啓発リーフレット 12月16日、井手よしひろ県議はNPO法人ウィメンズネット「らいず」の三富和代代表理事らと意見交換。若いカップル間での暴力(デートDV)被害の実態と茨城県の取り組みについて、様々なご提言をいただきました。デートDVとは、結婚していない若い恋人間で起こるDVのことを言っています。「らいず」の調査によると(2012年12月時点)、彼氏・彼女がいると答えた男女のうち「いずれかの暴力被害がある」と答えた男女は全体38.7%(女子43.9%、男子26.9%)に上っています。とくに女子全体でみると23.4%が「何らかのDV被害を受けた」と回答しています。
 デートDVには様々な形があります。例えば、身体的暴力(殴る、蹴る、物を投げる、首を絞めるなど)、精神的暴力(ひどい言葉でバカにする、拘束、つき合いの制限、監視、無視、携帯・スマホのチェック、おどしなど)、経済的暴力(金品を巻き上げる、貸したお金を返さない、いつもを奢らされるなど)、性的暴力(キスやセックスの強要、避妊をさせないなど)などが典型的な事例です。

深刻化するデートDV:“大阪SACHlCO”の報告
 このデートDV被害が、深刻になっています。大阪府の阪南中央病院が2010年3月、性暴力救援センターを「病院拠点型で取り組む必要がある」との目的で、「性暴力救援センター・大阪SACHlCO」を立ち上げました。産婦人科医を中心に性暴力被害者の被害直後からの総合支援。電話相談、面接相談、救急医療、カウンセリング、法的支援などを行っています。
 大阪SACHlCOの報告(2010年4月〜2013年3月)によると、3年間の電話相談件数は1万160件、来所件数1,746件、初診人数557人となっています。初診人数557人の被害内容は、レイプ・強制わいせつ340人、性虐待(実父、義父、兄などからの性的虐待)124人、DV46人、その他47人となっています。このうち、性暴力被害者は以下のような特徴があると報告されています。
  • レイプ、強制わいせつ被害者でも、その半数は警察への通報を拒否(事情聴取に耐えられない、親が世間体をはばかるなどの理由で)
  • 性虐待被害を受けた子どもたちが多い
  • 性暴力被害は10代の被害が最も多い
  • アルコールや薬物使用、ネットを通じた被害が目立つ
  • ネットでの接触が増えている中で、出会い系サイトで繋がって被害に遭う10代が増えている
DV防止法とストーカー防止法の狭間で遅れる公的支援
DV被害の相談窓口 配偶者暴力(DV)防止法とストーカー規制法が改正され、年明けにも施行されることになっています。交際相手からの暴力被害者を保護する仕組みが充実してきましたが、デートDVの被害者が、二つの法の隙間で守られにくいという課題が、今もって解決していません。
 2000年に施行されたストーカー規制法は、交際相手や交際を求める相手からのつきまとい行為に対処する法律です。被害者の申し出により警察がストーカー行為をやめるよう警告し、従わない場合は都道府県公安委員会が禁止命令を出すことができます。
 一方、2001年施行のDV防止法は、配偶者や元配偶者、事実婚の相手などによる暴力の被害者を守る法律です。被害者の申し立てを受け、裁判所が加害者に接近禁止命令・退去命令をする保護命令制度がその柱となっています。被害者をシェルター(緊急避難所)に保護することもできる仕組みになっています。どちらの法律でも、命令に従わない場合は、警察が加害者を逮捕できます。
 これまで、パートナーからのDV被害は、加害者が配偶者ならDV防止法、交際相手ならストーカー規制法と、事案によって法律が使い分けられてきました。しかし、交際相手による殺人事件が相次ぎ、今回同時に改正されることになりました。
 改正DV防止法は、保護命令の対象を同居の交際相手にも拡大しました。しかし、同居していない場合は全く対象外です。
 若年カップルのデートDVは、ストーカー規制法の窓口である警察では、ほとんど対応してもらえないのが現実のようです。
 また、ストーカー規制法には、被害者をシェルターに保護する仕組みがありません。児童相談所では家庭内の虐待ではないため保護されず、婦人相談所でも、未成年のため自宅に帰されてしまう事例のほうが多いようです。
 今回、改正ストーカー規制法は、被害者への「通知制度」を導入しています。被害者の申し出により警察・公安委員会が警告・命令をした場合は被害者に通知されます。さらに、警告・命令をしなかった場合も、その理由を文書で被害者に通知しなければならなくなりました。一歩前進と評価できます。しかし、肝心なことは相談の窓口が警察では、恋愛感情もあるパートナーのDVについて相談できるか、その敷居の高さが最大の課題なのです。

デートDV:いま、茨城でできることは
 茨城県は2011年、12年度の2か年、「らいず」に対して、国の「光を注ぐ交付金」を活用したデートDV予防啓発に関する事業を委嘱しました。県予算の予算で、行政・民聞が一体となった取り組みが展開されました。しかし、今年度は予算がつかず、やむなく民間の財団からの助成金を受け、医療系の大学、公私立高校合わせて18校に出前講座を実施、事業継続に力を注いでいます。
 茨城県は第3次茨城県DV対策基本計画(2012年3月)において、県が取り組むべき新たな課題の1つに「若年層を対象としだ啓発活動などの取り組みの強化」を挙げています。深刻化するデートDV被害の現状を、県および教育委員会、各市町村、学校関係者は真撃に受け止め、認識をしたうえで予防・防止教育に力点を置くことが求められています。将来の性暴力被害者・加害者を生まないためにも、若年層への予防教育は欠かせない課題です。まずDV予防啓発教育を目的とする「デートDV」講座の継続的な取り組みが必要です。
 大阪・SACHICOの活動開始を起爆剤に、性暴力被害者の回復支援をめざすワンストップセンターを開設しよう、という運動が医療従事者、弁護士、被害者支援組織などを中心に高まりを見せています。すでに、こうしたワンストップ窓口(レイプクライシスセンター)は全国に、11か所を数えています。
 いま、茨城も手をこまねいてはいられません。専門の支援スタッフによる電話・面接相談、産婦人科などによる緊急医療、法律関係者による法的支援、カウンセラーによる心理ケアなど、茨城県でも被害直後からの総合支援体制を、早期の構築することが重要です。県と市町村、教育委員会、警察など行政、医療など関係機関が民間のサポート組織が連携し、性暴力被害者回復支援のためのセンターの立ち上げに向けた、検討をスタートさせるべきです。