■「生活扶助」を減額、低所得世帯との“逆転現象”や物価下落に対応
参考写真 来年度の予算編成で焦点の一つだった生活保護費について、来年度から3年かけて740億円削減されることが決まりました。今年8月からは、保護を受けている世帯のほとんどで保護費が引き下げられることになります。
 来年度予算案の閣僚折衝で、自民党が公約で「削減」を掲げた生活保護費について、食費や光熱費などを賄う「生活扶助」の削減が決まりました。来年度予算の概算要求段階より、来年度だけで220億円(2.2%)削減し、今後3年間で計740億円削減することになりました。
 生活扶助は年齢や居住地、世帯人数によって決まるため、引き下げ幅は世帯によって異なります。現在、保護を受けている世帯の96%で減額となり、子供など世帯の人数が多いほど減額の額が大きくなります。
 例えば、都市部に住む40代夫婦と子ども2人の世帯では3年後の15年度以降、基準額がこれまでより2万円も下がり、月20万2000円となります。逆に、町村部に住む60代の単身世帯は1000円上がり、6万4000円となります。
 今回の基準の適正化は、主に物価下落分を反映させたものです。しかし、安倍政権は2%のインフレ目標を経済政策の据えています。なぜ、今、生活扶助費削減なのか、未だに納得がいきません。
 今後、景気・経済が回復し物価が上昇した場合は、適時適切に支給額を引き上げることが必要なのは、言うまでもありません。
 公明党は、生活保護の不正受給対策を徹底するとともに、生活困窮者の自立・就労支援策を強化することの重要性を強調してきました。
 公明党の主張を踏まえ、政府は生活保護に至る前の自立支援策を強化するため、生活訓練などを含む就労支援策の創設や、生活困窮家庭の子どもへの学習支援の実施などを盛り込んだ新法を今国会に提出します。また、就労に意欲を持つ生活保護受給者への支援拡充や不正・不適正受給対策など生活保護を見直します。
 13年度は全額税負担の医療費「医療扶助」の削減も目指し、安価な後発医薬品(ジェネリック薬品)の使用を原則とすることなどで450億円分を浮かす方針です。
■医療扶助の不正をチェック、厚労省がレセプト解析ソフト開発
 また、生活保護費の半分を占める「医療扶助」の不正受給を削減する政策実施も重要です。厚労省は昨年秋より、電子化されたレセプト(診療報酬明細書)を活用し、不審な点が疑われる事例を瞬時に発見するソフトを開発。全国の自治体に導入しました。
 過去最多の更新が続く生活保護費は、平成24年度当初予算ベースで3兆7千億円。うち受給者の医療費に当たる医療扶助は1兆7千億円にも上ります。
 医療扶助は受給者の窓口負担がないため、過剰な診療、薬の投与が起きやすくなっています。転売目的で不正に薬が処方される悪質な事例も後を絶ちません。
 厚労省は23年度から、レセプトを調べるソフトを全国の自治体で本格運用。しかし、ある薬の過剰処方を探す場合、その薬を使ったレセプトを検索した後、さらに個人名で集計し直す必要があるなど、手間がかかっていました。今回のソフトは旧ソフトを改良。約100種ある向精神薬についても、処方の回数や投薬量を指定すると、その条件を超えた個人を抽出できるといいます。
 「医療扶助」の不正請求は、生活保護時給社だけの問題では無く、実は、医療関係者側の不正とも根深くリンクしています。こうした裏の生活保護ビジネスを根絶する必要があります。
■「ナマポ」受給者を減らす対策が急務
 実は、生活保護受給者数が「本来は働ける世代の若者の受給者の増加」によることが指摘されています。若年層の生活保護受給者を、ネット上では「ナマポ」と呼んでいます(生活保護=>生保=>ナマポ)。2ちゃんねるなどの掲示板はで、生活保護を受けるためのノウハウが堂々とアップされている実態があります。
 民主党が政権を奪った当たりから、20歳〜39歳の生活保護受給者が急増しています。「格差社会」や「ワーキングプア」といわれ、「働いても貧乏な人が増えている」ことが喧伝されました。しかし、その結果は、「働かない若者の急増」でり、「貧しくとも汗して働き、生活の糧を得ようとする若者」が少なくなってしまいました。
 確かに生活保護受給者は、医療費や介護費、家賃が無料になり、NHKの受信料、住民税、国民年金保険料も免除され、JR通勤定期運賃や光熱費も減額されます。独身者でも月に10万〜15万円受給することができます。
この生活保護受給額は、最低賃金よりも高い場合もあるという矛盾が起こっています。年収200万円以下の「ワーキングプア層」よりも、生活保護の特典により、生活保護受給者の方が可処分所得が多くなってしまうと言う逆転現象が起こっています。
 生活保護に頼ることなく、懸命に働く方々への配慮が必要です。生活保護費が引き下げられることで、最低賃金が低い水準にとどまることは、絶対に避けなければなりません。
 若年層には就業支援など現実社会への再スタートを支援する施策充実が何より必要です。
■生活保護費は国民の最低生活の基準
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 生活保護費の基準というのは、国が決める最低生活費、いわば、国民の最低生活水準であるという側面も見逃せません。所得の低い世帯を支援する対策の多くが、この生活保護の水準に連動しています。
 たとえば、非課税世帯は住民税を免除されるだけではなく、国民健康保険料や高齢者の介護保険料の減免などの措置が受けられます。生活保護の基準が下がれば、非課税世帯の基準も連動して下がりますので、これまでと収入は変わらないのに、突然、非課税世帯の対象からはずれて税の負担を求められたり、減免措置が受けられなくなったりする世帯が出る懸念があります。
 例えば学童の就学援助の問題。生活に困っている世帯の子どもたちに学用品や修学旅行の費用などを支給する制度ですが、全国で157万人が支援を受けています。全国の小中学生の6人に1人が就学援助を受けている計算になります。この「就学援助」は、多くの自治体で生活保護基準額を支給の目安にしています。このため就学援助費が減額されるとの不安もあります。公明党は、この基準の変更には強く反対しており、今のところ、文部科学相も引き上げには慎重な姿勢を示しています。
 長引く景気の低迷で、生活保護受給者は増加傾向にあります。こうしたことを踏まえると、生活保護に至る前の生活困窮者対策が重要です。公明党は、第二のセーフティーネット(安全網)の構築やケースワーカーの増員などを強く要望しました。生活保護制度のセーフティーネット機能を守るために引き続き、取り組んでいきます。