防災会議などの委員の3割を女性に
交付金創設し災害対策の充実を

130502hinansyo 公明党女性防災会議(議長:松あきら参議院議員)は4月25日、安倍晋三首相宛ての「女性の視点を生かした災害対策についての第2次提言」を菅義偉官房長官に手渡し、実現を強く求めました。
 今回の提言は、2011年11月、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県を除く全国658の自治体で公明党女性議員が実施した「女性の視点からの防災行政総点検」を基に行った第1次提言に続くものです。
 第2次提言のポイントの一つは、中央防災会議など国の災害対策に関する会議の構成員の3割を女性委員にするとともに、地方防災会議の女性委員の登用状況を公表するよう求めたことです。
 東日本大震災では、避難所の運営が男性中心になり、女性が授乳や着替えをする空間が確保されなかった。女性にとっては、大きなストレスになりました。防災・復興計画の意思決定の場に女性が参画して、きめ細かな視点で発言、検討してもらわなければ同じような過ちを犯してしまいます。
 二つ目は、災害対策基本法改正案の早期成立を求めたことです。国会に提出されている改正案は、自力では避難が難しい高齢者や障がい者、妊婦など災害時要援護者の名簿作成を市区町村に義務づけるなど、公明党の主張が随所に盛り込まれています。
 要援護者名簿については、個人情報保護の問題がネックとなり、作成している市区町村は6割程度にとどまっているのが現状。改正案は、災害時には要援護者の同意がなくても必要な個人情報を提供できるとしており、成立すれば名簿作成が大きく進むと期待されています。
 三つ目は、全ての自治体が確実に災害時の要援護者体制を構築できるよう、交付金の創設を提案したことです。
 政府の調査では避難訓練を全く実施していない自治体は約4割に上ります。要援護者に参加してもらい日常的な避難訓練に取り組まないと、車いすなど避難に欠かせない用具がどの程度必要か掌握できるのか疑問です。保管場所も決めなければなりません。そのための財政援助を政府が責任を持って進める必要があります。
 提言ではほかに、子どもたちが自分の身を守る力を養うため、学校での防災教育を教科化することや、消防車がたどり着けない被災現場で消火活動が期待される消防バイクの普及・拡大などが盛り込まれました。
 災害は平時からの万全な備えが重要です。政府はスピード感を持って対策を実施しなければなりません。

「女性の視点を生かした災害対策についての第2次提言」公明党女性防災会議
  1. 中央防災会議等国における災害対策関連の会議体の構成員の3割は女性委員を登用すること。また、地方自治体における地方防災会議への女性委員登用を積極的に推進するため、都道府県・政令市のみならず、すべての市区町村における登用状況を把握し、公表すること。

  2. 男女共同参画の視点からの取組指針の策定においては、都道府県・政令市のみならず一般市区町村の意見も反映し、全ての自治体において男女共同参画の視点からの災害対策が実施されるよう、周知徹底を図ること。

  3. 災害時要援護者名簿が全ての自治体で作成されるよう、速やかに災害対策基本法を改正すること。この名簿に基づき、災害時要援護者一人一人の支援計画・体制を各自治体で構築できるよう、きめ細やかな実効性のあるガイドラインを策定するとともに、「災害時要援護者支援交付金(仮称)」を創設し、全ての地方自治体で確実に災害時要援護者体制を構築できるよう、予算措置を講ずること。

  4. 災害時住民等の円滑かつ安全な避難を確保するため、避難所となる施設又場所に最低限必要な基準(ハード、ソフト両面を含む)を法定化するとともに、基準を満たす施設を地方自治体が整備するための財政措置を講じること。なお、基準策定にあたっては、高齢者、障がい者、妊産婦や難病患者等災害時要援護者に配慮し、各種関係団体等から広く意見を聴取し、基準に最大限反映すること。

  5. 東日本大震災の際、被災した子どもや子育て家庭は非常に多かったにもかかわらず、その実態の把握が遅れ、必要な取組や支援の提供が十分になされなかった。現在、被災地における復興局では、子どもの意見を反映するための取組が始まっているが、今後もこうした取組を各復興局において強化・拡充させること。また、被災地以外でも、防災・復興等に子どもの意見も反映できる仕組みを構築するとともに、子どもたちが安心・安全の中で生活し、学び、成長していく力を養うため、防災教育を教科化すること。

  6. 災害時に避難所となり、子どもたちが長時間を過ごす学校施設の100%耐震化(非構造部材を含む)を平成27年度に確実に完了するとともに、学校施設の長寿命化を強力に推進すること。また、災害備蓄倉庫や自家発電設置等学校施設の防災機能強化を加速化するため、地方自治体の要望に十分応えられる予算を確保すること。

  7. 文部科学省の「学校安全の推進に関する計画に関わる取組状況調査」から、学校施設が避難所となった場合の対応等について、自治体防災担当部局、学校、地域住民等との間にあらかじめ連携する体制が不十分である実態が明らかになった(平成23年度国公私含め50.1%、公立のみ68.0%)。この実態を早急に分析・検証し、学校施設が避難所となった場合の対応をあらかじめ策定しなければならないものとすること。また、避難所でなくとも被災時に児童生徒等が学校に待機することを想定した対応をあらかじめ定めることが必要である。避難所に指定されていない学校施設における備蓄や対応等のあり方についても検討し、あらかじめ策定しておくことを同様に推進すること。

  8. 災害時に発生する膨大な自治体業務を簡素化・効率化し、きめ細やかな被災者支援を実現するため、全ての自治体において、平常時から被災者一人一人の状況を把握するための被災者台帳構築システムが導入できるよう、災害対策基本法を改正すること。また、各自治体の被災者台帳システム導入に当たっては、既に多くの自治体で導入され、東日本大震災の際にも義援金や罹災証明の迅速な発給を可能とした実績を持つ、兵庫県西宮市が開発した「被災者支援システム」等有効なシステムを広く普及させ、開発・導入・ランニングにかかるコストを最小限に抑えること。

  9. 東京都品川区等先駆的に事業継続計画(BCP)を策定している自治体の取組を、好事例として全国の自治体に普及・啓発し、計画の策定並びにPDCAサイクルに基づく業務継続力の向上を促すこと。また、BCPを促進する上で、クラウド導入は極めて有効であることは実証済であり、国主導で自治体クラウド導入を強力に推進すること。

  10. 全国の木造家屋密集市街地(木密地域)の不燃化を迅速かつ着実に進めるために、木密地域対策に取り組む自治体を支援するための相談窓口を設置し、相談・アドバイス・専門家の派遣などの支援を実施すること。また、災害時に避難場所となる公園や避難路・防火帯となる街路樹のある道路などを適切に配置し、緑の防災ネットワークの形成を促進すること。

  11. 火災発生時に、消火栓につないで消火活動ができるスタンドパイプや水道に直接つなぐ簡易水道消火装置を自主防災組織等へも広く普及させ、あわせて上水道の排水栓も消火栓同様に消火水源として活用できるようにすることが有効である。排水栓の活用を先行して行っている東京都では、東京消防庁と水道局との間で協定を締結しているが、こうした地方自治体の取組を促すとともに、スタンドパイプや簡易水道消火装置の設置等を助成すること。

  12. 災害時に交通渋滞や道路遮断などで消防車両が到着できない事態に備え、迅速に現場に到着して、情報収集・創作・救助・救急にあたることに資する消防バイクを、木密地域や高速道路入口周辺等に配備できるよう、購入費の助成や人材育成、運用体制の確保等を図ること。