半世紀ぶり大転換、保護から競争の時代に
131127kome 11月26日、政府はコメの生産調整(減反)を5年後をめどに廃止する方針を決定しました。昭和45年に始まった減反政策の導入以来、約半世紀ぶりのコメ政策の一大転換期に突入しました。コメ農家の保護を優先する農政から脱却し、農家に自由競争を促して農業を成長産業に育てるのが目的です。しかし、急速な政策転換についていけずに耕作を放棄する農家が続出する懸念は払拭されず、小規模零細農家をどう守るか、さらにはそうした方々によって支えられている地域社会をどう守るかが大きな課題となります。
 甘利明経済再生担当相は記者会見で、「今回の決定は歴史的な転換だ。意欲と能力のある担い手に生産資源を集中して生産性をあげていく」と意気込みを語っています。
 昭和45年に始まった減反はコメの作る量を減らして値段が下がらないようにし、コメ農家の生活を守る仕組みに他なりません。反面、自由に米を作れないために、「農家のやる気をそぐ政策だ」との批判が、特に生産面積を拡大し収益を上げようというやる気のある農家からは強く発せられていました。
 これまでも政府は段階的に見直しを行ってきましたが、民主党政権での戸別補償制度はその流れを完全に止めてしまいました。
 今回の政策転換は、従来の政策を続けていては、国内農業がじり貧になるとの危機感がもはや無視できなくなるまで広がっていることを意味しています。国内農業は、日本人の食生活の変化で減反を強化してもコメ消費の減少に追いつかない状態が続いています。農業従事者の平均年齢は65歳を超え、農家の数も250万戸とピーク時の半分以下に落ち込んでいます。
 減反廃止は、生産面積を広げて収益を上げたい農家には追い風になります。さらに政府は都道府県ごとに新設する「農地中間管理機構」を活用して、意欲ある農家や企業に、農地を集約する手助けをします。
 ただ、コメの作付け面積をコントロールしないと言うことは、農家がコメを作りすぎて価格が暴落する危険性も増大します。そこで、政府は農家に適正な生産量を決定してもらうため、参考となる需給見通しを示す方針です。加えて、これまでコメ生産の中心だった主食用米から需要増が期待できる、飼料用米などへの転作を促す補助金も、今まで以上に拡充することを決めています。
 さらに、日本第2位の農業県である茨城県にとって深刻なのは、大規模化が難しい山間地や高齢の零細農家が減反廃止で打撃を受ける可能性が高いことです。その結果、地域社会が崩壊したり、農地が荒廃し地球環境にも悪影響を及ぼしかねません。このため、政府は農地保全を目的に新たな補助金「日本型直接支払い」を創設するのも、これを防ごうとするためのものです。
飼料用米の収穫風景 農林水産省は補助金の見直し後、農業で生計を立てている世帯が多い集落の所得が全国平均で13%増えるとの試算を示しています。これは飼料用米の生産が大幅に増えることが、その前提です。飼料用米の生産が軌道になるためには、そのコメを資料として使う畜産農家が隣接している必要性があります。畜産農家が近くにない、飼料用米の工場が近くになくなどの理由で、転作が難しい状況も生まれます。
 今回の政策転換がかえって国内農業の土台を崩す結果とならないよう政府は今後、生産現場の動向を慎重に見極めていく必要があります。
コメ政策の転換に係わる公明党の役割
 公明党はコメ政策の見直しに際し、「生産現場の十分な理解を得ること」を前提として慎重に議論を展開。コメの直接支払交付金の削減幅を、農家に与える影響を踏まえ、半減にとどめさせました。また、生産誘導が必要な飼料用米の助成単価を引き上げたり、収入保険の導入に見通しを付けるなどの修正を実現しました。

政府が決定した新たなコメ政策の基本
  • 生産調整(減反)は、5年後の平成30年度をめどに廃止。国が示す需給見通しなどを参考に、農家や農業団体が生産量を判断できるようにします
  • 減反に参加する農家に配る10アール当たり1万5千円の定額補助金は、26年度から7500円に半減。減反廃止に合わせ30年度から支給を取りやめます
  • 農地を守る取り組みを後押しする「農地維持支払い」と、農村の環境を良くする「資源向上支払い」からなる交付金「日本型直接支払い」を26年度に創設します。
    「農地維持支払い」の10アール当たりの交付単価は、水田が北海道2300円、都府県3000円とし、畑は北海道1000円、都府県2000円とする
    「資源向上支払い」は水田が北海道1920円、都府県2400円とし、畑は北海道480円、都府県1440円とする。
    ともに5年後に補助金の効果などを検証する
  • 主食用米から飼料用米、米粉用米への転作を促す補助金は26年度から拡充します。収穫量に応じて10アール当たりの支給額が変わる仕組みとし、収穫量が平均を上回れば支給額を現在の10アール当たり8万円から増やし、下回れば減らします。支給額は上限を10万5000円、下限を5万5000円とします
  • コメの販売価格が基準を下回った際に差額を穴埋めするため、減反に参加する農家に配っている補助金は26年度に廃止します
  • 地域の特色のある農業の振興策を計画できるようにするため、市町村が独自に選んだ転作作物に関して支給単価を決めて農家に支払っている補助金を拡充します