参考写真 3月29日復興庁は、東日本大震災後に体調悪化などで死亡した、いわゆる震災関連死の原因調査結果を発表しました。
 震災発生から1年を過ぎた昨年3月11日から同9月末までの半年間で関連死と認定された40人のうち、福島県内で亡くなった35人を対象に分析したもので、原発事故が避難者の“その後の生活”に重くのしかかっていることをあらためて浮き彫りにする結果になりました。
 調査は、死亡に至る経緯などを市町村や医療関係者から聞き取り、専門家の意見などを交えて分析しています。
 それによると、35人はいずれも避難指示区域からの避難者で、8割が70歳以上でした。自殺者も1人いました。
 また、死亡原因を複数選択で探ったところ、「避難生活に伴う肉体・精神的疲労」が25人と最も多く、次いで「避難所などへの移動中の肉体・精神的疲労」が13人、「既往症の悪化」が6人と続いています。
 専門家らは「避難生活が長期化する中、将来の展望を見いだせず、ストレスを募らせていったことが分かる」などとして、原発事故という人災がもたらした複雑で、深刻な福島県の被害の構造を示唆しています。
 実際、死亡者の中には、避難所や病院などへの移動を16回も繰り返した人もいました。35人の平均回数で見ても、実に7回にも上ります。事故直後から誤情報を垂れ流し、避難先の移動を繰り返させた民主党政権の責任があらためて浮き彫りになった格好です。
 忘れてならないのは、関連死は現在進行中の課題であるという点です。調査に加わった医療関係者も「避難生活が2年を超え、関連死予備軍は以前より増えているのでは」と指摘しています。
 震災から2年を過ぎた今も、多くの被災者が死と隣り合わせ状態にあることを深く認識し合いたいと思います。
 その意味で、復興庁が調査結果の公表に合わせて、仮設住宅の戸別訪問拡充などを盛り込んだ関連死防止策を新たにまとめたのは評価できます。「(仮設入居者ら)一人一人を徹底的に見守っていく」との根本復興相の発言も的を得ています。
 問題はスピード感と実効性の確保です。発災以来、被災の最前線で見回り活動などを続けてきたボランティアや地元自治体は既に、人的にも資金的にも限界に来ています。
 国が前面に出て、関連死防止に万全を期す時が来ていることを、今一度強調しておきたいと思います。
参考:福島県における震災関連死防止のための検討報告(復興庁)
福島県における震災関連死防止のための検討報告:医療関係者、公衆衛生関係者からヒアリングを実施した結果
  • 心のケアをする場合、「心のケアです、相談に来て下さい」と言って支援に入ると、周囲の目が気になるので相談に来ないから、そういう手法は効果的でない。作業療法的に、「体操しましょう」とか、「歌いましょう」とか、「芸能人が来たから楽しみましょう」という手法でアプローチをして、ストレスを減らして、全体としての健康度を上げる取組をする必要がある。支援方法としては、避難者の力が出てくるような手法がいい。

  • 岩手県や宮城県と比べて福島県で極端に違うのは、慣れない避難生活の長期化を基盤として、「生きているうちに今の避難先から出られないかもしれない」という不安や、生きがいも、希望も、生きる意欲も持てないというメンタル面の影響が大変大きいと考えられる点である。心のケアの充実は抜本策ではない。除染や生活環境の整備などを見える形で推進し、復興・再生を進めるに当たり、夢や希望といったメッセージを発信するという視点を持つことが重要である。そういう視点を持たないと、医療体制や仮設住宅を良くするだけでは、心は軽くならない。

  • 避難している高齢者のほとんどが震災後の生活によるストレスを大なり小なり抱えており、そのことを、保健医療福祉関係者のみならず、常に意識して対応することが必須であると考えられる。