「情報統制」「治安維持法」など具体的根拠ない批判
首都大学東京法科大学院・前田雅英教授
先進諸国を見ても、防衛や治安に関する重要な情報は「特別扱い」されており、国民の利益のためには特定秘密保護の法制は必要だ。
現在、テロやサイバー攻撃などを防ぐためには、国際的な連携が前提となっている。しかし、海外諸国は日本に重要情報を提供すると、その情報が漏れてしまうと思っている。
日本は世界でも極めて民主的な国で、日本ほど表現の自由が保たれている国はまれだ。ただ、今まで日本は国家の重要秘密があまりにも漏れすぎだった。
北朝鮮による拉致問題でも外交カードになり得た重要情報が先に報道されたことの問題を指摘する声もある。私も、あるアメリカの高官から「今のままでは日本に情報は出せない」と何度も言われた。領土問題などに関してアメリカと情報を共有せずに適切な対応ができるのか。特定秘密保護法は、世界の標準からいって、とくごく常識的な法律だと理解してほしい。
マスコミは「国民の懸念を払拭できていない」と言うが、国民が懸念を持っているというよりは、一部のマスコミが懸念を煽っているように感じる。
国会でも衆参ともに3分の2の勢力にあたる自民、公明の与党と日本維新の会、みんなの党が修正で合意したように、大方の人がこの法律の必要性を認めていると思う。この法律は衆議院で40時間かけて議論した。今国会で議論された他の法律を見ても、あれだけ密度の高い議論はされていないし、マスコミが騒ぐほど拙速ではない。
社民党などが安全保障の秘密保護と知る権利を両立させる「ツワネ原則」を主張しているが、中身をよく読むと秘密保護法の必要性を暗に認めている。他の野党も、掘り下げた質問はできなかった。
「情報統制」や「戦前の治安維持法に戻る」などの批判があるが、具体的な根拠が無いまま尾ひれが付いて大きくなっている。「報道の自由」「表現の自由」「知る権利」については公明党の主張で法案に盛り込まれたわけで、保護されることは間違いないだろう。今回の法文は秘密保護と「報道の自由」のバランスも非常によく取れている。
「特定秘密」は、開示か不開示かで争いになった場合、情報公開法で設置された情報公開・個人情報保護審査会によるインカメラ審理(特定秘密の内容を実際に見て審査すること)を受ける場合もある。また、秘密指定の適否は裁判でチェックされる。その時、秘密にふさわしいものでなければ、裁判に負ける。行政が裁判に負けるようなものを秘密に指定するわけがない。
また、法文に「その他」と付いているから曖昧と言うが、刑法の中に「その他」の文言がいくつ入っていると思っているのか。
私の知る法律学者を見ても、ごく一部の学者だけが反対しているだけで、この条文を不明確だとは思っている人は少ない。今までの広い秘密の概念に比べれば、重要なものが絞り込まれ、その意味では重要な秘密の範囲は明確になる。
特定秘密の取扱者が漏えいした場合の懲役10年以下の刑について厳罰化という議論があるが、国際的に見てもアメリカは極刑まであるから、厳罰化と言えるのだろうか。日本では窃盗でも懲役10年以下だ。
「特定秘密」は、開示か不開示かで争いになった場合、情報公開法で設置された情報公開・個人情報保護審査会によるインカメラ審理(特定秘密の内容を実際に見て審査すること)を受ける場合もある。また、秘密指定の適否は裁判でチェックされる。その時、秘密にふさわしいものでなければ、裁判に負ける。行政が裁判に負けるようなものを秘密に指定するわけがない。
また、法文に「その他」と付いているから曖昧と言うが、刑法の中に「その他」の文言がいくつ入っていると思っているのか。
私の知る法律学者を見ても、ごく一部の学者だけが反対しているだけで、この条文を不明確だとは思っている人は少ない。今までの広い秘密の概念に比べれば、重要なものが絞り込まれ、その意味では重要な秘密の範囲は明確になる。
特定秘密の取扱者が漏えいした場合の懲役10年以下の刑について厳罰化という議論があるが、国際的に見てもアメリカは極刑まであるから、厳罰化と言えるのだろうか。日本では窃盗でも懲役10年以下だ。
前田雅英(まえだ・まさひで)
首都大学東京法科大学院教授。司法試験委員を長年務め、東京大学出版会から出版された著書 『刑法総論講義』及び『刑法各論講義』は、記述の平明さにおいて他の追随を許さず、旧司法試験受験生のバイブルといわれました。「前田説」と呼ばれるその刑法理論は、実務にも多くの影響を与えています。
公明新聞(2013/12/7)より転載、見出しはブログ管理者の責任で編集させていただきました。
首都大学東京法科大学院教授。司法試験委員を長年務め、東京大学出版会から出版された著書 『刑法総論講義』及び『刑法各論講義』は、記述の平明さにおいて他の追随を許さず、旧司法試験受験生のバイブルといわれました。「前田説」と呼ばれるその刑法理論は、実務にも多くの影響を与えています。
公明新聞(2013/12/7)より転載、見出しはブログ管理者の責任で編集させていただきました。