国民守る安保機密を管理、国内外の情報共有に不可欠
特定秘密保持法案について 10月22日、自民、公明の与党両党は、政府が今国会に提出を予定している「特定秘密保護法案」を了承しました。
 特定秘密保護法案とは、安全保障に関する(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイ行為)の防止(4)テロリズムの防止―の4分野で、特に秘匿の必要がある情報を特定秘密として指定し、これを公務員らが故意に漏らした場合、10年または5年以下の懲役などを科すものです。過失の場合は、2年または1年以下の禁錮などが科されます。
 特定秘密を取り扱う国家公務員や防衛産業などの一部民間業者は、情報を漏らす恐れがないかを判断する適性評価を受けなければなりません。特定秘密の指定期間は5年以下ですが、更新や途中解除される場合もあります。
 特定秘密保護法案の必要性は、大きく分けて2点つあります。一つ目は、国と国民の安全を守るため、外交、防衛、国際テロ、大量破壊兵器など重要な安全保障に関わる情報の管理を徹底し、諸外国や国際機関と十分に共有することです。情報管理体制がしっかりしていないと、他国から「日本では機密が漏れるかもしれない」と見られ、十分な情報が得られない可能性もあります。
 二つ目は、外交・安全保障の司令塔として政府が設置をめざす日本版NSC(国家安全保障会議)に正確な情報を提供するためです。縦割り行政で今まで情報共有が不十分だった各省庁が、共通ルールの下で機密の保護と共有を促進。それをNSCが吸い上げることで、正確な情報に基づいた議論を効率的に行うことができるのです。
 他国の国家機密保護の状況観てみると、国の安全保障に関する情報は特別扱いされています。米国、英国、フランスなどでは、国家機密を漏らした場合、今回の特定秘密保護法案で示した「最長で懲役10年以下」と同程度か、それ以上の罰則が科さられます。国家の連携によって機密を共有する大前提として、各国が同レベルで情報管理をする必要があるのです。主要国と比べても罰則の重さは妥当といえるでしょう。
公明の主張が反映:「知る権利」「報道の自由」への配慮明記
 この特定秘密保護法案で一番不安なのは、政府が都合の悪い情報を隠してしまうといったことです。そこで公明党は、特定秘密が行政によって恣意的に指定されないようにするための有識者会議設置を強く求め、条文に明記させました。
 有識者会議には、情報保護の専門家だけでなく、情報公開、公文書管理、報道、法律の専門家らがメンバーとなり、特定秘密を指定する際の統一基準作成や、特定秘密指定の解除、更新、特定秘密を取り扱う国家公務員らの適性評価などを議論・提案し、実施状況の報告も受け、意見を述べることになっています。
 また、国民の「知る権利」を守るため、報道または取材の自由に十分に配慮するという規定を設けたほか、取材行為が法令違反か「著しく不当な方法」でなければ罰せられないとし、取材者が萎縮しないように配慮しました。
 さらに、特定秘密が公開されないのでは、と危惧する声もありますが、指定期間が計30年を超えて延長される場合には、その理由を示した上で内閣の承認(閣議決定)を得る必要があると規定しました。なお、法案で定める特定秘密は情報公開法の適用対象となっており、「情報公開・個人情報保護審査会」が特定秘密の中身を見る、いわゆる「インカメラ審査」が行われます。
 このほか、明治18年(1885年)に日本で内閣制度が生まれてから一度もなされてこなかった、閣議の議事録作成と一定期間後の公開を義務付ける公文書管理法改正案の提出を政府に求め、安倍晋三首相から法案を提出するとの答弁(10月18日の参院代表質問で公明党の山口那津男代表に対して)をえました。これは、日本の内閣制度の根幹を動かした公明党の大きな成果と評価されています。
秘密保護法案 国会はどう機密を共有するか
(2013/10/24・読売新聞社説)
 国民の「知る権利」を守りつつ、国の安全保障に関わる機密を保全する仕組みを構築することが肝要である。
 機密情報を漏らした公務員らの罰則を強化する特定秘密保護法案について、自民、公明両党が政府の修正案を了承した。法案は25日、国会に提出される。
 日本の平和と国民の安全を守るためには、米国など同盟国とテロや軍事関連の情報共有を進めることが欠かせない。その情報が簡単に漏れるようでは、同盟国との信頼関係が揺らぐ。漏えいを防ぐ法律が必要なゆえんである。
 法案では、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野で、特に秘匿性の高い情報を「特定秘密」に指定する。漏えいだけでなく、漏えいを働きかける行為も処罰の対象としている。
 このため、取材・報道の自由が制約されるとの危惧がある。
 修正案には、「国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮する」との文言が明記された。懸念を払拭する上で確かな前進と言える。
 報道関係者の取材行為についても、「違法または著しく不当でない限り、正当な業務とする」との規定が加えられた。通常の取材が罪に問われるのを防ぐ一定の効果が期待できよう。
 ただ、漏えいに対する罰則は懲役10年以下で、国家公務員法の懲役1年以下より格段に重い。公務員が萎縮し、取材への協力をためらう可能性は否定できない。
 行政機関が都合の悪い情報を安易に秘密指定する懸念も残る。
 修正案では、政府が秘密の指定や解除に関する統一基準を定め、その際には有識者の意見を聞くことも義務づけた。
 恣意的な運用を防ぐには、秘密指定の範囲を厳格に規定する基準作りが求められる。
 行政機関に属さない国会議員への機密開示に関する検討も不十分だ。法案は、国会の委員会に、秘密会の開催などの条件下で特定秘密を提供できるとしているが、提供を受ける議員の範囲や、漏えい防止の具体策は手つかずだ。
 安全保障に重大な影響がある機密を立法府や与党幹部が全く知らないで日本の針路を定めるのか、という問題は出てくるだろう。
 米国の連邦議会では、秘密会を開催し、政府から機密の開示を受ける仕組みが機能している。
公権力が集めた情報は官僚の独占物ではない。立法府も機密を共有し、保護する制度を自主的に検討すべきではないか。