理研研究グループ、iPS細胞使った臨床研究を3月中にも国に申請へ
関西テレビ(2013/2/14)
 兵庫・神戸市の研究グループが、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った臨床研究を、3月中にも国に申請することになった。
 iPS細胞を使った臨床研究は、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらの研究グループが計画している。
 研究グループでは、「加齢黄斑変性」という、網膜の病気の患者に対し、iPS細胞を使った治療を研究していて、臨床研究については、これまで関係機関の倫理委員会で審査が行われていた。
 また、2012年11月に理化学研究所で、13日に臨床研究を実際に行う先端医療センターの審査委員会でも、安全性試験について、最終報告を提出することなどの条件つきで承認された。
 両機関は、共同で3月中にも厚生労働省へ申請し、承認されれば、2013年度中にも、この細胞を使った世界初の臨床研究が実現することになる。

参考写真 iPS細胞を使った再生医療の実用化へ、意義ある一歩が踏み出されたことを大いに歓迎したいと思います。加齢黄斑変性は加齢に伴う網膜の障害で視力が低下する難病。失明の恐れがあり、根本的な治療法がありません。臨床研究では、患者の皮膚から作ったiPS細胞を傷んだ網膜に移植して視力の回復状況を数年間かけて検証し、効果的な治療法の開発をめざすとされています。
 iPS細胞による再生医療の国際的な開発競争が進む中で、今回の承認は臨床研究でも日本が世界をリードしつつあることを示した形だが、本格普及への課題は少なくありません。
 第一は、臨床研究で成果が得られても、実用化段階では厚労省の承認までにかなりの時間がかかりかねない点です。肝心の実用化で後れを取ることがないよう、これまで前例のないiPS細胞を使った治療に対応する、新たな承認の仕組みなど制度面の環境整備を急がなければなりません。
 もちろん「安全性の確保」も欠かせません。iPS細胞は移植後、がん化するリスクが指摘されていますが、目の細胞組織はがんになりにくいという特性があります。加齢黄斑変性が最初の臨床研究に選ばれた理由の一つがこれです。今後、神経や他の臓器などの病気で臨床研究を広げていくには、安全性についての一層の研究や検証が不可欠となります。
 また、iPS細胞の安定した量産化も重要です。患者自身のiPS細胞で治療するには多くの時間と費用がかかるため、山中教授は移植に適したiPS細胞のストックに「さい帯血バンク」を活用することによって、この問題を乗り越えようと提案しています。
 こうした環境整備や研究促進には、国の継続的な支援が不可欠です。このため自公連立政権は、2012年度補正予算案に214億円を盛り込んだのに続き、2013年度予算案でも90億円を計上。さらに今後10年間、毎年90億円程度を拠出し、拠点整備や疾患別の実用化研究などを後押しする方針です。