核燃料税の実績と見込み 日本げんでん東海第二原子力発電所は、東日本大震災以降、運転再開の見通しが立たず、周辺住民の避難体制の確保もままならない中で、「このまま廃炉に」との声も高まっています。こうした状況の中で、茨城県は、原発が運転していなくても電力事業者に「核燃料税」を課税できる制度を、来年度から導入する方針を固めました。11月14日、公明党茨城県議会を代表して井手よしひろ県議に、県税務課長より見直しの概要について説明がありました。
 「核燃料税」(核燃料等取扱税)は原子力施設に運び込まれた核燃料の価格などに応じて自治体が課税する地方税です。茨城県は日本原子力発電や日本原子力研究開発機構などあわせて11の事業者に課税しています。
 しかし、東海第二原発が東日本大震災で停止したまま運転再開の見通しが立たなくなっていることなどからこの5年間の税収は当初の見込みを70億円あまり下回り、約36億円にとどまる見込みです。 このため茨城県は、来年3月末に期限を迎える制度の更新時期に合わせて、原発が運転を停止していても課税できるよう条例の見直しを進めていました。
 条例に改正案によると、原子炉の設置自体にその熱出力によって課税できるようにします。反対に、核燃料の挿入に関する税率は現行の13%から8.5%に引き下げます。これによって、税率はこれまでの13%から、実質17%程度になり、稼働していない(新たな核燃料の挿入のない)東海第2原発に相当額の課税ができるようにします。
 また、原子力施設で保管している使用済み燃料やプルトニウムについても新たに課税します。さらに、高放射性廃液の税率よりガラス固化体の税率が高い逆転現象を修正し、より安全な保管体制に移行できるよう動機づけしています。 
 県税務課の説明によると、核燃料税は震災前の2010年度が11億6000万円だったのに対し、2012年度は東海第2原発の停止に伴い、6億円と大幅な減収となりました。2013年度当初予算では、再稼働が見込めないことから6億1400万円を計上しています。条例の改正によって2014年度からの課税を予定し、5年間で88億円、年平均17億6000万円の税収を見込んでいます。
 核燃税は1999年4月に創設されました。5年ごとに税率や課税対象が見直されており、今年がその見直しの節目になります。震災以降、県議会では課税対象の見直しを求める意見が度々出され、県は4月からの新たな方式を、有識者らでつくる「県自主税財源充実研究会」などでの審議も踏まえて検討してきました。
 核燃税は使い道が制限されない法定外普通税で、環境放射線の監視や避難用道路の整備などに活用されてきました。福島第一原発事故を受け、原発事故の安全対策にかかる費用はさらに増加する見通しで、財源の確保が求められていました。
 核燃料税は、原発が立地する12道県(福島県は昨年12月に廃止しました)が導入している各自治体独自の法定外普通税です。震災後、税収の安定化を目的に、停止中の原発でも熱出力に応じて一定額を課税する自治体が相次ぎ、今年9月の愛媛県まで6道県が条例を可決しています。
 税務課長から説明を受けた井手県議は、「茨城県議会公明党は、東海第2発電所の再稼働を前提とする条例の改正には、絶対反対の立場です。しかし、今回の改正は今後の“廃炉”に向かう流れにも、悪い影響をあたえるものではないと考えます。たとえ、原発が再稼働しなくても、住民の安全を守るための費用や原子力施設の安全性を高める費用など、県の財源確保は必要です。原子力事業者にしっかりと説明して、ご理解いただいた上で、円滑に実施していただきたい」と要望しました。