建設業への投資と就労者数 10月8日の定例記者会見で、太田昭宏国土交通相(公明党)は、公共工事費の算出に使う労務単価を必要に応じて見直す取り組みを進めていることを明らかにしました。
太田昭宏国土交通大臣の記者会見から
2013/10/8
 この設計労務単価につきましては、1年に1回くらいの感じであった訳ですが、今年度から全国について概ね3ヶ月のスパンで入札不調の増加状況や技能労働者の賃金について調査を行って、入札不調の改善のために必要であれば機動的に引き上げるという措置をしたところです。
 もっと言いますと、3月、6月、9月そして12月ということになりますが、そうしたある意味では期間を設定しまして、通年の状況の調査と、なかなか引き上げが無かったんですけども、今までは時差があるとか色んなこともありましたから、また1ヶ月上がったからといって、直ちにというと、また変動があるということがありますから、3、6、9、12月ということで調査をするということを一応、目安として動いているところでございます。
 特に被災3県については、これは重要な観点でありますから、3月に前年度比で21パーセントの引き上げを行って、現地に昨日行きましてこれが非常に大きかったと、入札不調というものも下がってきてるという要因の一つはこれであるという報告もいただきました。

 今まで、年1回の労務単価の見直しを、入札状況や人件費の変動に合わせて、3ヶ月に1度、機動的に行うことで、入札不調を解消するのが目的です。
 東日本大震災以降は被災地を中心に建設作業員が不足し、人件費が労務単価の水準を大きく上回り、入札不調が発生する状況が続いていました。
 国交省は、今年3月に被災3県の労務単価を前年度比で21%引き上げるなど必要な対策を講じました。その結果、状況は改善の方向に向かいつつあります。
 10月7日に行われた国交省の復興加速化会議でも、被災3県と仙台市の入札は、再発注や発注数拡大などの工夫によってほぼ契約に至っており、積み残しがない状況になっていると報告されました。
 現在まで、労務単価の改定は毎年春に実施されていました。そのための調査は半年前に行われます。被災地の復興需要の増加で、工事に関わる人件費は高騰しており、実態に応じた労務単価の改定が求められています。加えて、今後は防災減災のためのインフラの更新、東京五輪の施設整備など、大量の工事が続くことを考慮すると、人件費はさらに増大することが予想されます。
 そこで、国交省は3カ月ごとの補足調査の実施を進めています。入札環境の変動を細かく点検し、必要に応じて改定するなど、機敏に対応する方針です。
 入札が成立しなければ、国が必要な予算を確保しても、大震災の復興は進みません。国交省の対応を前向きに評価します。
 人件費だけでなく、資材価格も乱高下している現状があります。現場で起きているさまざまな問題を点検し、素早く対応していくことが大事です。
 一方、建設業界は、構造的な技術者不足に悩まされています。特に、近年の建設不況による人件費の低下で若手の入職者が激減。逆ピラミッド型の年齢構造になっています。ベテラン技術者の多くは高齢化し、今後10年間で大半が引退する見通しです。技術の継承も危ぶまれています。
 政府は、公共工事の入札で、若手技術者を活用する企業に対する優遇制度を導入する方針です。
 若者が就職しやすく、働き続けられる賃金の保障がなければ、若手技術者は増えません。優遇制度で工事費用は高くなりますが、若者の就業機会の増加を優先すべきです。
建設業就業者不足への対策が必要
茨城県の建設労働者数 一般財団法人建設経済研究所の調査結果によると、2025年には建設業就業者が最悪240万人に減少すると予測しています。
 建設業就業者は、バブル経済に比例するかたちで増加を続け、1995年685万人までに達しました。しかし、1996年以降、建設投資額が減少の一途をたどり始めると、建設業就業者数は1995年〜2011年の間に約188万人(▼27.5%)減少し、497万人となっています。
 その上近年は、若年層(15歳〜24歳)の建設業への入職者の減少も問題となっています。各調査年次の入職率の推移をみると、ピークの1995年に比べ、2010年は2分の1〜3分の1まで低下しています。
 その結果2025年度には、12年の就業者数414万人に対し、楽観的な見通しでは3.2%減の400万9000人となります。また、建設業界の最悪期とも言える2005〜10年の変化率を基にした補正なしのケースでは、41.9%減の240万5000人という結果になりました。
 建設業界はじっと業界たたきがつづきました。その極まりが民主党政権での「コンクリートから人へ」です。一時期685万人もいた建設労働者はもかなり減少しました。しかも、心配なのは建設業界が超高齢化社会を迎えていることです。2010年の統計で、建設業就業者は、55歳以上が約33%、29歳以下が約12%と年齢構成が全く逆転しています。次世代への技術承継が大きな課題なのです。
 若い人が建設業界に入ってこない理由は、賃金が安い、仕事がキツい、休日が少ないなどがあげられます。このまま放置していけば大変な事態になります。同じように就労者不足が心配されている農林水産業には、手厚い新規就労者への対策が講じられているのに比べて、全く無策と言っても過言ではありません。