参考写真 子宮頸がんワクチンを接種した東京・杉並区の女子中学生に、重い副反応が出たとの一部報道をきっかけに、子宮頸がんワクチンの接種を不安視する声が上がっています。このワクチンの危険性をことさら喧伝する人たちもいるようです。
 そこで一連の「副反応報道」をめぐる疑問について、4月13日付けの公明党新聞より、子宮頸がん征圧をめざす専門家会議実行委員長で、自治医科大学附属さいたま医療センターの今野良教授(産科婦人科)の見解を転載させていただきます。
―子宮頸がんワクチンの安全性に不安の声が上がっています。
今野教授:発端となった杉並区の事例は、「複合性局所疼痛症候群」といわれるもので、手足や肩の痛み、しびれなどがみられます。国内での2種類のワクチン(サーバリックスとガーダシル)接種回数は、合計約830万回で、同症候群は3例(0.000036%)報告されています。しかし、これらは通常の注射や採血による痛みなどでも起こり得ます。今回の件も子宮頸がんワクチンの成分によるものではありません。
 ワクチン接種の有害事象には、副反応のほかに因果関係のない「紛れ込み事故(たまたまワクチン接種後に発生)」も相当数含まれます。各自治体、医療機関、ワクチン製造販売メーカーでは、因果関係に関係なく厚生労働省へ報告しています。また、世界保健機関(WHO)をはじめ世界各国の規制当局も、有効性と安全性モニタリング(監視)を行っています。
 死亡例については、因果関係が認められた事例は国内外で一つもありません。
厚労省「安全に重大な懸念なし」

―「重篤」の定義は何ですか。
今野:有害事象を報告した医師が重篤だと思えば「重篤」と報告されますが、国などによって認定されたものではありません。一般的には死亡したとか重い後遺症が残った状態をイメージしますが、必ずしもそうではありません。
 副反応の報告事例として「失神」が多くみられますが、多感な女子中学生では、注射を打つことによる痛みに加え、敏感な子の場合は精神的な不安などから血管や神経が反応し、一時的に血圧が下がることがあります。また、失神はどんなワクチンでも起こり得ることで、10万人に1人くらいの割合で発生しています。子宮頸がんワクチン特有の副反応ではないし、その成分が原因でもありません。
―予防接種法改正で、子宮頸がんワクチンも定期接種化されましたが、時期尚早だという意見もあります。
今野:先ほども述べた通り、日本では約830万回接種されています。また、欧米先進国では定期接種化されて約5年が経過し、世界的にも億を超える回数が接種されています。ワクチンの承認や定期接種が取り消された国はなく、厚労省のコメントにもあるように、安全性に重大な懸念はありません。また、万が一にも健康被害が出た場合、定期接種化されたことで任意接種だった時に比べ、被害救済が手厚くなっています。
―ワクチン接種の有効性について。
今野:世界で初めて公費助成を導入したオーストラリアでは、ワクチンを接種して5年経過した若い女性の前がん状態の細胞は減少しており、有効性が証明されました。日本でも同じような結果が出るはずです。子宮頸がんはワクチン接種により7割が予防可能です。そして検診と組み合わせることで、より100%に近づけることができます。
 風疹が流行して、先天性風疹症候群(新生児の障がい)が発生し、予防のための風疹ワクチン接種の重要性が叫ばれています。どんなワクチンでもわずかなリスクで、多くの子どもや大人の病気を防いでくれます。正しい情報に基づいた冷静な対応が必要です。