131204saisyori 12月2日、原子力規制庁は、運転を停止している日本原子力研究開発機構(原子力機構)の東海再処理施設の高レベル放射性廃液とプルトニウム溶液に関する調査報告書(独立行政法人日本原子力研究開発機構再処理施設における潜在的ハザードに関する実態把握調査報告書)をまとめました。
 3日付けの朝日新聞は、この報告書をもとに「原子力機構の高レベル廃液、11時間で水素爆発する恐れ」とセンセーショナルに報道しました。
 東海再処理施設では、使用済燃料を再処理して回収したプルトニウム溶液、高放射性廃液を溶液状態で貯蔵しています。原子力機構は、廃液を22年かけて、溶液を1年9カ月かけて、それぞれ再処理行いしより安定した混合酸化物(MOX)転換及びガラス固化体として保管する計画です。
 しかし、2007年以降、新潟県中越沖地震等を踏まえた施設の耐震性向上工事、東日本大震災後の福島第一原子力発電所事故を踏まえた安全対策及び施設の健全性確認のため、施設は停止したままになっています。
 現在、施設内には高放射性廃液プルトニウム溶液を406立方メートル、溶液を3.5立方メートル保管しています。
 廃液の処理施設は2015年1月〜3月ごろ、溶液の処理施設は来年3月ごろ、運転再開の見通しとされています。
 原子力機構は再処理施設に関し、12月18日施行予定の核燃料サイクル施設などの新規制基準を例外的に適用せず、ガラス固化体処理などを認めるよう規制庁に求めています。また、廃液の処理施設は16年度中に、新規制基準適合の設計変更を申請する予定です。
 プルトニウム溶液、高放射性廃液については、放射性物質による崩壊熱の除去及び放射線分解により発生する水素の掃気が必要です。溶液を貯蔵する貯槽には冷却水や空気の供給等による安全対策を施すとともに、必要な安全設備には停電時に非常用発電機から電気を供給できるようになっています。さらに、福島第一原発事故を踏まえ、全ての電源が失われた場合でも電源車からの電源供給や窒素ガスボンベを用いた水素掃気を行う等の緊急時の安全対策が講じられています。
 報告書では、全ての安全機能が機能しなかった場合、プルトニウム溶液では沸騰まで23時間、水素4%到達(空気中の水素の可燃限界濃度。これを超えると着火源があれば爆発する可能性がある)まで11時間、高放射性廃液では沸騰まで55時間、水素4%到達まで38時間と評価しています。
 原子力機構では、福島第一原発の事故を踏まえた緊急時の安全対策は、この評価時間内に確実に実施できることを確認していると見解を発表しました。また、仮に、全ての安全対策が機能しなかった場合、放射性物質の放出に至る可能性はあるものの、施設の排気系に設けられたフィルタ等による放出により、影響を抑制することができとしています。

原子力機構の高レベル廃液、水素爆発の恐れ 東海村
朝日新聞(2013年12月3日)
 原子力規制庁は2日、日本原子力研究開発機構の東海再処理施設(茨城県東海村)のプルトニウム溶液と高レベル放射性廃液の調査報告書をまとめた。廃液が430立方メートル処理されずに残っており、安全装置が壊れると沸騰して放射性物質が飛散したり、水素爆発を起こしたりする恐れがあるという。
 施設は高速増殖原型炉もんじゅなどのプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料用にプルトニウムを抽出している。施設内には液体プルトニウム3.5立方メートル、高レベル廃液は430立方メートルある。
 本来、液体プルトニウムはMOXの粉末にし、高レベル廃液はガラスで固めて保管する。しかし、耐震対策や機器の故障などで、2007年から処理装置が止まったままになっている。
 規制庁の調査によると、事故などで冷却設備や水素除去設備などの安全装置が故障すると、高レベル廃液は55時間で沸騰して放射性物質が飛散、水の放射線分解で水素が発生して38時間で爆発する恐れがあるという。プルトニウム溶液は23時間で沸騰、11時間で水素爆発する恐れがある。
 原子力機構は、液体プルトニウムは1年半ほどかけて640キロのMOX粉末にし、高レベル廃液は20年かけて、630体のガラス固化体にする計画だ。処理施設を稼働するには、18日に施行予定の国の新規制基準に適合しなければならない。だが、原子力機構は廃液のまま保管する危険性をふまえ、特例で適合前に装置を動かせるよう求めている。今後、原子力規制委員会で検討する。

★東海再処理施設
使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出す施設。核燃料サイクルの国内初の再処理工場として、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)が東海村に建設しました。1977年に初のプルトニウム抽出に成功し、81年から本格運転。97年に放射性廃棄物処理施設で火災が発生し、作業員37人が被ばくする事故が起こりました。