余りにも誠意がない東京電力の対応に県内事業者が反発
東京電力からの通知文 東日本大震災、それによって引き起こされた福島第1原発事故から2年7カ月余りが経過しました。しかし、県内の中小零細業者の売上は、原発事故の風評被害や汚染水問題などで、事故以前の状況に回復していない現状があります。こうした風評被害に苦しむ業者に対し、東京電力が損害賠償の打ち切りを告げる文書を一方的に送りつけ、支払いが停止されていることが判りました。
 業者に送りつけられた文書には、「事故から相当期間が経過した現時点では、売上げ減少と原発事故との相当因果関係を認めがたいので賠償を打ち切る」と、一方的な内容が記されています。
 当然、事業主の努力などにより売上げが事故発生前の水準に戻っている場合や、明らかに事故との因果関係が認められない場合などには、賠償を打ち切ることに妥当性もあると思われます。しかし、それであっても、損害を与えた当事者である東電から一方的に賠償を打ち切る事があって良いのかという疑問が残ります。原発事故による損害は、事故の原因者である東京電力が、そのすべての責任を負うべきです。被害者である事業者に対する対応としては、怒りさえも感じます。
 井手よしひろ県議が事情を聞いた食品製造業者は「5月までの賠償金が6月末に振り込まれて以来、入金が滞っています。6月から8月までの請求書を起こったところ、9月中旬に支払い得ない旨の通知が届きました。こちらから何度も電話をしていますが、東電の担当者から説明があったことは一度もありません。売上は事故前に比べて、2011年3月から5月の期間で68%減、2012年の同時期53%減、今年が43%減となっています。風評被害は未だに厳然として残っています。また、賠償金の請求額は、当然売上が持ち直していることを反映させて、毎回減額しています。それを考えると、いきなりゼロは全く納得できません」と、東電の対応に怒りを露わにしていました。

県議会予算特別委員会でも自民、公明が東電の責任を追及
 10月25日行われた県議会予算特別委員会では、自民党の舘静馬議員と公明党の八島功男議員がこの問題を取り上げました。舘県議は橋本知事に対して、以下のように厳しく東電の対応を批判しました。
風評被害に対する県の支援について
茨城県議会予算特別委員会での審議<いばらき自民党・舘静馬議員:2013/10/25>

 先般、風評被害に苦しむ一部の事業者に対し、東京電力が「賠償を打ち切る」と、突然で一方的な「お知らせ」という通知を出しているとの報道がありました。
 私はこの「お知らせ」という通知を読ませていただきましたが、非常に冷たいなあというか、誠意を感じるような文章でないなあと思いました。
もちろん、事業主の努力などにより売上げが事故発生前の水準に戻っている場合や、明らかに事故との因果関係が認められない場合などには、賠償を打ち切る合理性もあると思われますが、現実に風評被害に苦しんでいる事業主に対しでも通知が出されていると聞いています。
 原発事故による損害は、事故の原因者である東京電力が、その責任を負うべきであることは至極当然でありますし、言うならば我々茨城県や県民は一方的な被害者であります。
 にもかかわらず、当事者間の合意が得られないまま、賠償金の打ち切りが一方的に通知をされました。そして、その大半は半年前に遡つての措置であり、風評被害に苦しむ事業者の経営に大きな打撃を与えるものであります。このまま賠償金打ち切りとなれば、少なからず倒産してしまう会社が出てくることが予想されます。知事の選挙でのキャッチフレーズに「復興から飛躍へ」とありましたが、これでは「復興から墜落へ」になってしまうのではないでしょうか?
 また、この賠償金打ち切り通知と時をおなじくして、先日の本会議の代表質問において、「30年後に原発ゼロ」を掲げる民主党の議員から、東海第二発電所の再稼動について、県として最大限の支援を行うべき旨の発言がありました。その議員は東京電力出身で東京電力と非常に近い関係であることを鑑みれば、あってはならないし、ありえない発言であり、その発言に、私は怒りさえ覚えるものであり、断固、反対をするものであります。
 こうした一連の流れを見ると、東京電力は、茨城県において福島第一原発事故の処理を終えたものと理解をしているのではないかと疑問に思うのは私だけでしょうか?
 「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではありませんが、この「お知らせ」という通知だけで、被害者に対する説明責任を果たしたと考えていると東京電力が思っているのならば、とても誠意がある対応と私には感じられません。
※この文書は質問の主旨を、ブログの管理者の責任で文字起こしたものであり、正式な記事録ではありません。

橋本知事も東電の対応を批判
 これに対して、橋本知事は風評被害の現状について「風評で不利な条件の下、必死に取り組んでいるにもかかわらず、現在も事故前に戻らないのが実情」との認識を示しました。その上で、「『打ち切りは一方的だ』『被害者を切り捨てるのか』といった声が上がってる。事業者への事前の説明や協議が不十分ではないか」と東電の対応について批判しました。「東電は誠意を持って事業者の声を聴き、しっかりと実態を把握し、個別の事情に応じて丁寧に協議を進めていく必要がある」と強調し、県として「全ての被災者が十分かつ迅速な賠償を受けることができるよう、国や東京電力に引き続きあらゆる機会を捉えて働き掛けていきたい」と述べました。
風評被害に対する県の支援について
茨城県議会予算特別委員会での橋本知事の答弁<2013/10/25>

 東京電力から事業者に出された通知では、「事故から相当期間が経過した現時点では、代替取引先の開拓や代替事業の展開等が可能であり、売上減少と本件事故との間に相当因果関係が認められない」ことを理由に賠償を打ち切るとされておりますが、事業者にとって、新たな取引先を開拓することや替わりの事業を展開することは容易なことではないと考えております。被害を受けている事業者は、これまで風評で不利な条件の下にあっても、何とか事故前の売上げを確保しょうと必死になって取り組んでlきたにもかかわらず、現在も事故前の現状に戻らない、というのが実情であると思われます。
 また、東京電力は、「事業者から減収や取引の状況を確認した上で賠償を続けるかを協議しており、一方的に打ち切ることはしない」としておりますが、「業績が回復していないのに打ち切りは一方的だ」、「被害者を切り捨てるのか」といった声が上がるなど、事業者への事前の説明や協議が不十分だったのではないかと考えているところです。
 このようなことから、東京電力は、事業者の立場に立ち、誠意を持って事業者の声を聴いて、しっかりと実態を把握した上で、個別の事情に応じて丁寧に協議を進めていく必要があるものと認識しております。
 私は、JCO臨界事故の経験から、賠償に当たっては、事故と相当因果関係が認められる損害は全て賠償の対象とすることを基本とすべぎであると考え、国の原子力損害賠償紛争審査会によるヒアリングをはじめ、様々な機会においてその旨を強く訴えてまいりました。
 この度の賠償打ち切りの問題につきましては、誠に遺憾でありますが、今月初旬の報道で初めて認識したところでございます。
 東京電力によれば、本年三月時点で、本県産野菜全体の東京中央卸売市場における価格が、キノコや山菜類を除き、事故前の水準に戻っているこを踏まえ、8月以降、個人で請求をしている野菜生産農家や野菜を原料とする食品加工業者など、県内40の事業者に対し、風評被害は基本的には解消したという考え方のもと、賠償を打ち切る旨の通知を出していると聞いているところでございます。
 しかしながら私は、東京電力が単に事故発生時からの経過期間や野菜価格の回復だけをもって賠償打ち切りの判断をするようなことはせず、個別の事業者の実態をよく調査して、損害と事故との相当因果関係を適切に捉えた上で協議に臨むぺきものと考えております。
 東京電力は、これまでの業界団体を通じた交渉から個別の事業者ごとの交渉に移行するため、酒造組合やほしいも中央協同組合など農産物を原料とする4つの食品加工組合に所属する事業者から個別に事情を聴き始めているようですが、全ての事業者に対して引き続き丁寧な対応に努めるよう、求めてまいりたいと思います。
 県としましては、被災者が十分かつ迅速な賠償を受けることができるよう、国や東京電力に対し、引きあらゆる機会を捉えて、強く働きかけてまいります。

 井手県議らは、声が小さな中小零細企業から賠償金の支払いを一方的に打ち切る東電の姿勢は看過できず、原子力損害賠償紛争解決センターへの申し立てや弁護士を立てての訴訟提起なども、県内事業者に対して支援していきたいと思います。

賠償金(本賠償)のご請求に関するお知らせ(別紙)
東京電力株式会社(2013/9/4)
 貴社のご請求につきましては、本件事故に起因する風評被害により、貴社の取引先である観光業者様において観光客が減少したことに伴い、売上高が減少したとして間接的に被った営業損害のご請求であると承っております。
 前回までのご請求正おきましては、本件事故後に、貴社において新たな取引先確保や新たな事業展開等を図ることが可能な時間の経過もない段階であったことや、貴社の事業形態、事業規模、売上に占める第一次被害者様との取引割合等を鑑み、弊社といたしましても貴社の売上が減少したことと本件事故との間には相当因果関係が認められると判断して賠償金を支払いさせていただいておりました。
 しかしながら、今回のご請求期間につきましては、法律の専門家を交えて検討いたしましたところ、本件事故から相当期間が経過した現時点では、通常代替取引先の開拓および代替事業め展開等が可能であると考えられ、そうした中で貴牡の売上が減少したことと本件事故との問には相当因果関係を認められることはできないとの判断に至りました。
 従いまして、誠に遺憾ながら、ご請求の賠償金をお支払いさせていただくことはできないという結論をお伝えせざるを得ません。何卒、ご理解を賜りたくお願い申し上げます。
 なお、今回のご請求期間におかれましても、ご請求内容と本件事故との相当因果関係について新たな資料等ご提出によりご証明いただける場合には、再度検討させていただきますので、ご連絡いただきますようお願い申し上げます。