早ければ、参院選から投票可能に
130425kouken 自民、公明の連立与党は4月25日までに、成年後見制度で後見人が付いた知的障害者や認知症の高齢者などに選挙権を与えないとする公職選挙法の規定を削除して、選挙権を付与する方針を固めました。自公両党は野党にも協議を呼びかけ、今国会中に公選法改正案を提出することになりました。早ければ、この夏の参議院選挙から被後見人であっても投票ができるようになります。
 被後見人が選挙権を剥奪されるという規定をめぐっては、東京地裁が3月、憲法違反とする判決を下していました。公明党は当初から早期の法改正に積極的で、高裁への控訴も断念するよう安倍首相に申入れしていました。安倍内閣は、制度見直しまでの間に違憲判決が確定してしまうと、選挙事務に混乱が起こるとして控訴。裁判と並行して、両党が見直しに向けた協議を行なっていました。
 当初、自民党内では施設職員や付添人など第三者が特定の候補者に投票するよう誘導する不正投票などを懸念されるとの声が上がっていました。25日、自民党は党本部でこの問題に関する合同会議を開き、制度見直しについて協議を行いました。不正対策を講じることを条件に、一律付与を求める意見が大勢を占め、自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長は、記者団に「野党にも協議を呼びかける。不正が行われないよう環境整備したい」と語りました。
 公職選挙法11条は、後見人が付いた人に「選挙権及び被選挙権を有しない」と定めています。与党の改正案では、この規定を削除することにしています。知的障害や認知症などで後見人が付いている人は、昨年末時点で約13万6千人となっています。
経過と公明党の対応
 成年後見人が付いた人は選挙権を失う問題で、東京地裁は3月14日、被後見人の名児耶匠さんが選挙権を求めた訴訟で「規定は社会的身分による選挙権の差別を禁じた憲法に違反する」として、公選法の規定を違憲とする判決を言い渡しています。
 3月19日には、名児耶さんらが公明党の北側一雄副代表らに対し、公選法の早期見直しや、国の控訴断念を要請しました。
 これを受け、北側副代表らは3月26日、政府に控訴を断念するよう直接要請。これに対し政府は、判決が確定すれば自治体の選挙事務が混乱するなどとして控訴しましたが、公明党は「選挙権は、国民主権と議会制民主主義の根幹をなす、最も重要な国民の権利」として、速やかな選挙権回復に全力を挙げています。
 4月2日には、党の成年被後見人の選挙権を回復する法改正プロジェクトチーム(座長=北側副代表)が初会合を実施しました。北側座長は、夏の参院選に間に合うよう、5月中の法改正をめざす方針を表明しています。公明党は自民党に対しても、法改正のための協議を呼び掛けています。
 成年後見制度に関して公明党は、被後見人の権利制限の見直しなどを盛り込んだ「成年後見制度利用促進法案」の要綱骨子を昨年7月に発表しています。
 また、日本の被後見人に当たる国民の選挙権を回復する取り組みは、国際的な潮流にもなっています。英国では、2006年に、精神状態を理由に投票権を制限するコモン・ロー(慣習法、判例法)上の原則を廃止。オーストリアでは、1987年に憲法裁判所が違憲と判断し、被後見人に当たる国民の選挙権剥奪規定を削除しています。
 このほか、米国の各州やドイツ、フランスなどでも法改正が行われてきました。
北側一雄PT座長のFacebookより
 知的障がいのある女性が国を相手取り、選挙権があることの確認を求めた訴訟で、東京地裁は、成年後見人が付くと被後見人は選挙権を失うとした公職選挙法の規定を「違憲」と判断しました。
 (3月)19日には、公明党の会合で原告の名児耶(なごや)匠さんとご両親が判決までの経緯を説明。最後に、81歳になられた父親の清吉さんは「3人そろって投票に行きたいが、あまり時間がない」と語っておられました。
 席上、私は、このような法律があったことについて、立法府(国会)に所属する議員としてお詫びしなければならない、と申し上げました。
 一日も早く、名児耶さん親子が一緒に投票に行けるよう、地裁判決に対し、国が控訴を断念するよう働きかけるとともに、法律の早期見直しに全力で取り組んでまいります。