2月25日、環境省は高萩市上君田に建設を予定していた指定廃棄物最終処分場の選定に関して、今までの方針を撤回し、新たに選定をやり直すことを決定しました。井上副大臣、秋野政務官の記者会見時に配付された資料を、全文転載いたしました。
平成25年2月25日
環境省

1.はじめに

参考写真 平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、放射性セシウムを含む廃棄物焼却灰、下水汚泥、浄水発生土及び稲わらなどの農林業系副産物が発生し、その処理が課題となった。
 平成23年8月に放射性物質汚染対処特措法(以下「特措法」という。)が公布され、放射性セシウムの濃度が8,000Bq/kg を超える指定廃棄物は国が処理することとされた。また、同年11月には特措法に基づく基本方針が閣議決定され、指定廃棄物の処理は、当該指定廃棄物が排出された都道府県内において行うこととされた。これらを受け、環境省は、既存の廃棄物処理施設を活用した指定廃棄物の処分について地方公共団体等との調整を進めたものの、処分先の確保は進まない状況であった。
 このような状況を踏まえ、環境省は、平成24年3月30日に「指定廃棄物の今後の処理の方針」をとりまとめて公表し、既存の廃棄物処理施設の活用について引き続き検討を行いつつ、指定廃棄物が多量に発生し、施設において保管がひっ迫している都道府県において、国が都道府県内に集約して、必要な最終処分場等を確保することとした。この方針に基づいて、環境省は宮城県、茨城県、栃木県、群馬県及び千葉県の5県において最終処分場候補地の選定作業を進め、平成24年9月、栃木県、茨城県の最終処分場候補地として、矢板市塩田(しおだ)地区、高萩市上君田(かみきみだ)地区の国有林野をそれぞれ提示した。しかし、地元市からの強い反対を受け、地元への説明ができない状況に陥っている。その結果、県や市町村と今後の進め方を相談するところから始めなければならない状況となっており、スケジュールに遅延が生じている。
 平成24年12月に政権交代が行われたことを踏まえ、石原環境大臣の強い指示を受けて、井上環境副大臣、秋野環境大臣政務官を中心に前政権下での取組を検証し、これまでの指定廃棄物の最終処分場候補地の選定プロセスを大幅に見直すこととした。
2.検証の結果

(1) 選定作業の実施や選定結果の共有にあたり、市町村との意思疎通が不足
 環境省は、指定廃棄物の発生状況や保管のひっ迫状況などからみて、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県及び千葉県の5県において、最終処分場等の確保に向け、候補地の選定作業を進めてきた。
 その際、これらの県に対して、最終処分場等を確保することの必要性を説明し、そのための協力を要請した上で、必要な情報の提供を受け具体的な候補地の選定作業を開始した。また、候補地を選定するための選定手順、評価項目、評価基準及び選定結果の提示方法については、環境省の災害廃棄物安全評価検討会に付して専門家の意見を聞くとともに、関係県にも意見を聞き、さらには栃木県、茨城県及び宮城県の全市町村の担当課長等を対象とした説明会を開催し、意見を聞いた上でとりまとめ、選定作業を進めてきた。
 しかしながら、説明会においては、環境省からの説明が中心であり、市町村との間で活発な意見交換ができたとは言えなかった。また、市町村長に対し、候補地の選定手順、評価項目、評価基準及び選定結果の提示方法、処理する指定廃棄物の性状や施設の内容・安全性等についての説明が直接行われておらず、市町村の意思決定権者に十分に関与していただくに至っていない。
 候補地の選定結果の提示方法については、選定手順の中で最終的に一つの候補地を示す旨説明がなされていたものの、候補地の選定作業の進捗状況について途中段階での説明が行われず、選定結果に関する十分な事前説明もなく候補地を公表したため、地元との対話環境が毀損され、栃木県及び茨城県の地元の強い反発を招いた。
 最終処分場の候補地選定の取組を円滑に進めるためには県や市町村の協力が不可欠であるが、選定作業の実施や選定結果の共有にあたって、県や市町村と意思疎通が不足していたと言わざるを得ない。

(2)候補地の提示にあたっての詳細な調査、専門的な評価の不足
 候補地の選定手順、評価項目、評価基準及び選定結果の提示方法等については、環境省の災害廃棄物安全評価検討会に付して専門家の意見を聞くとともに、関係県に意見を聞き、さらには栃木県、茨城県及び宮城県の全市町村の担当課長等を対象とした説明会を開催し、意見を聞いた上でとりまとめ、選定作業を進めてきた。
 栃木県、茨城県の最終処分場の候補地は、こうした選定手順等に基づいて環境省が作業を行い、現地調査の上で選定し、提示されたものである。環境省としては、候補地の提示は地元などとの議論のスタートラインであると位置づけ、地元の意向を踏まえた上で、追加的に地盤や地質など、候補地における処理の安全性に係る詳細な調査を行うこととしていた。
 一方、地元からは、候補地の提示に先立って安全性に係る詳細な調査が行われていないことや、調査結果について専門家による評価が行われていないことが問題として指摘されており、候補地における処理の安全性に対する地元の十分な理解が得られていない。
 最終処分場の安全性は、地元にとって最も重大な関心事項であり、候補地の提示に先立ち、詳細な調査や専門家による評価を行っておくべきであった。

(3)各県の状況を踏まえた対応が不十分
 最終処分場の候補地の選定に向けた取組を円滑に進めるためには、指定廃棄物の性状や発生状況、保管のひっ迫状況など、各県の状況を踏まえたきめ細やかな対応が不可欠である。また、最終処分場等の必要性、最終処分場の施設の内容・安全性等について、国、県、市町村の間で十分に情報を共有した上で、県や市町村への協力要請や具体的な意向の聴取など、各県の状況を踏まえた対応を行うべきであった。
 しかしながら、各県とも画一的なやり方で速やかに最終処分場の候補地の選定を行うことを優先し、地域の実情に配慮することや、具体的な意向を吸い上げる仕組みを設けることができていなかった。
3.今後の方針

(1)市町村長会議の開催を通じた共通理解の醸成
 県と協力して、県知事と県内の市町村長が参加する会議(○○県指定廃棄物処理促進市町村長会議(仮称))を設け、以下の事項などについて意見交換を行い、指定廃棄物の処理に向けた共通理解を醸成する。
指定廃棄物の発生・保管のひっ迫状況
最終処分場等の必要性
最終処分場等の内容・安全対策
最終処分場の候補地の選定手順、評価項目、評価基準及び選定結果の提示方法
 選定作業の実施にあたっては、選定作業の進捗状況を共有し、県や市町村の協力を得ながら選定を進める。また、上記の会議を通じて、地域の実情に応じて考慮すべき事項についても十分な配慮を行う。

(2)専門家による評価の実施
 指定廃棄物の最終処分場の安全性や、地元の皆様の安心の確保に万全を期するため、これまで専門家に評価頂いた選定手順、評価項目及び評価基準に加え、最終処分場等の安全性の確保に関する考え方から選定手順に基づいて実施する詳細調査の方法、その結果の評価も含めた一連の作業について、専門家に評価していただくこととする。
 具体的には、速やかに専門家で構成される検討会(指定廃棄物処分等有識者会議(仮称))を3月中に立ち上げ、以下の事項について議論していただく。
最終処分場等の安全性の確保に関する考え方
最終処分場の候補地の選定手順、評価項目・評価基準
候補地の詳細調査の方法
候補地の詳細調査の結果に関する評価

(3)候補地の安全性に関する詳細調査の実施
 候補地の提示にあたって、その安全性に係る詳細な調査の実施や調査結果に関する情報の提示、専門家の評価の存在が、地元の安心を得ることにつながる。
 このため、候補地においてボーリング等による地盤、地質、地下水等の詳細な調査を実施する。そのうえで、専門家から構成される検討会(指定廃棄物処分等有識者会議(仮称))において、詳細調査の結果を踏まえた候補地の安全性についての評価をいただく。当該評価結果を基本としつつ、市町村長会議で提示された、選定にあたって考慮すべき具体的な事項などの地域の状
況を踏まえ、最終的に、環境省が候補地を提示することとする。
4.おわりに

 指定廃棄物は、排出場所での保管が長期化しており、多量の指定廃棄物の処分を迅速に進めることが必要である一方、地元の理解と協力をいただかなければ、指定廃棄物の最終処分場等の設置は困難である。今後の最終処分場の候補地選定にあたっては、有識者会議の関与の下で安全の確保を図るとともに、県や市町村との意見交換等を重視し、手順を踏んで着実に前進できるよう全力で取り組む。