
Q:なぜ生産調整を廃止するのですか。
“減反廃止”生産量、農家が判断、担い手への経営集約を促すコメを作り過ぎて米価が下がらないようにするため、政府が毎年の生産数量目標を定め、都道府県に配分し、主食用米の生産量を調整するのが生産調整です。1970年から始まり、40年以上が経過する中、国民1人当たりのコメの消費量は、制度開始の当初より半分程度に減っています。いくら生産調整を強化しても構造的に主食用米の生産過剰が解消されないことが、廃止の背景にあります。
政府が生産量を決めることには無理があります。コメ作りを個々の農家の経営判断に任せる仕組みに変えることを通じて水田を意欲のある担い手に集約し、生産コストを低く抑える効率的な水田農業をめざします。
Q:これまでの補助金はどうなりますか。
現在は零細農家を含め、生産調整に参加するメリット措置(見返り)として経営所得安定対策の交付金が支払われています。実質的には、生産調整に参加して交付金を受け取るか、交付金を受け取らずに自由に主食用米を作るかを農家が選べるようになっています。政府は、この交付金を18年産から打ち切って生産調整をなくす考えです。10月末、政府内から「生産調整を3年後に廃止」との提案が急浮上しました。公明党は「生産現場の十分な理解を得る必要がある」と強く訴え、生産現場が混乱しないよう激変緩和に十分配慮することを求めました。
その結果、主食用米から飼料用米への転作を促すなどの経営所得安定対策の見直しの定着状況を見極めながら、5年後をめどに、政府が示す需給予測や在庫状況を参考にして農家が自ら生産量を決める仕組みに移行することになりました。
Q:経営所得安定対策の主な変更点は。
経営所得安定対策、水田維持に新制度、公明提案「収入保険」が前進生産調整への参加を条件に水田10アール当たり1万5000円を支給する「コメの直接支払交付金」(定額部分)について、14年産から7500円に縮減し、18年産から廃止します。米価急落時に全額公費で支給する「米価変動補填交付金」(変動部分)は14年産から廃止します。
また、主食用米から飼料用米、米粉用米、麦、大豆などへの転作を促す「水田活用の直接支払交付金」は、飼料用米と米粉用米を手厚く助成。収穫量に応じて助成額を増減する数量払いを取り入れ、10アール当たりの単価を8万円から最大10万5000円に増額します。
さらに、「日本型直接支払制度」が新設されます。
地域政策の観点から、国土保全や環境保全といった農業・農村の多面的機能の維持・発揮に着目した新制度です。地域別(北海道、都府県)、地目別(田、畑、草地)に単価を設定し、「農地維持支払い」と「資源向上支払い」で地域内の農業者が共同で取り組む活動を支援します。その上で、現行の中山間地域等直接支払制度と環境保全型農業直接支援は維持します。
全額公費で賄う「米価変動補填交付金」を廃止する一方、国と農家が拠出し、農産物の価格下落などで収入が減った場合に補填する「収入保険制度」の創設に道筋を付けることができました。当面は現行の「収入減少影響緩和対策」(ナラシ)を活用した制度で対応し、中期的にコメを含む全農産物を対象とした、収入保険に移行する方針です。
Q:一連の制度見直しで農業の全体像はどう変わりますか。
農林水産省は新制度によって、農業集落の平均所得が現状より13%増えると試算しています。とはいえ、農業従事者の平均年齢は66歳。耕作放棄地は今や約40万ヘクタールと埼玉県や滋賀県の面積に匹敵するまで拡大するなど、農業再建は容易ではありません。農家の所得を下支えしながら、担い手育成や需要拡大などを総合的に進めることが不可欠です。『活力創造プラン決定「所得倍増へ農政大改革」』
政府は10日、コメの生産調整廃止や経営所得安定対策の見直しを含め、農林水産品・食品の輸出倍増などを盛り込んだ「農林水産業・地域の活力創造プラン」を決定しました。同プランを踏まえ、「今後10年間で農業・農村の所得倍増をめざし、農政の大改革を実現する」(安倍晋三首相)としています。
プランは「強い農林水産業」「美しく活力ある農山漁村」の構築を掲げ、(1)国内外の需要拡大(2)農林水産物の付加価値の向上(3)生産現場の強化(4)農業の多面的機能の維持・発揮――という4本柱で構成。東日本大震災からの復旧・復興、林業の成長産業化、水産日本の復活にも重点を置いています。
このうち、国内外の需要拡大では、“和食”がユネスコの無形文化遺産に登録されたことも追い風とし、国内外の食市場を積極的に取り込みます。具体的には、農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略に基づき、2020年までに輸出を1兆円に倍増することをめざします。
国内については少子高齢化やライフスタイルの変化による需要の変化に対応し、介護食品の開発・普及、薬用作物や加工・業務用野菜の生産拡大を促すほか、学校給食、地産地消、食育の充実を通じ新規需要を掘り起こします。
付加価値の向上は、生産だけでなく加工、流通まで仕事の裾野を広げる「6次産業化」の市場規模を拡大。20年までに現状の1兆円程度から10兆円に伸ばすことを目標に、農商工連携や、医福食農(医療・福祉・食料・農業)連携を後押し。農山漁村の地域資源を活用した再生可能エネルギーの導入も促します。
生産現場の強化と多面的機能の維持・発揮では、生産調整の廃止と経営所得安定対策の見直しを通じて農家が主体的に経営判断できる環境を整えます。その上で、都道府県ごとに新設する「農地中間管理機構」(農地バンク)を活用。経営感覚を持ち、意欲のある担い手への農地集積を進め、耕作放棄地の発生防止・解消にも努めます。
政策目標として今後10年間で担い手の農地利用が全農地の8割を占める農業構造を築きます。また、現在約20万人の40代以下の農業従事者を40万人まで拡大することをめざします。