公会計制度改革:地域目線で「見える化」を
茨城県庁 国の借金(国債残高)が、ついに1000兆円の大台を突破しました。税収は1990年を境に減少する一方です。社会保障関係費を補う赤字国債(特例公債)発行額が増加。国家財政は、負債が資産を上回る債務超過の状態です。
 過疎化と人口減少が進む地方自治体への悪影響は、さらに深刻です。政府の成長戦略で本格的に景気を浮揚させ、税収を増やさなければなりません。同時に必要なのが、財政の実態を明らかにする「見える化」です。具体的には、自治体の会計方式を「単式簿記」から「複式簿記」へと移行する公会計制度改革が必要です。経済成長を実現して税収を確保しても、血税が適切に使われなければ意味がありません。さらに、住民のその実態がわかりやすく伝わらなくてはなりません。
 焦点は自治体での公会計制度改革が、どれだけ進むかです。東京都は、この制度改革に取り組み成功しました。公明党の後押しで、国や全国の自治体に先駆けて複式簿記・発生主義会計を採用。民間企業の方式に近く、収入や支出の増減の要因が記録できるものです。制度導入で、多摩ニュータウン事業の2272億円の累積欠損など総額1兆円もの「隠れ借金」が顕在化しました。多摩ニュータウン事業の遊休地活用などで、2007年度末には隠れ借金を解消し、税収減に備えた基金を1兆円にまで積み増すことができたのです。
 都の取り組みは全国に広がりつつあります。東京都町田市や大阪府でも導入されています。
 ただ、腰が重い自治体も少なくありません。公会計制度の重要性に対する認識不足から、橋や病院などの固定資産の台帳整備が不十分な自治体も目に付くのが実態です。
 なぜ、制度改革が進まないのか。それにはいくつかの理由があります。
 その一つは、従来方式から新方式への切り替えの手間です。しかし、財政運営の透明化は、スムーズな財政運営に不可欠な納税者の信頼感を生む。公会計の専門知識を持った人材を配置するなどの支援も必要です。
 更には、費用の問題です。公開会計制度を改めた方といって、借金が減るわけではありません。制度を改めるだけで、都道府県レベルでは数億円の費用がかかる言われています。
 また、新会計制度の統一も行われていないの現実です。東京都方式、総務省方式、各自治体の独自方式、こうした制度がバラバラでは、他の自治体と比較して、その自治体の問題を洗い出すことができなくなります。
 こうしたことを考えると、自治体任せの改革は絶望的です。国を上げての制度の統一、費用の支援、人材の要請・提供など、国が本気になって公会計制度の改革に取り組む必要があります。
 公会計制度は、税金が何にどの程度使われているかを明示でき、ムダな支出を見つけやすくなります。チェックが厳しくなれば、行政側のコスト意識を変えることも可能です。
 より重要な点は、公会計制度改革によって、財政運営に対する地域住民の信頼感を高められる点です。厳しい財政状況が続く中で、適切な予算配分を行うには住民の理解が不可欠なのです。魅力的な地域社会を創出するためにも、国の本気度を期待したいと思います。