外部からの電力の供給がなくなっても少なくとも24時間分もつバッテリーを備えること。
- 津波などで建屋の内部に水が入った場合に備えて遮水壁や排水設備を設けること。
- 火災に備えて、安全上重要な機器を作動させるための電源ケーブルなどを燃えにくいものにすること。
【シビアアクシデントに対する基準】
- テロなどによって建屋などが大規模に壊れても、原子炉を冷やすことができる「特定安全施設」と呼ばれる施設の整備。
「特定安全施設」は、現在の原子炉建屋内にある安全装置とは別に、独立した施設として建屋の外に新設されるもので、例えば原子炉内や、格納容器に溶け落ちた燃料に注水できる配管のほか、中央制御室の代わりに原子炉の状態を監視できる「第二制御室」などが含まれます。これらの施設は、航空機の墜落などでも壊れないことが要件で、頑丈な壁で覆うか、または建屋からおよそ100メートル離して設置するかなどが求められています。
- 「フィルターベント」を2系統設置。
福島の事故の際に格納容器の圧力を下げるベントが思うようにできずに、結果として格納容器が損傷し、放射性物質の大量放出につながったことから、放射性物質の放出を抑えながら格納容器内の圧力を下げる「フィルターベント」と呼ばれる施設を2系統設置すること。
電力会社からは異論も
こうした骨子案に対して、すでに対策の実施を求められる電力会社からは異論や注文が出ているようです。新たな安全基準では福島の事故を教訓に、安全上重要な設備の「多重性」や「多様化」を厳しく求めています。しかし、電力会社側は、骨子案のように厳格に新たな施設の設置を求める方が、リスクが高まったり、現実性が乏しかったりすると主張しています。
今月18日の専門家会議で電力会社から初めて意見を聞いた際には、例えばフィルターベントの設備を2系統求める方針について、「1系統でも十分、信頼性を確保できる」とか、「配管が長くなると地震で破損するリスクが高まる」などと異論が相次ぎ、「既存の設備を活用して要件を満たせる場合は、新規の設置を免除するなど電力会社が柔軟に対応できる基準にしてほしい」などと要望が、出されています。
運転再開の審査が焦点に
新たな安全基準は、新しく原発を作る際にはもちろん、すでに建設済みの原発にも適用されるため、ことし7月以降に実施される原発の運転再開の審査にも使われることになっています。
規制委員会はこれらの対策のうち、テロなど設計で求める基準を超える対策の一部については、起こる頻度が小さいなどとして、一定の条件を満たせば、運転再開の審査をする段階では、猶予を認める方針です。
どの対策を審査の段階で求めるのかは、今後、議論することになっていて、原発の運転再開の時期にも影響することから今後の焦点の1つです。
2度と福島のような事故を起こさないために、安全を第一にした基準が求められるなか、それぞれの対策を求める意味や、なぜ対策に猶予期間を認めるのかなど、国民に分かりやすく説明していくことも、今後、規制委員会は問われることになります。
と同時に、建設後30年を経過しているような原発や活断層が疑われているような原発に、こうした安全基準を義務付けることが経費的に意味があるのかの議論も不可欠です。例えば、東海第2原発は稼働後34年目(1978年11月稼働)になりますが、こうした大規模な安全対策公示を施すと過大な費用がかかる上に、準備ができるまでに40年の寿命に達してしまいます。規制委員会が示す安全基準とともに、政府の政治判断により高寿命化した原発やリスクの高い原発に関しては、廃炉への選択をできるだけ早く行うべきと主張します。
