総合的な対策実施へ法制化が必要
Report Card 10−先進国の子どもの貧困 自民、公明の与党両党は、「子どもの貧困対策推進法案」を議員立法としてまとめ、近く国会に提出する準備を進めています。
 日本では、非正規雇用で働く保護者の増加などで、貧困に苦しむ子どもたちが増えています。ユニセフ・イノチェンティ研究所が昨年5月に発行した『Report Card 10−先進国の子どもの貧困』において、日本の「子どもの相対的貧困率」は14.9%であり、日本国内の約2047万人の子どものうち、およそ305万人の子どもが貧困家庭で暮らしていることが明らかになりました。日本は先進35カ国中9番目に高い水準です。
 貧困による経済格差が子どもの人生に与える影響は、大きなものがあります。
 高校や大学への進学を希望しても、経済的な理由で断念、専門的な知識を習得できないため、大人になっても安定した仕事に就けず、容易に貧困から抜け出せない場合も少なくありません。小中学校時代に貧困が原因で、いじめに遭ったり、不登校に陥り、進学への夢さえ抱けない子もいます。
 親から子への“負の連鎖”は、貧困の固定化につながる。社会全体の支援で断ち切らなければなりません。
 法案では、「生まれ育った環境によって子どもの将来が左右されない社会の実現」を理念として掲げ、国や自治体などの責務を明確にしています。
 具体的には、政府に対策を推進するための「大綱」の策定を義務付け、関係閣僚で構成する対策会議の設置も盛り込んでいます。都道府県には大綱を踏まえ、対策の計画策定に努めることを求めています。
 現在、“縦割り行政”で行われている教育支援や、生活支援、保護者への就労支援などの施策を、総合的な対策として進めていくことは、貧困解決への大きな一歩となります。
 特に、大人1人で子どもを育てる「ひとり親世帯」の貧困率は半数を超しています。育児との両立などで、低収入で不安定な非正規雇用につかざるを得ないからです。ひとり親が働きやすい雇用の場の確保など、自立できる環境を整えていかなければなりません。
 また、教育の機会均等に向けた支援も重要になります。返済の必要がない「給付型」の奨学金の創設を国や自治体、大学などで検討する必要があります。学生ボランティアによる生活保護世帯の子どもへの学習支援も一部の地域で行われています。学習意欲の向上に成果が挙がっています。
 貧困の状況は、家庭によってさまざまですが、法案を早期に成立させ、きめ細かく支援しなければなりません。