高額療養費の3つの見直し案
支払い能力に応じた区分に見直せ
 10月7日、厚生労働省(第68回社会保障審議会医療保険部会)は、医療機関などに支払う1カ月の窓口負担を一定額以内に抑える「高額療養費制度」の見直し案を提示しました。
 年内に結論を出し、平成27年1月1日からの実施をめざす方針です。
 高額療養費制度は、支払った医療費が高額になった場合、患者の加入する医療保険に申請すれば、自己負担の限度額を超えた部分が払い戻される仕組みです。患者の経済的な負担が軽減される“命を守るセフティーネット”です。
 現在、この限度額は70歳以上かどうかと、所得に応じて区分されています。
 例えば、70歳未満で会社員の夫婦と子ども1人の3人世帯の場合、(1)上位所得者(年収約770万円以上)が月15万円、(2)一般所得者(770万円未満〜210万円以上)が月8万100円、(3)住民税非課税世帯(210万円未満)が月3万5400円、の3つに区分されています。
 公明党は、この所得区分は細分化するべきと主張しています。例えば、年収が300万円と700万円で同じ限度額となると、300万円の人の負担感は重くなってしまうからだです。
 8月に取りまとめられた政府の社会保障制度改革国民会議の報告書でも、高額療養費について「能力に応じた負担となるよう限度額を見直すことが必要」と提言されています。
 厚労省の見直し案では、所得区分層を細分化する3種類の案が提示されました。いずれの案も上位所得者の限度額を引き上げ、一般所得者は所得区分を小刻みにしています。非課税世帯の限度額は変わりません。
 例えば案3の場合、一般所得者のうち年収370万円未満は限度額を5万7600円に引き下げます。一方、上位所得者のうち年収1160万円以上は25万2600円に、1160万円未満は16万7400円にそれぞれ引き上げます。この案では70歳以上は変更しません。
 今後、この3との案の詳細な検討が進められます。公明党は低所得者の負担軽減を強く求めています。この方向性に沿った結論を期待したいと思います。
 また、高額療養費制度では、複数の医療機関に支払った分や家族の分を合算し、この合算額が限度額を超えれば制度を利用できる。しかし、70歳未満の場合は、1回の自己負担が2万1000円未満の診療分を含めることができない課題も残されています。
 安心して医療を受けられる体制を強化していくために、さまざまな見直しを進めていかなければなりません。