連合審査で質問する井手よしひろ県議  6月12日、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が運営する加速器実験施設「J−PARC」の放射性物質漏洩事故をめぐって、茨城県議会防災環境商工委員会と総務企画委員会の連合審査会を開き、J−PARCセンターの池田裕二郎センター長ら参考人から説明を聴取、質疑応答を行いました。これは、井手よしひろ県議らが両委員会の委員長および県議会議長に要請して実現したものです。
 連合審査の冒頭、池田センター長は、「今回の事故についての調査、確認、判断の遅れにより、周辺地方公共団体および関係省庁等への通報連絡が大きく遅れ、関係者の皆さま、周辺住民の皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます」と陳謝、出席した関係者が深々と頭を下げました。
 その上で、事故の経過や連絡報告が遅れた状況を説明。「J−PARCとしては、在ってはならない事故であり、社会的かつ道義的責任を重く受け止めております。失われた信頼を取り戻すために、もう一度原点に立ち返り、関係各省庁の指導のもと、J−PARCセンター構成員一丸となって、事故の原因究明と再発防止に取り組み、一日も早い信頼回復に努めていく所存です」と語りました。
 その後の質疑応答で質問に立った井手県議は、「関係法令(放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律)に照らして、それに抵触しているという認識はあるかないか?」と質しました。特に、放射線障害防止法の33条2項には警察や海上保安庁への通報が義務づけられていますが、今までに公表されている資料には、その通報の有無や通報時刻の表示がないことを指摘しました。
 これに対して、池田センター長は言葉に窮し、関係者と相談した上で「現在、それをお答えできる状況にない」と回答するに止まりました。(なお、午後からの生活環境部の審議の中で、5月24日22時40分に各地方自治体への報告と同じタイミングで同放ファックスで報告されたとの回答がありました。)
 また井手県議は被曝した研究者や職員に対して、外部被曝の検査は行ったものの、内部被曝の検査を当日行わなかった理由や内部被曝の検査は被曝した恐れのあるひとかたの申し出でによって行われた事実を確認しました。もし、申し出がなかったら内部被曝の調査を行われなかったのではないかと指摘しました。
 さらに井手県議は「J−PARCの隣の施設で放射線量のモニタリングの数値が上昇しなければ事故が表沙汰にならなかったのではないか」と懸念を表明。池田センター長は「後から総合的に判断すれば事故の報告は必然。ウヤムヤにすることは考えていなかった」と、この質問に対しては明確に否定しました。
 質疑にまとめとして井手県議は、「こうした連合審査という形で参考人から説明を聴くことも、茨城県議会がいかに今回の事故を深刻に認識しているかの表れです。反面、J−PARCは今後の茨城や地域の発展の“宝物”といえる重要な施設。徹底した原因究明と再発防止を強く希望します」と述べました。
 他の委員からは、「報告書には『事象』とあるが、『事故』ではないのか。だから隠そうとしていると疑われる」と指摘や、事故があった建屋が放射性物質による汚染を想定していない第2種管理区域だったこととのへの指摘がありました。さらに、「研究成果を急ぐ結果、安全確保が二の次になってしまっていたのではないか」「高エネ研と原子力開発機構との間に、管理運営などの考え方の違いがあったのではないか」などの質問が寄せられました。
参考:参考人招致でJ−PARCセンターより配布された資料(PDF約2メガ以上あります)