国際頭痛学会が今年7月に発表した世界的な頭痛の診断基準である「国際頭痛分類第3版」で、脳脊髄液減少症の診断基準が改定され、適正な診断が広がり救済される患者が増えると期待されています。
 脳脊髄液減少症は交通事故やスポーツなどによる首や腰への強い衝撃で髄液が漏れ、頭痛や倦怠感などさまざまな症状を引き起こす病気です。国際頭痛分類は1998年に初版、2004年に第2版が発表された後、これまでに数回の修正が行われ、今回で3回目の大改定となります。
 第2版では脳脊髄液減少症の診断条件について、(1)頭を上げていると15分以内に頭痛が起こる(2)脳脊髄液減少症の治療に有効とされるブラッドパッチ(硬膜外自家血注入)療法を行って72時間以内に頭痛が消える―などとしていた。このため、「診断基準が厳しく、脳脊髄液減少症と考えられるほとんどの患者が対象に当てはまらない」と現場の医師や関係者らから指摘されていました。
 一方、第3版では、頭痛が悪化するまでにかかる時間や治療後に頭痛が消えるまでの期間を条件にせず、ブラッドパッチ療法も複数回必要な場合があると改めました。
 今回の大改定について、仮認定NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会の中井宏代表理事は「交通事故の補償をめぐり争われてきた裁判にも大きな影響を与えるだろう。対象患者の増大につながり、救済される患者が増える」と語っています。
 公明党は、脳脊髄液減少症で苦しむ患者や家族の声を真正面から受け止め、治療法の確立やブラッドパッチ療法への保険適用など地方議員と国会議員が一体となって推進してきました。国会においては、2006年3月の参院予算委員会で治療法などの研究推進を要請し、厚生労働省の研究事業がスタートした。その後も、ブラッドパッチ療法の保険適用などの要望を重ねてきました。
先進医療会議で“ブラッドパッチ療法”の効果を評価、保険適用の大きな節目に
 また中井氏は、今年度に開催が予定されている先進医療会議でブラッドパッチ療法の効果が評価されることに言及。この会議を通じてブラッドパッチ療法の保険適用が問われることから、これまで国が行ってきた研究結果などと併せると、今回の改定は「ブラッドパッチ療法の保険適用に追い風となる」と期待を寄せています。
 先進医療の評価会議は、今年12月5日または来年1月16日に開催される見込みです。この会議で、ブラッドパッチ療法の効果が評価されます。その、評価方法は、「ブラッドパッチ治療は、効果が有り、無い、不明」の3点のみで評価されます。安全性、評価など総合判断し、「保険適用に適する」と判断されると、平成26年3月の診療報酬会議にかけられ、4月から保険適用となります。
 昨年5月、脳脊髄液減少症の治療方であるブラッドパッチ療法は、先進医療として承認されました。現在、31箇所の先進医療の認定病院で治療が行われています。
 患者・家族支援協会が先進医療認定病院6施設に独自のアンケート調査を行った結果、234件が“脳脊髄液漏出症”の国の研究班の診断基準に合致し、ブラッドパッチ治療が行われました。その内「効果有り」が215例、「効果無し」11例、「不明」8例となり、たいへん治療効果があることがわかりました。次回の先進医療評価会議での結論如何で、どこの病院でも脳脊髄液減少症のブラッドパッチ療法が保険診療で受けられるようになります。このタイミングに脳脊髄液減少症患者支援の会と子供支援チームは「ブラッドパッチ健康保険適用要望署名」を広く行っています。
参考:仮認定NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会のHP