茨城の農産物のブランド化は、作物本来の力を活かす方向で
10月31日開催された農林水産委員会の参考人聴取、茨城の食のアドバイザー藤原浩氏の「茨城の“食”の魅力について=農林水産の現場視察におけるブランド強化の可能性と未来」と題する意見の要約の第2弾です。藤原氏は、アドバイザー就任以来5ヶ月間、50カ所以上の現地調査を繰り返してきました。その実体験をもとに、茨城の農産物のブランド化を図るために、旅館で出されるお新香、大子のリンゴと下妻の完熟梨、奥久慈シャモとつくばシャモ、七会のお米と新品種“ふくまる”、鹿行地域のピーマンなど具体的な茨城の食材を事例に揚げて、具体的な提案を行いました。一つひとつ大いに検討に値する提案です。農業関係者だけでなく、多くの県民の皆さまにも知っていただきたい内容です。
正式な議事録は、公開まで1カ月以上かかるため、ブログ管理者がその発言のポイントを整理しました。あくまでも、管理者の受けた印象が色濃く反映していますので、その点はご了解下さい。
参考:水稲新品種「ふくまる」について
10月31日開催された農林水産委員会の参考人聴取、茨城の食のアドバイザー藤原浩氏の「茨城の“食”の魅力について=農林水産の現場視察におけるブランド強化の可能性と未来」と題する意見の要約の第2弾です。藤原氏は、アドバイザー就任以来5ヶ月間、50カ所以上の現地調査を繰り返してきました。その実体験をもとに、茨城の農産物のブランド化を図るために、旅館で出されるお新香、大子のリンゴと下妻の完熟梨、奥久慈シャモとつくばシャモ、七会のお米と新品種“ふくまる”、鹿行地域のピーマンなど具体的な茨城の食材を事例に揚げて、具体的な提案を行いました。一つひとつ大いに検討に値する提案です。農業関係者だけでなく、多くの県民の皆さまにも知っていただきたい内容です。
正式な議事録は、公開まで1カ月以上かかるため、ブログ管理者がその発言のポイントを整理しました。あくまでも、管理者の受けた印象が色濃く反映していますので、その点はご了解下さい。
- ブランド化を県や生産者が進める中で、消費者への情報提供が必要になります。同じ生産物であっても、消費者の受け方で価値が違ってしまうものです。伝統とは消えてしまっている伝統が圧倒的に多いことを認識しなくてはいけません。煮付けであるとか煮物であるとか地味な食べ物は食べなくなってします。食べなくなることは、生産者が作れなくなります。常に新しい試みをしていかねばならないのです。新しいチャレンジが20年、30年先に伝統になるかもしれない。茨城はこの点の取り組みが弱いと思います。
山形県の生産者は非常に新しい食べ方をトライしています。茨城県の旅館で泊まると、残念なのはご飯の漬け物がみんな黄色いタクワンです。山形県では、様々な漬け物が出てきます。干し野菜という文化があり、冬の間でもポリフェノールを大量に摂取することが出来ています。山形県では、リンゴの漬け物が出てきて、驚かされました。これを、福神漬けの代わりに新宿の一流レストランに出すとカレーの売りが大幅に伸びました。
茨城県の食材の食べ方は、全国でももっとも保守的な食べ方をしています。レンコンであっては、きんぴらとか煮物、天ぷらといった、最も一般的な食べ方をしています。他県では、地域ながらの食べ方をしています。
- 下妻の完熟梨、大子町のリンゴは大変おいしい。いままで紅玉を使ってきたレストランに、大子の“ほおずり”という銘柄を勧めています。これは、生産者のレベルの高さ、日本に誇る研究機関、老木が存在しているからです。日本で最古の62年の陸奥の原木が大子町の黒田農園にあります(青森ではすでに陸奥の原種は枯れてしまい存在しません)。この農園には90種類ものリンゴの木があります。衝撃的でした。アップル社のリンゴのマークにもなっている旭という品種(学名をマッキントッシュと言います)は一般的に南限は青森県だと言われてきました。じつは、黒田農園さんに生きた木があります。
日本では生産物の評価を生産量で行う傾向が強くあります。私は7年間ヨーロッパで暮らしていました。フランスでは70年を超えたブドウの木が珍重される。茨城県の大子では、62年のリンゴの古木が年間2500個、実をつけています。下妻の豊水と呼ばれる梨は、50年が経過しています。実は、格別においしいのです。しかし、5年という若いの木の方が収穫高が格段に多い。若い生産者は当然老木は評価できない。しかし、すばらしい原木を持っておきながら、それが絶えてしまうと言うことは、これからブランド化を目指す茨城にとって課題となっていきます。ヨーロッパのようにプレミアム、限定と言った価値をつけていくときに十分考えていかなくてはいけない。着眼点を変える必要があります。 - “奥久慈シャモ”、一流の料理人が絶賛しています。しかし、火入れが非常に難しい。一般の主婦が調理すると堅くて食べられなくなることも多い。車でいうとF1カーのような厳しさがある食材です。しかし、世界でもトップクラスのシャモ肉を見つけました。これが“つくばシャモ”です。まだ、5軒しか飼育農家がないので冷凍でしか販売できません。売りあぐねているのが実情です。
ヨーロッパのミシュラン3星レストランで、もしこの“つくばシャモ”を出したら、ラカン産のハト、シャラン産のカモと同等かそれ以上の評価を得るでしょう。一皿1万円の料理になります。その上、この“つくばシャモ”は火入りが容易であり、プロが調理しても、主婦が料理してもおいしい料理になる。近い将来、大きなブランドに育つ可能性があります。 - 茨城県が米処であるという点で、七会のお米は日本一です。茨城県が生産に力をいてている“ふくまる”という固有の品種。業務用という触れ込みで販売しています。“ふくまる”はおそらく山形県の“つやひめ”と同等以上の評価が出来ます。その売り込みに「業務用」という表現が妥当かどうか検討すべきです。
いま、一般消費者のために便利な食品が増えています。「噛み、噛み、ごっくん」という食べ方では、七会のお米や“ふくまる”のおいしさは伝わりません。おいしさのピークを迎える前に飲み込んでしまいます。茨城の食材のおいしさが判らないのは、消費者が本当の食べ方を判らないからかもしれません。時間を短縮して食べさせるものの多くは、柔らかくして、香りを強くした設計になっています。七会の米や“ふくまる”を家で食べるときは、子どもに最低でも15回噛む、できれば30回噛むことを勧めています。
ブランド化は、人磨きです。消費者を磨かずしてブランド化は出来ません。 - 茨城県全体を見回しても有能なフロントマンが見当たりません。私は全国を回って、その地域、地域のフロントマンに当たる人に「地元の物を食べさして下さい」と頼んでみます。山形県で、タクシーの運転手さんに聞いたら「お客さんの口に合うか判りませんが、私たちはこれを食べているためにこれだけ元気で笑顔なんです」と応じてくれました。(山形県のフロントマンとしてはすばらしい対応です)
- サービスの語源はサーバントで従属の関係です。一方、ホスピタリティとはもてなし、対等の関係なんです。お客さんに対して何を持って帰ってもらうか、例えば、出張で茨城に来た方に、今度は家族を連れて茨城に来たいと思ってもらえるような、キュレーション、ブランド化、人磨きをしていかなくてはなりません。茨城の生産者に“いばらきプライド”といった誇りを感じてもらえるようなプロモーション計画を具体化することが大事です。
- 茨城のピーマン農家で「嫌いな人でも食べられるようなピーマンを作っています」と言われました。これは全く逆だと思います。ピーマンは青くて苦いというのが本来の特徴です。苦いというのが体に溜まった毒素を排出するという働きがあるのです。苦みがあるピーマンを、苦みを無くすということは、全国の競争から脱落してしまいます。野菜の本来持っている力をどう活かすかに力を入れるべきです。野菜の個性を決して殺してはいけないのです。
参考:水稲新品種「ふくまる」について