日立市では、東日本大震災で被災した庁舎を建て替えるため、今年度から新しい庁舎の設計作業を進めています。
この新庁舎の設計は、ルーブル美術館の別館「ルーブル・ランス」の設計を担当した妹島和世氏と西沢立衛氏の建築ユニットSANAAが行っています。新庁舎建設市民懇話会などの意見を尊重しながら「建設基本設計」が取りまとめられ、9月に行われた市議会新庁舎建設特別委員会に報告されました。
新庁舎は、東日本大震災での教訓を踏まえ、市民生活の安全・安心を支える防災拠点施設として、また、復興におけるまちづくりの拠点施設として、これからの「市政百年」を担う庁舎を目指します。具体的には、次の5つの機能を具現化できる設計とします。1.災害に備える防災拠点機能、2.便利で使いやすい庁舎機能、3.柔軟で効率的な執務機能、4.経済性に配慮した環境にやさしい庁舎、5.市民が集う交流機能、の5つの機能です。
建設基本設計によると、免震構造を採用した地上7階建て、地下1階の鉄骨造り。延べ床面積は2万8457平方メートル。市民窓口を1、2階に集約し、執務室を中・高層階、市議会議場は最上階に集約しました。
特徴的な大屋根のある広場に多目的ホール棟や玄関前ロータリーなどのほか、新庁舎と一体化した屋内スペースに銀行やコンビニ、キッズスペースなどを配置。広場は災害時に炊き出し場や支援物資の一時保管所として活用できるよう整備されます。
総事業費は現時点で約95億円を見込んでいます。来年10月に新庁舎の本体工事に着手し、平成28年中に執務棟の供用を開始。2期工事として大屋根、多目的ホール部分を29年度中の完成を目指します。
- 災害に備える防災拠点機能としては、災害時においても防災拠点施設として機能し続けることができるように、免震構造をはじめとした耐震性に優れた構造計画を採用します。
災害発生時に、速やかに災害対策本部を設置し、関係機関と連携したスムーズな対応が可能となるよう、災害対策本部室や防災センターは常設設置されます。
災害時にライフラインが遮断された場合でも、災害対策本部機能を維持できるように、自家発電設備のほか、太陽光発電、雨水貯留槽、災害用井戸など、様々なバックアップ機能を整備巣ことになりました。
防災備蓄倉庫やガソリン等の備蓄タンクを設置し、災害対策活動の長期化にも対応できるようにします。 - 便利で使いやすい庁舎機能としては、現在5つの庁舎と2つの臨時庁舎に分かれている庁舎を集約し、さらに、別の場所にある企業局や教育委員会の庁舎も一体化させることで、利用者の負担軽減や事務の効率化を図ります。
窓口機能を1・2階に集約配置するとともに、フロアの連続性を保てるような分かりやすい動線を確保します。
利便施設(コンビニエンスストアや金融機関、情報センター、ギャラリー等)についても、来庁者が気軽に利用できる1階に配置します。
正面玄関から見やすい位置に総合案内所を配置し、来庁者に対する案内機能を充実させるとともに、自然光が降り注ぐ東側の屋内広場には、ゆとりのある待合スペースを確保します。
市民課の休日開庁業務に配慮したセキュリティラインを設けます。
思いやり駐車場や交通広場には、屋根を設置するほか、各フロアには多機能トイレを設置し、1階にはキッズスペースや授乳室を整備します。 - 柔軟で効率的な執務機能では、機構改革や職員数の変動などにもフレキシブルに対応できるよう、オープン型の空間とします。
市議会機能の独立性を維持するため、議会関連施設は、全て7階(最上階)に集約配置します。円滑な議会運営や傍聴者の利便性向上に資するため、視聴覚などの各種設備を導入するとともに、親子傍聴席を整備します。
来庁者及び職員の動線を考慮し、防犯カメラの設置、入退室管理システムの導入、中央管理室の整備など、それぞれのゾーンに合わせたセキュリティ対策を行います。 - 経済性に配慮した環境にやさしい庁舎では、開閉式窓の設置などにより、自然換気・自然採光を積極的に取り込む一方で、直射日光を遮るための庇を設置します。また、雨水利用設備、太陽光発電設備の導入などを行います。
建物の長寿命化を図るため、維持管理や修繕・改善がしやすく、計画的な設備の更新等にも配慮したフレキシブルな構造の庁舎とします。 - 市民が集う交流機能としては、多様な市民活動を支える拠点施設として、庁舎内に市民活動広場やギャラリーなどを設けるほか、屋外の多目的広場は屋根を設置し、イベントや災害時における避難場所として活用できるよう整備を行います。
コンビニエンスストアやレストラン、金融機関等の市民利便施設については、1階に集約配置します。また、最上階には、眺望を楽しむことができる喫茶スペースを配置し、来庁者が気軽にくつろげる空間を設けます。
市政情報のほか、日立市の歴史や文化、特産品などについても来庁者に分かりやすく提供できる「情報センター」を設置し、多様なメディアを活用した情報発信を行います。