石巻(大川小)から宮古まで国道45号を北上
広がる復興の地域間格差
 今年3月、経済産業省東北経済産業局は「東日本大震災から 2年を経た東北経済 〜復興速度差が広がり、課題は多様化〜」とのレポートを公表しました。
 この中で、東北経済産業局は「総体として見れば、東北経済は、着実な回復を続けている」と総括しました。生産活動は、震災前の水準の6割台にまで一時は落ち込んだが、全国と同程度の水準にまで回復。 東北の製造業の中心である電子部品・デバイスも、全国的なサプライチェーンの寸断を招いた震災直後の状況から改善しました。雇用面では、求職者の減少と復旧・復興事業進展に伴う建設業での新規求人増等により、有効求人倍率は、全国平均よりも高い水準で推移しています。また、消費活動は大型小売店販売額が堅調で、総じて全国よりも高い伸び。住宅着工戸数も、全国より高い水準で推移しています。
 個別企業の状況は、事業再開にこぎつけた企業の中でも、7割の企業は震災前の売り上げ水準に戻っておらず、震災前の半分以下にとどまる企業も3割を占めています(グループ化補助金対象企業3,764社調査)。一方で、震災前より売上を伸ばしている企業も2割存在していることは特筆に値します。対象企業の業種別に売上を見ると、水産・食品加工業、旅館・ホテル業が厳しい経営状況です。一方、建設業では売上を伸ばしているとする企業が半数を占めています。水産・食品加工業や旅館・ホテル業では3割近くの企業が「売上が震災前の3割以下に減少」と回答しています。
 問題なのは、地域的な格差の拡大です。被災した市町村毎に、事業所数と従業員数をプロットしたのが上のグラフです。東北経済産業局、自らが「被災企業の復興に向けた進捗状況は地域格差が顕著に。復旧が捗らず、“事業所数”及び“従業者数”が半減以下のままの自治体も存在」していると指摘しています。
 大槌町、南三陸町、女川町、山田町は、事業所数が6割減以下、従業員数が5割減以下と復興が思うように進んでいない状況が数字の上からも明らかになっています。現場をみてみても、地域全体が津波の大きな被害を受けているために、市街地全体の嵩上げなどの大規模工事が必要な地域ばかりです。
南三陸町の防災庁舎
 南三陸町の防災対策庁舎は、鉄骨がむき出しとなった状態で、津波の脅威を雄弁に語っています。町職員ら42人が犠牲になり、保存か、解体撤去かで議論が分かれていいます。
 町は平成23年秋、この庁舎の撤去方針を一度表明しました。しかし、住民などから「震災の記憶を残すべきだ」などと保存を求める意見が相次ぎ、現在は“凍結状態”が続いています。

JR気仙沼線BRT工事
 JR東日本は、東日本大震災の影響で運休中の気仙沼線柳津〜気仙沼間55.3キロについて、仮復旧として運行しているバス高速輸送システム(BRT)の専用区間を9月5日に大幅に延長します。陸前戸倉〜志津川間内3.5キロと志津川〜清水浜間内3.8キロ、陸前港〜陸前小泉間内2.8キロの合計10.1キロで、気仙沼線の線路敷地を活用したBRT専用道の使用を開始します。専用道区間は全長21.7キロとなり、現在のほぼ2倍になります。井手よしひろ県議が視察したBRT陸前港駅は、専用道上に駅舎とトイレが整備されていました。一般道路と繋がる階段の整備が進められていました。

気仙沼市浜町の土地嵩上げ工事
 気仙沼市では、地盤沈下が広範囲に起きていることから、高潮や大雨時のみならず、日常の潮位変動においても冠水被害が発生しています。まちの復興のため、また、今後の津波、高潮等による冠水被害対策として、広範囲に土地の嵩上げが必要です。
 大型漁船が何隻も陸上に置き去りにされていた鹿折地区では、被災した工場や住宅の撤去もほぼ終わり、大規模な土地の嵩上げ工事が進んでいました。この水産加工施設の集積地は、鹿折地区の10.8haをT.P.+1.8メートルに整備する計画になっています。工事は25年中の完了を目指して進められています。