分散方式・一時保管の長期継続の是非別れる
指定廃棄物に関する市町村長会議 2011年3月11日発生した東日本大震災に伴う津波によって大規模な事故を起こした福島第一原発。原発事故によって発生した放射性物質により汚染された1キログラムあたり8000ベクレル以上の廃棄物の最終処分について、環境庁が主催する第3回目の県内市町村長会議が、12月25日水戸市内のホテルで開催されました。
 これには、小川信治環境副大臣、浮島智子政務官(公明党)、橋本昌知事らが県内市町村長ともに出席しました。井手よしひろ県議は、議論の推移を見守るために県議会ではただ一人傍聴しました。
 茨城県内では、平成25年11月末時点で、14市町村の15箇所に合計で3532トンの指定廃棄物が一時保管されています。
 第3回の市町村長会議までに寄せられて意見には以下の様なものがありました。
●茨城県内の指定廃棄物は、10年後に現在の量の10分の1になるという減衰データがあり、現在の保管で良いのであれば、集約しなくても良いのではないかとの考え方もある。
●指定廃棄物の保管量が少ない場合には、処分場を設置しなくても現状の保管をさらに強化することで対応できないか。
●県内の量からすれば、最終処分場は一箇所のほうが良いのではないか。
●県内複数箇所での現状保管も考慮して、国が統一した保管方式を示し、その個別対策について、国・県で具体的に措置すべき。
●指定廃棄物の候補地については、県内一箇所とする考えに拘る必要なない。
●今の保管状況で地元周辺に影響があるという話はあまり伝わってこない。それほど大きな問題になっていないのであれば、現状の保管のままでいいのではないか。
 また、最終処分場では放射線量が減衰して8000ベクレルを下回った指定廃棄物について、どのように対応するのかとの質問も寄せられました。これに対して、環境省は、最終処分場として長期間に渡り安全に管理していくことが重要とし、8000ベクレルを下回っても、その処分場で最後まで処分することが適切であり、取り出すことは想定していないと回答しています。さらに、指定廃棄物の指定解除について環境省の担当者は、「いったん指定廃棄物として指定された廃棄物であっても、その後の濃度減衰等により指定要件を満たさない状況(1キログラム当たり8000ベクレル以下)となったものについては、科学的にみて、廃棄物処理法に基づく従来の方法により安全に処理できるものです。そのため、指定解除により処理が円滑に進むのであれば公益性が高いと考えられることや。自治体等から指定解除の要請があることを踏まえ、指定廃棄物の指定解除プログラムを検討している」と説明しました。
 次に、こうした現状や市町村長から寄せられた意見をもとに、指定廃棄物の最終処分場を県内に1箇所設置した場合と既存の県内処分場で継続保管した場合のメリットとデメリットの説明がありました。
指定廃棄物の放射性物質減衰の推計 環境省は会議の席上、平成25年11月末時点において8000Bq/kg超の指定廃棄物等3,643トンを対象として、放射性セシウム濃度が時間経過に伴い8000Bq/kg以下に減衰することを考慮して、8000Bq/kg超の廃棄物保管量の経年変化を推計を公表しました。それによると、県内の8000Bq/kg超の保管量は、事故発生時点から4年後で約2分の1,8年後で約10分の1に、15年後には0.02%以下に減衰すると推計しました。
 その後行われた意見交換・質疑応答では、様々なの意見が出され、ひとつの結論を出すまでには、時期尚早の感がありました。
 今回の会議では、茨城県内の指定廃棄物の3分の1近くを一時保管している日立市から、分散処理(一時保管を長期に継続する)を容認する発言がありました。日立市では旧清掃工場のコンクリート製の建屋に厳重に指定廃棄物を保管しています。保管施設外部の環境放射線量も低い状態であることが報告されました。この提案は、非常に現実的な提案だと高く評価します。
 また、民主党政権下でいきなり最終処分場候補地に指定された高萩市長は、住民団体の意見も踏まえ、一箇所に最終処分場を決めることは住民の理解を得ることが困難であり、分散継続処分が妥当であると発言しました。
 一方、つくばみらい市や龍ケ崎市からは、「国の当初の方針通り最終処分場を国の責任で決めるべきだ」「広域市町村のごみ処理を行っている処分場では、地域住民は放射能を含んだ廃棄物の処理まで同意したものではなく、一時保管を続けることの説明は難しい」などの意見も寄せられました。
 さらに、放射性物質の減衰によって、8000Br/kg以下に低下した場合、指定を解除して国の管理から市町村の管理に移行することに対しては、強い反対意見が出されました。最後まで、国が指定廃棄物の処分を責任を持つ事が当然であるとの意見です。
 環境省は、こうした多様な意見を集約するためにアンケート調査を行いたいとの意向をしましました。北茨城茨城市長よりは「アンケート調査には反対。まず、指定廃棄物を保管する市町村長で話を詰めてはどうか」との意見も寄せられました。
 井手県議ら公明党は、「一時保管体制を充実・強化して継続保管する方式」を知事に対して要望しています。その前提には、最期まで国が責任を明確にする必要性があります。環境省と市町村長との真摯な協議の上、県民にとってよりよい結論が出ることを期待いたします。


指定廃棄物・処分地選定、結論先送り 1カ所集約に懸念
茨城新聞(2013/12/26)
 東京電力福島第1原発事故で発生した「指定廃棄物」の最終処分場候補地選定で、環境省と県内市町村長の会議が25日、水戸市内で開かれ、建設地を1カ所に絞る同省の方針に基づく案と、複数の仮置き場所で長期保管する案の二つに意見が分かれた。同省は近くアンケートを実施し、各市町村長の意向を確認する方針。
 同省によると、11月末現在、1キログラム当たり8千ベクレルを超える焼却灰や下水汚泥など県内の指定廃棄物は3643トンに上る。14市町内の15カ所で、遮水(しゃすい)シートで覆うなどして仮置き保管している。
 会議では、同省の方針を支持する意見として、「国が1カ所を選定することが県民の安全安心につながる。方針通り進めてほしい」(片庭正雄つくばみらい市長)、「津波や災害が起きた場合、今の保管場所で大丈夫だとは言えない」(本間源基ひたちなか市長)などの声が上がった。
 一方で、現状の仮置き継続を支持する意見として「県内1カ所の建設は基本的に反対。一つにすると危険性が高まる」(吉成明日立市長)、「国の責任で安全を期し、現在の場所で保管を継続して濃度の減衰を待つのが現実的だ。1カ所では合意形成が困難」(草間吉夫高萩市長)などの主張が聞かれた。
 さらに、「指定廃棄物ゼロの市町村が指定されれば、より強い反対運動が起こる」(鬼沢保平鉾田市長)、「保管している市町で話し合いを持った方がいい」(豊田稔北茨城市長)と、建設地を1カ所に絞る方針に慎重な意見が相次いだ。
 同省によると、本県の指定廃棄物の放射性物質の濃度は他県と比べて低く、現在8千ベクレル以上の廃棄物は、事故から4年後に約半分に、8年後に10分の1に、15年後に0.6トンまで減少が見込めるという。
 このため同省は、これまで想定していなかった8千ベクレル以下になった指定廃棄物の指定解除の手続きについて、「処理が円滑に進むのであれば公益性が高い」として、検討する考えを示している。
 会議の後、井上信治環境副大臣は「(同省の方針に)賛否両論出た。県と相談しながらアンケートをできるだけ早くやっていきたい。国として1カ所選定するのが安全性の面でベターだが、地域の意向を最大限尊重することもわれわれの方針。多くの意見が複数箇所での長期保管となれば、しっかり受け止める」と述べた。