6月20日、県北地域の日立市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、常陸大宮市、大子町の首長と議会議長が連名で、茨城新聞社に抗議文を手渡すという出来事がありました。
 その抗議文の内容をご紹介します。
6月15日の紙面、県内を代表する地方紙である茨城新聞社の1面を飾る顔ともいえるコラム「いばらき春秋」における表現は、茨城県及び県北ら市町の施策のみならず、東日本大震災からの復旧・復興にも懸命の努力をしている、38万人の県北地域の市民及び町民を愚弄するものであり、到底看過できない。ここに、報道機関としての適切な表現を逸脱したことに対し、厳重に抗議するとともに、然るべき対応を強く求める。

 ちなみに、抗議の対象となった「いばらき春秋」を引用します。
茨城新聞のコラム「いばらき春秋」
2013/6/15
県内の”南北格差”が拡大するばかりだ。「県南地域は茨城をけん引する機関車」と言われる。ならば、県北地域は機関車に引かれるのみの貨車といったところか
▼県北の今をイメージするのは簡単だ。人口減少、少子高齢化、若者の就職難、地域活力の喪失、将来に対する漠然とした不安、閉塞(へいそく)感…この国の問題を一手に抱え込んでいる
▼にぎわった商店街はシャッター通りと化し、地元に勤め先を見つけられない息子は老いた両親の元に戻れず、その結果、地域コミュニティーの維持もままならない。これが実態だ
▼県北振興へ向け、県が活性化検討会を立ち上げた。定住人口の確保や交流人口拡大による地域活性化などについて、6市町や関係団体などが頭を突き合わせ、知恵を絞る
▼県北の現状は小手先のてこ入れで活性化できるほど、甘くはない。じっくりと腰を据え、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論によって各市町の将来像とともに、地域のグランドデザインを描いてほしい
▼検討会では今後、住民アンケートや地区懇談会も実施して女性、若者の声も集めるという。その一人一人を動力源に地域を挙げて前進しようとするのでなければ、県北地域は機関車のお荷物に堕する
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との内容です。現状認識に間違いは無いかもしれません。しかし、これは、県北地域特有の課題ではありません。マスコミが、こういった現状をステレオタイプ化し、県民にすり込むことに対しては、違和感を感じますし、その意味で、県北の町村長、議長の怒りも共有できるところです。
 参考のために、県税事務所毎の人口一人当たりの個人県民税を見てみると、県北地域は3万1557円と、県南地域の3万6109円に対して幾分低くなっていますが、県央、鹿行、県西地区よりは多いという結果になっています。また、市町村内総生産を人口割りにしてみると、県北地域は386万円余りで、県南地域の314万円と比べると、茨城県に対しての貢献度は、むしろ県北地域の方が高いことがわかります。
 今年6月議会で自民党県議が、県北振興策を質問した折、企画部長は「県北地域の活性化方策に関する検討会」を立ち上げ、県北6市町や関係団体とともに知恵を絞り、東日本大震災からの復興や交流人口拡大などに向けた課題と対応策を協議し、来年度以降の施策に反映すると答弁しました。住民アンケートや地区別懇談会を実施し、課題や要望の抽出を進める」と答えています。この答弁の内容が、先の「いばらき春秋」にも紹介されています。
 しかし、このやり取りを聞いていて、私は、余りのふがいなさに怒りさえ感じました。本当に、この検討委員会を立ち上げことで、県北振興の具体策が生まれるのでしょうか?
 県北振興という大きな課題に、いまさら地元の市町村長も、議長関係者も、委員に入っていない、県も担当課レベルの検討会が、県北振興の決め手というのは、どうしても納得できないからです。
 この委員会の提言は、どれだけの実効性が担保されるのでしょうか?県や市町村には拘束力を持っているのでしょうか?そもそも予算の裏付けがあるのでしょうか?
 こうした検討会も県北活性化の一助にはなると思います。しかし、この課題は、知事の本気度が試されていると思います。本当に、県北地域を茨城発展の牽引力の一つに再生させるのであるならば、知事を先頭に、すべての首長が参画し、県の総合計画に準じる「県北活性化総合計画」まで見据えた、総合的な戦略の組み立てが必要であると思います。
 茨城新聞のコラムも、茨城県の対応も余りに陳腐で、評価に値しません。