ワクチンと検診で予防を、全ての女性が正しい理解深めよう
参考写真 4月1日から施行された改正予防接種法で、子宮頸がんなどの予防効果が期待されるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンなどが新たに定期接種化されました。
 子宮頸がんは、子宮入り口の頸部上皮に発症するがんです。日本で年間1万5000人前後の女性が発症し、約3500人が亡くなっています。原因は、ほぼ100%がHPVへの感染です。
 感染を防ぐ方法にワクチン接種があります。産婦人科医らでつくる「子宮頸がん征圧をめざす専門家会議」が昨年、接種費用が公費助成されている自治体での接種率を調査したところ、65%に上った。全額無料の自治体では8割に達しています。国内では中学1年〜高校1年の女子に対するワクチン接種が公費助成されてきました。自治医科大学附属さいたま医療センターの今野良教授は「未接種の場合に比べ、がんの発生、死亡者数を70%以上減らすことができる」と話しており、大きな効果が期待されます。
 しかし、ワクチンは万能ではありません。完全に予防するには、がん検診を受け、細胞が、がんになる前に発見することが大切です。子宮頸がんは、がんになる原因や過程が解明されており、ワクチンと検診の両面からの予防が重要です。
 これまでは国の暫定的な予算措置によってワクチンが接種してきましたが、公明党の主張を受け、4月からは国が勧める定期接種となりました。費用は半年間に3回接種すると約5万円掛かります。この金額の9割を国が負担することになります。これによって、予防接種を受ける方の経済的負担が和らぎ、市町村の負担や予算措置で苦労することもなくなります。
 さらに、大きなメリットは、万一、重い副作用が起きた場合には国の手厚い補償が受けられるようになったことです。
 どんなワクチンにも、まれに副作用が起きます。子宮頸がんワクチン「サーバリックス」は、日本で2009年12月の発売から昨年末までに約684万回接種された。世界100カ国以上で承認されているワクチンです。このうち、重い副作用は88例で失神やけいれんなどが報告されています。
 最近、2011年にHPVワクチンを接種した女子中学生が体のしびれなどを訴えた事例がマスメディアにより連日取り上げられています。サーバリックスの2回目の接種を受けた14歳の女子が、左腕に腫れや痛み、しびれが出るなどして歩くのが困難な状態になったというものです。「子宮頸がんワクチン副反応全国被害者連絡会発足へ」などの見出しで、改正予防接種法の成立自体を危ぶむ報道を行っています。
 これに対して4月9日、日本産婦人科医会は、「子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)副反応報道について」と題する文書を発表しました。その中で、「HPVワクチンは従来通り医学的視点から安全」と冷静な対応を求めています。そして、女子中学生の事例は「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」が疑われていると報告しています。さらに「CRPSはワクチンの成分によって起こるものではなく、外傷、骨折、注射針などの刺激がきっかけになって発症すると考えられている」と指摘しています。CRPSは、傷の程度とは関係なく痛みの範囲がどんどん広がっていく病気で、原因やメカニズムはよく分かっていません。
 日本では現在、HPVワクチン接種後のCRPSは3例報告されていますが、日本産婦人科医会は「極めてまれ」と説明しています。
 健康被害の当事者および家族へのお見舞いの言葉を述べた上で、日本産婦人科医会は「日本では毎年約1万5000人の女性が子宮頸がんに罹患し、およそ3500人が命を落としています。日本産婦人科医会は母子の声明健康の保護の観点から、検診とワクチンで疾患予防に注力してまいります」との立場をあらためて強調しています。
参考:子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)副反応報道について:日本産婦人科医会