東海第2原発の避難計画 茨城県では、地域防災計画(原子力災害対策計画編)で設定した東海第二発電所の原子力災害対策を重点的に実施すべき区域(PAZ及びUPZ)から住民が避難する際に要する時間について、36のケースに分けてシミュレーションを実施いたしました。
 それによると、東海第2原発より5キロ圏内(PAZ)の住民約8万人に対して、避難指示を行い、PAZの外側(5キロ〜30キロ圏内)の住民(UPZ内:90万人)の60%が自主避難をすると仮定した標準ケースでは、PAZ内住民が5キロ圏外へ避難するために必要な時間は15時間であるとしました。さらに、30キロ圏外への避難に要する時間は17時間でした。(避難する時間については、対象住民の90%が避難完了する時間)
 米国NRCによるガイドラインでは、避難に際し、移動に時間がかかる住民が避難者の10%を占めると考えられており、防護対策の決定にあたっては、大規模避難に比較的適した90%の避難の数値を用いることが適しているとしています(5キロ圏内には入院施設や入所施設が複数存在します)。
 全員が避難するためには、5キロ圏外への避難に22時間、30キロ圏外には22.5時間掛かるとしました。
 県では、このシミュレーション結果を踏まえ、関係機関と調整しながら、広域避難計画の検討を進めていくとしています。
 今回のシミューレーションは、以下のような条件で行われています。
  • 避難指示を行ってから避難を開始するまでの時間を1時間以内と設定
  • 通過交通は、交通規制の開始までの時間を勘案し、2時間継続するものと設定
  • 全員自家用車による避難とし、1台あたり2.5人が乗車と設定
  • 自主避難の割合は、国会事故調査委員会における調査結果の最大値である60%と設定
  • 平日の日中に避難指示があった場合と設定(UPZ内の日中人口は行政区域単位で集計したことから98万人とした)

 また、標準的なケース以外では、
  • 30キロ圏内(UPZ)一斉避難
    UPZ内住民に対し、一斉に避難指示を行った場合、UPZ内住民の90%がUPZから避難する時間は、32.5時間でした。
  • 常磐自動車道が通行止め
    標準ケースにおいて、常磐自動車道が通行止めとなり、避難道路として使用できない場合は、PAZ内住民の90%PAZの外へ避難する時 間は35.5時間であり、UPZの外へ避難する時間は39.5時間でした。
  • 悪天候
    標準ケースにおいて、悪天候により車両の走行速度が30%低下すると仮 定した場合、PAZ内住民の90%がPAZの外へ避難する時間は20.5時間であり、UPZの外へ避難する時間は21時間でした。

 東日本大震災と福島第1原発事故の状況を考えてみると、常磐道の交通止めや6号線などの幹線道路の通行不能が重なることが想定され、上記のシミューレーションも成立しない状況になります。大前提として、全員が自家用車で避難することが出来るのか、日本で最も多くの住民が周辺地域に住む東海第2発電所の特性を考えると、再稼動自体が難しいと結論せざるを得ません。
130726hyou