9月15日、国内で唯一稼働していた大飯原発4号機が定期検査入りし、再び稼働原発ゼロの状態が続くことになりました。
大飯原発3、4号機を含め、現段階で12基の原子炉の再稼働申請が出されています。政府のエネルギー政策の基本は未だに明らかにされていませんが、国内の原発は、減少に向かっていることは否定できない事実です。
昨年6月の原子炉等規制法の改正で、運転開始から40年を経た原発は廃炉されることになりました。また、今年7月に施行された原子力規制委員会の新規制基準では、全ての原発にフィルター付きベントの設置などが義務付けられました。
フィルター付きベントとは、原発事故の際、格納容器の圧力が高まって壊れることを防ぐために、放射性物質を除去するフィルターを通して内部の蒸気を排出して圧力を下げ、爆発を防ぐ装置です。日本の原子炉には加圧水型(24基)と、沸騰水型(26基)があり、格納容器が大型で圧力が高まりにくい加圧水型は、フィルター付きベントの設置に猶予期間が設けられています。このため、現在再稼働の申請が出されている12基はいずれもこの加圧水型になります。
一方で、小型の沸騰水型には猶予期間はなく、フィルター付きベントの設置に相応の時間がかかることもあり、この型の原子炉の再稼働申請は現段階では、一つも出されていません。
ただし、加圧水型も、年数が古いものを中心に残りの12基で再稼働の申請が出されていないことは見逃せません。原子力規制委の新基準は大変厳しい内容で、基準を満たすには多額の設備投資が求められます。このため、40年での運転制限にすぐにかかるような原子炉の再稼働は現実的ではありません。
専門家の間でも再稼働できるのは、多くとも30基程度との見方もあり、古い原発の再稼働は現実的でなくなっています。
大飯原発3、4号機を含め、現段階で12基の原子炉の再稼働申請が出されています。政府のエネルギー政策の基本は未だに明らかにされていませんが、国内の原発は、減少に向かっていることは否定できない事実です。
昨年6月の原子炉等規制法の改正で、運転開始から40年を経た原発は廃炉されることになりました。また、今年7月に施行された原子力規制委員会の新規制基準では、全ての原発にフィルター付きベントの設置などが義務付けられました。
フィルター付きベントとは、原発事故の際、格納容器の圧力が高まって壊れることを防ぐために、放射性物質を除去するフィルターを通して内部の蒸気を排出して圧力を下げ、爆発を防ぐ装置です。日本の原子炉には加圧水型(24基)と、沸騰水型(26基)があり、格納容器が大型で圧力が高まりにくい加圧水型は、フィルター付きベントの設置に猶予期間が設けられています。このため、現在再稼働の申請が出されている12基はいずれもこの加圧水型になります。
一方で、小型の沸騰水型には猶予期間はなく、フィルター付きベントの設置に相応の時間がかかることもあり、この型の原子炉の再稼働申請は現段階では、一つも出されていません。
ただし、加圧水型も、年数が古いものを中心に残りの12基で再稼働の申請が出されていないことは見逃せません。原子力規制委の新基準は大変厳しい内容で、基準を満たすには多額の設備投資が求められます。このため、40年での運転制限にすぐにかかるような原子炉の再稼働は現実的ではありません。
専門家の間でも再稼働できるのは、多くとも30基程度との見方もあり、古い原発の再稼働は現実的でなくなっています。
さらに、設備的に再稼働の基準を満たしたとしても、次に2つのステップが待ち受けています。
新たに政府が定めた原子力事故の新たな防災指針で、原発から半径5キロ圏を目安に設定される区域PAZに住む住民は、炉心溶融などの重大な原発事故が起きた場合、放射性物質の大量放出前に圏内の住民を優先的に避難させなければなりません。さらに、半径30キロの緊急防護措置区域(UPZ)内では、放射線量の実測値が基準値を超えた地区の住民から、順次避難を開始することになっています。このPAZ、UPZ県内の住民の安全に避難させる体制が出来ていない、原発の再稼働は認められません。
最後のステップとして、設備の整備、避難体制の確保が完了した後、地元住民の再稼働に向けての同意が必要です。現在、原子力安全協定が結ばれている市町村だけではなく、当然、30キロ圏内(UPZ)の市町村長・議会ならびに都道府県知事・議会の同意が不可欠であると考えます。
以上のことを確認した上で、地元・日本原子力発電(日本原電)東海第2発電所の問題を再度確認してみたいと思います。
東海第2原発は、今年の11月で稼働後35年になります。仮にフィルター付きベント設備を整備すると数年の時間と、百億円を超す投資が必要になるといわれています。
日本原電が東海第2原発に設置を検討しているフィルター付きベント装置の概要は、現在の排気筒に沿わせる形で配管を敷設し、地上約140メートルから事故で生じる蒸気などを放出する設計となっています。排気筒と同じ高さにすることで、被ばくを低減する狙いです。
日本原電は、福島第1原発事故以降、東海第2原発の安全対策として、原子炉建屋の使用済み燃料などの搬出入口への水密扉(高さ約6.5メートル、横約5.5メートル、厚さ約80センチ)を設置するなど、電源確保、注水冷却機能の確保、浸水防止対策を実施してきました。日本原電によると、敦賀原発1、2号機の安全対策も含め、これまでの安全対策費は約500億円に達しています。15メートル級の津波にも堪える防潮堤(標高17メートル)の整備も原発の安全性を確保するためには必要で、フィルター付きベント装置の設置と共に、その費用は莫大なものとなります。
日本原電はこうした改修工事の工期について「複数年度が必要」とし、設置完了までに長期間必要との見方を示しています。設備改修に例えば3年、原子力規制委員会の審査に1年掛かるとすると、多額の投資をした東海第2原発はわずか1年しか稼動できないことになってしまいます。
次に、東海第二原発のPAZ、UPZから住民を安全に避難させる体制づくりの問題です。県は、この7月に東海第2原発事故を想定した住民避難のシミュレーション結果を公表しました。標準的な想定では、原発から半径5キロのPAZ区域の住民約8万人が、自家用車で避難すると渋滞が発生し、9割の住民がPAZ圏外へ避難するまでに15時間もかかるとしました。当然、地震災害などと同時に原発事故は発生することが想定され、常磐道が通行止めになると、1日半34.5時間も要するという結果になっています。
参考:「東海第2原発事故を想定した住民避難のシミュレーション」
昨年3月議会の代表質問で、私は、原発周辺に居住する人口が日本で最も多い東海第2原発では、避難体制を構築することは困難ではないかと指摘しました。これに対して、橋本知事も「東海第二発電所のUPZにつきましては、人口が約94万人、該当する市町村の全人口では106万人と極めて人口が多いことから、県内にあるバスを総動員しても、1回に24万人しか搬送できないため、一斉に106万人を避難させるのは不可能であると考えております」と、答弁しています。
また、PAZ区域には、入院施設のベッド数は1114床、介護施設の入所者が372名います。こうした方々をどのように避難させるのか、国は全く指針を示しておらず、受け入れ先や移動方法、その人員の確保など、現実的には避難態勢を構築することは不可能であると言わざるを得ません。
3番目に自治体の同意の問題です。原発の再稼働に向けた「地元の同意」は、法律上明記されたものではありません。極論を言えば、同意なくして再稼働も可能が、安倍政権は再稼働の前提として「地元の同意」は必要との認識を示しています。
しかし、地元の範囲すら明確ではなく、同意の判断基準も曖昧なのも事実です。
電力会社と立地自治体は、情報公開や通報連絡などを定めた原子力安全協定を結んでいます。協定は事故時の通報義務や自治体による立ち入り調査、施設増設の際の事前了解などを盛り込んでいます。法的拘束力はありませんが、電力会社は安全協定を尊重する必要があることにはまちがいありません。
東海第2原発の安全協定の10条4項では「運転等を再開しようとするときは、茨城県ならびに東海村と協議する」との項目があります。これは、県と東海村の了解がなければ再稼働できないと読むのが自然です。また、第5条には、「原子力施設及びこれと密接な関連を有する施設を新設し、増設し、変更し、又はこれらに係る用地の取得をしようとするときは、事前に茨城県及び東海村の了解を得るものとする」との条文があります。「軽微なものについてはこの限りでない」との但し書きもありますが、「フィルター付きベント装置の設置も、密接な変更にあたるのではないか」との疑義も寄せられています。
福島第1原発事故後、地元の範囲は拡大傾向にあります。関西電力大飯原発が昨年6月に再稼働を決定した際には、隣接する京都府や滋賀県にも「理解」を得る必要がありました。
東海第2原発の場合、日本原電は、茨城県と所在する東海村、隣接する日立市、常陸太田市、ひたちなか市、那珂市と原子力安全協定を結んでいます。UPZ内の水戸市などからは東海村と同じような原子力安全協定を結ぶよう要請があります。
地元の同意が何を指すのかも、実は曖昧です。首長の了解だけでよいのか、議会の関わりはどのようにするのか、地元説明会を開く必要があるのか、住民投票まで踏み込むのか、判断基準がないのが現状です。
私は、原子力安全協定をUPZ区域内のすべての市町村に拡大し、市町村議会、県議会の承認の上での首長の承認が必要だと、明確に定めるべきだと提案します。
新たに政府が定めた原子力事故の新たな防災指針で、原発から半径5キロ圏を目安に設定される区域PAZに住む住民は、炉心溶融などの重大な原発事故が起きた場合、放射性物質の大量放出前に圏内の住民を優先的に避難させなければなりません。さらに、半径30キロの緊急防護措置区域(UPZ)内では、放射線量の実測値が基準値を超えた地区の住民から、順次避難を開始することになっています。このPAZ、UPZ県内の住民の安全に避難させる体制が出来ていない、原発の再稼働は認められません。
最後のステップとして、設備の整備、避難体制の確保が完了した後、地元住民の再稼働に向けての同意が必要です。現在、原子力安全協定が結ばれている市町村だけではなく、当然、30キロ圏内(UPZ)の市町村長・議会ならびに都道府県知事・議会の同意が不可欠であると考えます。
以上のことを確認した上で、地元・日本原子力発電(日本原電)東海第2発電所の問題を再度確認してみたいと思います。
東海第2原発は、今年の11月で稼働後35年になります。仮にフィルター付きベント設備を整備すると数年の時間と、百億円を超す投資が必要になるといわれています。
日本原電が東海第2原発に設置を検討しているフィルター付きベント装置の概要は、現在の排気筒に沿わせる形で配管を敷設し、地上約140メートルから事故で生じる蒸気などを放出する設計となっています。排気筒と同じ高さにすることで、被ばくを低減する狙いです。
日本原電は、福島第1原発事故以降、東海第2原発の安全対策として、原子炉建屋の使用済み燃料などの搬出入口への水密扉(高さ約6.5メートル、横約5.5メートル、厚さ約80センチ)を設置するなど、電源確保、注水冷却機能の確保、浸水防止対策を実施してきました。日本原電によると、敦賀原発1、2号機の安全対策も含め、これまでの安全対策費は約500億円に達しています。15メートル級の津波にも堪える防潮堤(標高17メートル)の整備も原発の安全性を確保するためには必要で、フィルター付きベント装置の設置と共に、その費用は莫大なものとなります。
日本原電はこうした改修工事の工期について「複数年度が必要」とし、設置完了までに長期間必要との見方を示しています。設備改修に例えば3年、原子力規制委員会の審査に1年掛かるとすると、多額の投資をした東海第2原発はわずか1年しか稼動できないことになってしまいます。
次に、東海第二原発のPAZ、UPZから住民を安全に避難させる体制づくりの問題です。県は、この7月に東海第2原発事故を想定した住民避難のシミュレーション結果を公表しました。標準的な想定では、原発から半径5キロのPAZ区域の住民約8万人が、自家用車で避難すると渋滞が発生し、9割の住民がPAZ圏外へ避難するまでに15時間もかかるとしました。当然、地震災害などと同時に原発事故は発生することが想定され、常磐道が通行止めになると、1日半34.5時間も要するという結果になっています。
参考:「東海第2原発事故を想定した住民避難のシミュレーション」
昨年3月議会の代表質問で、私は、原発周辺に居住する人口が日本で最も多い東海第2原発では、避難体制を構築することは困難ではないかと指摘しました。これに対して、橋本知事も「東海第二発電所のUPZにつきましては、人口が約94万人、該当する市町村の全人口では106万人と極めて人口が多いことから、県内にあるバスを総動員しても、1回に24万人しか搬送できないため、一斉に106万人を避難させるのは不可能であると考えております」と、答弁しています。
また、PAZ区域には、入院施設のベッド数は1114床、介護施設の入所者が372名います。こうした方々をどのように避難させるのか、国は全く指針を示しておらず、受け入れ先や移動方法、その人員の確保など、現実的には避難態勢を構築することは不可能であると言わざるを得ません。
3番目に自治体の同意の問題です。原発の再稼働に向けた「地元の同意」は、法律上明記されたものではありません。極論を言えば、同意なくして再稼働も可能が、安倍政権は再稼働の前提として「地元の同意」は必要との認識を示しています。
しかし、地元の範囲すら明確ではなく、同意の判断基準も曖昧なのも事実です。
電力会社と立地自治体は、情報公開や通報連絡などを定めた原子力安全協定を結んでいます。協定は事故時の通報義務や自治体による立ち入り調査、施設増設の際の事前了解などを盛り込んでいます。法的拘束力はありませんが、電力会社は安全協定を尊重する必要があることにはまちがいありません。
東海第2原発の安全協定の10条4項では「運転等を再開しようとするときは、茨城県ならびに東海村と協議する」との項目があります。これは、県と東海村の了解がなければ再稼働できないと読むのが自然です。また、第5条には、「原子力施設及びこれと密接な関連を有する施設を新設し、増設し、変更し、又はこれらに係る用地の取得をしようとするときは、事前に茨城県及び東海村の了解を得るものとする」との条文があります。「軽微なものについてはこの限りでない」との但し書きもありますが、「フィルター付きベント装置の設置も、密接な変更にあたるのではないか」との疑義も寄せられています。
福島第1原発事故後、地元の範囲は拡大傾向にあります。関西電力大飯原発が昨年6月に再稼働を決定した際には、隣接する京都府や滋賀県にも「理解」を得る必要がありました。
東海第2原発の場合、日本原電は、茨城県と所在する東海村、隣接する日立市、常陸太田市、ひたちなか市、那珂市と原子力安全協定を結んでいます。UPZ内の水戸市などからは東海村と同じような原子力安全協定を結ぶよう要請があります。
地元の同意が何を指すのかも、実は曖昧です。首長の了解だけでよいのか、議会の関わりはどのようにするのか、地元説明会を開く必要があるのか、住民投票まで踏み込むのか、判断基準がないのが現状です。
私は、原子力安全協定をUPZ区域内のすべての市町村に拡大し、市町村議会、県議会の承認の上での首長の承認が必要だと、明確に定めるべきだと提案します。