0213shikkann_hyou_09 1月27日、田村憲久厚生労働相は、医療費助成の対象疾患を大幅に拡大する難病対策の新制度について、2014年度の実施を目指すことを明らかにしました。27日行われた麻生太郎財務相との閣僚折衝で、14年度予算に新制度の事業費を計上するため、難病対策の新法制定を進めることで合意しました。
 それに先立ち、厚生労働省の難病対策委員会は、「治療研究の推進」「公平かつ公正な支援」「他制度との均衡」「持続可能な仕組み」の4原則に基づき、具体的な改革案を発表しました。
 こ中で注目されるのは、国の医療費助成を受ける「特定疾患治療研究事業」の対象疾患を拡大することです。井手よしひろ県議ら公明党が以前から強く求めてきた内容です。今まで、治療研究推進が目的だった医療費助成に、患者や家族を支援するという福祉的な側面も持たせ、長期療養患者を経済的に支援することになりました。実現すれば、対象疾患はパーキンソン病など現行の56から300以上へ大幅に増えるとみられています。
 これまで対象から漏れ、多額の医療費負担を強いられてきた多くの患者が救済されることになる。患者間の不公平感を取り除くことにもつながります。
 また、主治医の裁量に委ねられた病気の診断なども大きく変わることになります。都道府県が指定した難病医療の専門医が患者の要請を受けて症状の程度を判定、都道府県に設置する審査会から認定されれば受給者証を交付する仕組みに変わります。客観的で正確な判断をすることで、適切な医療費の支出を促すのが目的です。
 一方で、医療費が全額支給される患者にも、所得などを基準に一定の負担を求めることになります。
医療費助成の対象を大幅拡大へ/厚労省審議会 支援策の抜本的な制度改革を提言
 1972年に国の難病対策の指針となる「難病対策要綱」が策定され、8疾患を研究対象とされました。そのうち、神経障害を引き起こす「スモン」や、全身への炎症性疾患である「ベーチェット病」などの4疾患を医療費助成の対象としたのが本格的な“難病対策”の始まりでした。以来40年ぶりに、わが国の難病対策の抜本的な制度見直しが行われることになりました。
 厚労省の厚生科学審議会が先月25日にまとめた提言では、「疾患の克服」「患者の社会参加支援」などによって、難病になっても尊厳を持って生きられる共生社会の実現を基本理念とし、(1)治療研究の推進(2)他制度との均衡(3)公平かつ公正な支援(4)持続可能で安定的な仕組み――の4原則に基づいて具体的な改革案を掲げました。
 厚生科学審議会は、これまでに厚労省の難病研究事業の対象となった482疾患について、(1)希少性(2)原因不明(3)治療法の未確立(4)長期にわたる生活の支障――の4要素に加え、一定の診断基準が確立していることを適用要件として分類。その上で、新制度の医療費助成の対象を、現在の「患者数5万人未満」の疾患から、人口の0.1%程度(約12万人)以下に希少性の要件を緩和した結果、現行の56疾患から300疾患以上へ大幅に増える見通しとなりました。
 これまで助成対象の条件を満たしながらも、財源不足などを理由に対象から漏れ、重い医療費負担を強いられてきた多くの患者が救済される可能性が出てきたわけです。
 また、提言では、病気の診断体制も大きく変わります。都道府県が指定した難病医療の専門医(難病指定医)が患者の症状の程度を判定し、都道府県に設置する「難病認定審査会」で認定されれば「医療受給者証」が交付されます。ただ、症状の程度によっては医療受給者証を受けられない人も出てくるため、認定基準の作り方が大きな課題となります。
 このほか、現在の難病医療拠点病院をさらに発展させ、難病医療の専門性を高めた「新・難病医療拠点病院」(仮称)を都道府県ごとに整備するとともに、難病に関する普及啓発や就労支援の充実、難病相談・支援センターの機能強化なども提言しています。

所得に応じて重症の患者に一定の負担も
 現在の制度では、助成対象疾患の患者は所得に応じて自己負担額の上限が定められ、重症患者は自己負担なしで治療を受けられます。自己負担は、ひと月最大で入院2万3100円、外来1万1550円で済むことになっています。
 今回の提言では、医療費が全額支給されるなど手厚い助成を受けている重症の患者にも所得などに応じた一定の負担を求める方針が打ち出されました。
 提言による給付水準の考え方は、(1)一部負担額が0円となる重症患者の特例を見直し、全ての患者について所得等に応じて一定の自己負担を求める(2)入院時の標準的な食事療養および生活療養への負担は患者負担とし、薬局での保険調剤への自己負担は月額限度額に含める――としています。
 厚労省によると、2011年度末時点で56疾患での医療費の受給者数は約78万人。12年度の総事業費は約1278億円で、10年前の約609億円から倍増しています。
 難病への助成は原則として国と都道府県が2分の1ずつ出し合う制度ですが、国は予算不足を理由に負担を抑える傾向にあり、地方の過重負担も深刻化しています。
 例えば、12年度をみると、国は約1278億円の半分である約639億円を負担する必要がありますが、実際には350億円しか計上されておらず、残りの289億円は地方が負担しているのが現実です。この地方負担分の解消をめざして、国の来年度予算では440億円にまで引き上げられる予定ですが、それでもまだ大きく不足しています。
 提言では、厳しい財政事情の中で、「より多くの難病患者を支援する」ため、一定の給付水準の抑制がなされる方針です。
 しかし、新たな難病対策の導入によって、難病で苦しむ患者自身の医療の質や療養生活の質が落ちることがあっては本末転倒です。長期療養が必要な難病は、長期にわたり高額な医療費負担を強いられています。こうした患者の長期療養を支援するためには、必要な財源の確保が不可欠です。広く国民に公平で、次世代の人も使える法律に基づいた安定的な制度づくりを急ぐ必要があります。

公明党が一貫して推進役果たす
 原因が分からず、治療方法が確立していない難病。細かく数えれば世界で5000〜7000種類もの疾患があり、似た疾患をまとめると500〜600種類あるといわれています。効果的な治療薬がなく、希少疾病のために、その多くが研究すらされていません。
 わが国でこの難病対策が大きく進んだのは2009年度の難病研究予算からです。公明党の粘り強い主張が実り、前年度の4倍に当たる100億円に一気に引き上げられたのです。
 大幅な研究予算の増額で、重点的に治療方法や原因究明を行う「臨床調査研究分野」の対象疾患を123から130疾患に拡大。それ以外の214疾患を新たに「研究奨励分野」として創設させ、これまで研究されていない疾患の実態把握や診断基準作成の道を開きました。
 一方、医療費が助成される特定疾患を一挙に11加え、56疾患にまで増やしたのは記憶に新しい出来事です。
 しかし、それ以降、特に民主党政権では、こうした研究や医療費助成を受けられる疾患の拡大は遅々として進まず、まさに、難病対策にとって闇の期間と言っても過言ではありません。
 医療費助成の対象を現在の56疾患から300疾患以上に拡大することはこれまで公明党が一貫して主張してきたことですが、大幅増が難しい予算の中で対象疾患を拡大することは、これまで手厚い医療費助成を受けてきた人に新たな自己負担を求めることになりかねません。まずは必要な予算の確保であり、そのための法制化が必要です。
 また、一方で、今年4月から施行される障害者総合支援法により、入浴の介護などを行う障害福祉サービスの対象に難病患者も加わりました。しかし、当面は国が指定する130疾患などに限られており、さらに対象の拡大が必要です。また、子どもの難病では、20歳以降に多くが公費助成を打ち切られているのも現実です。このように“制度の谷間”で苦しむ患者の支援も、今後の制度改革の重要な課題なのです。
 公明党は今回の制度改革とともに、医療体制の整備や研究開発、就労支援、福祉・介護の充実なども含めた総合的な「難病対策基本法」の制定が必要であると考えています。
 難病対策の見直しに当たり、難病で苦しむ患者を社会で公平に支えるための総合的な体制整備に全力を挙げて取り組んでいく必要があります。