個人情報の保護に万全の対策を!
参考写真 「マイナンバー制度」の関連法案の審議が国会で始まりました。「マイナンバー制度」とは、全ての国民に、国が番号をつける制度です。住所が変わっても、結婚して名前が変わっても、その番号は変わりません。一生、その人だけに振られた番号がついてまわる。それが個人番号制度なのです。
 「マイナンバー制度」には主に3つの機能があります。一つには納税者番号機能、二つには社会保障番号機能、三つには国民ID機能です。
 まず、納税者番号としての機能。「マイナンバー制度」導入によって、所得を正確に把握し、脱税を防ごうという狙いがあります。例えば会社や証券会社が、ある人に対して、報酬やお金を支払ったとします。その時、会社は、報酬の中からいくら税金を天引きしたかという源泉徴収票を、また証券会社は、お客に対していくら支払ったかという支払い調書をそれぞれ税務署に提出します。こうした提出書類は、年間で3億5000万枚にのぼります。税務署は、この支払った側が提出した書類と、受け取った側の人が確定申告で出してきた書類を突き合わせて申告の内容が正しいかどうかを確認しています。しかし、数が膨大なだけに手作業では、限界があります。もし、こうした書類にその人の番号が振られていれば、コンピューターで照合ができ、過少申告などを見つけやすくなります。
 2つ目の社会保障番号としての機能は、年金、介護や医療、生活保護などの社会保障の手続きに使われます。日本は、少子高齢化が急速に進み、社会保障費が国家財政を圧迫しています。2012年度の国の税収は、およそ42兆円。それに対して、実質的な社会保障費は29兆円にのぼります。年金、医療、介護などの社会保障費だけで、国家の税収のおよそ7割を閉めるという大変な事態に直面しています。しかも、この社会保障費は、毎年1兆円ずつ増えていきます。このように社会保障費の抑制は大きな課題ですが、だからといって、一律にカットするわけにはいきません。そこで、これから必要になるのが、所得に応じた社会保障という考え方です。つまり、みんなが一律に同じ社会保障を受ける、というのではなく、たとえば、所得の多い人には、年金などの手当を少しガマンしてもらったり、逆に保険料を多く負担してもらったりするという考えです。そのかわり、本当に所得が低くて困っている人には必要な手当を、キッチリと保障するという考え方です。こうした社会保障制度を実現するためには、所得情報と社会保障のサービスが共通の番号を使って結びつくことで、はじめて可能となります。
参考写真 そして、3つ目が国民ID制度としての機能です。これは電子政府の入り口に当たる機能です。住民票や印鑑証明などの請求や様々な行政の手続きを、ネット上で行う事が出来るサービスが電子政府です。この国民IDの方を、カードの表のICチップの中に記録することになっています。政府は、マイナンバー制度の運用開始に合わせて、インターネット上に専用のウエッブサイト、「マイポータル」を設けるとしています。国民は、個人番号カードの国民IDを使って、このマイポータルにアクセスします。すると、自分の納税情報や、どういう社会保障サービスを受けてきたか、どのような社会保障サービスを受けることができるのかも、わかるようになると言われています。

 今国会で同法案が成立すれば、政府は2016年1月に制度の運用を開始する予定です。番号は少なくても12桁以上で、一人一人、全て異なります。
 15年秋ごろに国民に個人番号などを記載した通知カードを送付します。通知カードを受け取った人は、そのまま持っていてもいいですし、希望すれば市町村の窓口で、顔写真入りのICカードに替えてもらえます。このカードを“個人番号カード”と呼びます。表面には、氏名、性別、住所、生年月日、このいわゆる基本4情報と顔写真が記載され、公的な身元証明として使うことができます。そして、マイナンバーそのものは、カードの裏側に記載される予定です。
 日本は世界に類例のない超高齢社会を迎えます。国家財政も厳しい状況が続きます。社会保障制度を持続可能な安定した制度に再構築するためには、負担と給付の公平性を確保する仕組みが欠かせません。
 しかし、給付の金額が間違っていたり、支給漏れなどの問題が起きているのが現状です。個人所得や納税実績、社会保障給付などの情報を制度ごとに複数の機関がバラバラに管理しているためです。
 マイナンバー制度が導入されれば、社会保障と税などの情報を一元的に把握し管理することができ、こうした事態を防ぐことができます。結婚によって姓が変わっても、転職を重ねても、“消えた年金”のような事例は心配しなくてよくなります。
 加えて、手続きの簡素化などで国民の利便性が高まり、行政の効率化も進むはずです。
 例えば、社会保障給付の申請時に必要な納税証明書などの添付書類は省略できるようになります。また、自宅のパソコンで社会保障などの行政サービスに関する情報を得られるシステムも準備されています。すでに欧米では、同様の制度の普及が進み、社会に定着しています。
 課題は、個人情報の漏洩や不正利用に対する懸念を払拭する取り組みです。
 法案には、独立性の高い第三者機関「特定個人情報保護委員会」を設置して、個人番号に絡む個人情報について監視、監督することが盛り込まれています。さらに公明党の主張により、法案の付則には、法施行後1年をめどに、同委員会を個人情報全般に関する「個人情報保護委員会」へと発展させ、世界の主要諸国並みに個人情報の保護を強化できる道筋も明記しました。
 マイナンバー制度の普及のためには、国民の理解と信頼が不可欠です。国会論戦で、国民の疑問を可能な限り解消しる必要があります。併せて、政府は積極的な広報活動を展開していくべきです。