

除染に国費投入 東電は自己改革に全力尽くせ
「原子力事故災害からの復興加速化に向けて」と題した同提言は、「(福島の)復興は遅れている」との「強い認識と危機感」の下、「新たな政策への転換」が急がれることを指摘しています。前政権が敷いた「全て東電任せ」の仕組みを抜本的に見直し、国が前面に出て「オールジャパンで福島の再生を実現していく」姿勢を明確にしています。
今なお約15万人が避難生活を送る福島の現状と、事故を起こした東電に全費用を負担させる現行制度の限界とを見据えた現実的な提言です。
最大の注目点は、住民帰還のネックとなっている除染の遅れを取り戻すため、除染作業を「公共事業」と位置付け、国費投入を求めている点です。
具体的には、これまでの除染に要した費用は現行計画通り東電が負担しますが、学校や公園など避難区域の生活再建に欠かせないインフラ整備と一体で進める今後の除染には国費を投入。併せて、汚染土などを保管する中間貯蔵施設の建設費用も、「国が万全を期す」べきことを明記しました。
提言はまた、放射線量が依然として高い「帰還困難区域」の厳しい現状にも率直に言及。同区域などからの避難者を対象にした「新しい生活を始めるための支援強化」を国の責任で行うべきとして、帰還見通しの情報提示や移住先の住宅確保のための賠償拡充などを要請しています。
このほか廃炉・汚染水対策に関連して、(1)東電と国の責任の所在の明確化(2)政府内の意思決定系統の整理と事務局機能の強化(3)廃炉実施体制の構築―なども提示し、国が一層前面に出ることを強く要求している点も注目されています。
原発事故処理に国費を充てることには、「東電救済」との批判の声も一部にあります。しかし、東電の負担はすでに限界に来ており、このままでは復興が遅れるばかりであることも事実です。苦渋の選択として、国費投入は避けがたいことを認めざるを得ません。
その前提として、「東電の自己改革」と「国民の理解」が不可欠なことは言うまでもありません。原発の再稼働をいたずらに急いだり、中小事業者の賠償金請求を一方的に差し止めるような東電の体質は、このさい抜本的改めなくてはなりません。