山中伸弥教授  京都大学の山中伸弥教授が人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発でノーベル医学・生理学賞を受賞したことで大きな注目を集めている再生医療分野の法整備が、公明党の推進によって着実に前進しています。
 昨年秋の臨時国会では、細胞のもとになる幹細胞を用いた治療を、安全かつ迅速に行うための「再生医療安全性確保法」が成立、今秋にも施行されます。「再生医療安全性確保法」は細胞を治療に使う全ての医療機関に対し、リスクに応じた再生医療の実施計画を厚生労働省に提出させ、安全性を確保するのが狙い。無届けや虚偽が明らかになれば、治療停止命令のほか罰則も適用されます。
 一方、安全性確保法と同時に成立したのが、iPS細胞などを使った再生医療製品の早期普及に向けて、医薬品や医療機器などの安全かつ迅速な提供を図るための改正薬事法です。これまでよりも少ない症例でも、治験で安全性や効果が確認できれば、条件付きで製造や販売を承認することにしています。
 どちらの法律も、最先端の再生医療を国民が世界に先駆けて安全に利用できることをめざし、公明党が中心となって自民、民主両党に呼び掛けてまとめ、2013年4月に成立した「再生医療推進法」の内容を具体化するものです。
 再生医療は病気やけがで失われた臓器や組織を再生させる“夢の医療”として研究が続けられ、政府も成長戦略の柱の一つに位置付けています。
 もう一つ、再生医療を後押しする法律として注目されているのが、1月1日に施行された「造血幹細胞移植推進法」です。「造血幹細胞移植推進法」も公明党が主導して成立したもので、骨髄や末梢血幹細胞の提供・あっせんのほか、さい帯血を研究目的で利用できる規定なども盛り込み、山中教授が進めるiPS細胞をあらかじめ備蓄しておく研究にも弾みがつくとされています。
 昨年12月には「造血幹細胞移植推進法」施行を控え、公明党の造血幹細胞移植推進プロジェクトチーム(PT、座長=山本香苗参院議員)が、佐藤茂樹厚労副大臣(公明党)に対し患者・ドナー支援や、バンクの安定的運営などを要請。その結果、14年度予算案では13年度よりも関係予算が増額されました。

新春対談
 1月1日付の公明新聞に、山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長と、公明党の山口那津男代表の新春対談が掲載されました。iPS細胞研究が人の治療にどこまで近づいているのかなど、世界が注目する日本発の研究の未来について語っています。このブログでは、その内容を転載させていただきました。

iPS細胞を応用した夢の医療はもうそこまで来ている:公明党代表 山口 那津男
想像をはるかに上回る画期的な技術力が人類の未来開く:京都大学iPS細胞研究所所長 山中 伸弥

140110yamaguchi山口那津男代表:iPS細胞に対する山中先生のノーベル医学・生理学賞の受賞は、人類の大いなる希望です。私も感動しています。
 きょうは国民の皆さんの代表になったつもりで、山中先生に率直に質問させていただきたいと思います。iPS細胞を使った病気の治療や薬の開発に大きな期待が集まっていますね。

140110yamanaka山中伸弥所長:ありがとうございます。山口代表が言われたように、特に、iPS細胞を応用した再生医療はもうそこまで来ています。夏には、世界初のiPS細胞を用いた臨床研究として、患者の目の網膜への移植が始まります。

140110yamaguchi先生が基礎研究を始めたきっかけは、整形外科の臨床医時代に「難病の患者を治す方法を探したい」という思いからだったと聞きました。ですから、ノーベル賞の受賞後に「メダルは大切にしまい、もう見ることはない」と言われたエピソードは、これからの研究に向けた強い志を感じます。

140110yamanaka日本のiPS細胞技術を使った再生医療は、間違いなく世界をリードしています。
 その一番手が、世界の失明原因の3本指に入る加齢黄斑変性という網膜の病気への臨床研究です。iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を移植し、安全性と効果を確かめる研究です。

140110yamaguchiそのほか、パーキンソン病や脊髄損傷など、いろんな臨床研究が計画されているようですね。
 実は先日、全国小・中学校作文コンクールで、中学3年生の男の子の作品が文部科学大臣賞を受賞しました。彼は3歳の時に重い「1型糖尿病」を発症。膵臓のβ細胞が侵され、インスリンが正しく分泌されないために高血糖となり、インスリンを生涯、自分で注射しなければならなくなりました。
 自分の将来に絶望していた時に、iPS細胞に希望の光を見いだして、自分も研究者の道を歩もうと決めたことを綴った作品です。
 彼のような病気も治る可能性は高いのでしょうか。

140110yamanaka私たちの研究所も、インスリン依存性の糖尿病の研究に力を入れています。私の父も毎日インスリンを打っていましたので、その大変さは身に染みています。
 現在は、良い治療があります。また、脳死者などから膵臓の提供を受けて、インスリンを分泌するβ細胞を移植すれば血糖値が調整できます。ただ、移植症例数は多くありません。そこで私たちの研究所でも、iPS細胞からβ細胞を作る研究に毎日、奮闘しています。
 β細胞を作れたら、移植は実際に行われていますので、多くの人を救うことができます。

140110yamaguchi小学校の教師をしていた母が、病院の院内学級の担任をしたことがあります。難病の子どもが病に苦しむ姿を見るとつらい、と話していました。研究の早期成功を願わずにはいられません。
 そこで課題は、高い研究コストです。例えば、加齢黄斑変性の臨床研究では、1人当たり2000万円とも3000万円ともいわれています。コストを下げるには、どうすればよいのでしょうか。

140110yamanakaポイントがあると思います。1番目に「安全であること」。2番目に「有効であること」。3番目に「コスト的に高価でないこと」。この三つが、その順番で大切です。
 今までの治療と比べて「安全」で「有効」であれば、多くの患者がその治療を望み、多くの企業や臨床医が使いたいとなれば、コストはその技術開発と反比例して下がっていくと思います。
 もちろん、工夫も必要です。血液には血液バンクがあるように、多くの人が使える「iPS細胞ストック」を大量に作れば、価格はグッと下げられるはずです。

140110yamaguchiさい帯血は白血病など多くの患者の命を救っていますが、保存から10年以上たったり、移植に適さないさい帯血は処分されます。そのさい帯血を使ってiPS細胞をストックできるようにするため、公明党が努力して「造血幹細胞移植推進法」を成立させました。この法律は、まさに1月1日からの施行になります。

「人材のストック」という仕組み必要

140110yamanakaさい帯血バンクは私たちにとって宝の山です。たった1人の赤ちゃんのさい帯血から作られたiPS細胞が何千人、何万人もの治療に役立つ可能性があります。この法律の施行は、iPS細胞ストック計画にとって、大きなステップになります。本当に感謝しています。

140110yamaguchi政府は、今後10年間で1100億円の予算を用意し、iPS細胞ストック関連の研究などに当初200億円と、毎年約90億円規模の支援を行います。 

140110yamanaka10年間という大きなご支援は、非常にありがたく思っています。
 ただ、求められているのは、大学の教員や事務職員のほか、規制の専門家や生命倫理の専門家、企業と連携する契約の専門家、社会に対して私たちの研究を分かりやすく伝えるサイエンスコミュニケーターのような多様な人材です。
 しかし、大学には、こうした人材を終身雇用する力がありません。10年間の期限付きでは、今、30歳の人も10年後の40歳になって、「はい、雇用は終わりました」と言われるとつらい。
 この研究所には約200人の教職員がいますが、9割に当たる180人は有期雇用です。優秀で頑張っておられる方には、無期雇用をどのように担保できるか頭を痛めています。国や大学のシステムが変わらないと難しいです。

140110yamaguchiその通りですね。「iPS細胞ストック」だけではなく、「人材のストック」という仕組みが必要です。

140110yamanakaはい。人こそが財産です。まさに「人財」。
 日本の民間企業には、能力と経験に見合った待遇で雇用されている優秀な「人財」がいます。民間企業並みの待遇を提供することはできないのが現状です。

140110yamaguchi私たち政治の側も、日本発の世界最先端の研究を支え、世界に発信し続けられる雇用の確保に最大限、力を入れてまいります。きょうは貴重なお時間、大変にありがとうございました。

文部科学大臣賞 「過去と未来、そして現在」
愛知県・名古屋大学教育学部附属中学校3年 加藤 敦也

 三歳の私、かつて健常児だった頃、病気も熱すら出たこともないような子どもだった。何の不自由もなく平凡な毎日を送っていた。
 三歳後半から、それは突然にやってきた。なぜか?体がだるくて力が入らなくなった。(おかしい、どうしてだろう、熱もないし。)倒れ込むように寝てばかりの生活になり、歩行も難しくなっていた。検査結果は十万人に一人の発症率と言われる病気だった。それは『1型糖尿病』幼い時期に発症する例が多く、小児糖尿病とも呼ばれている。<中略>
 私は、三歳の発症当時から自分で血糖測定を覚え、小学校低学年になると自分で注射をした。中学年になると給食の量を見て、カロリー計算もできるようになった。三歳から血糖測定と注射、低血糖の痛みに耐えながら、みんなと同じように幼稚園や学校生活を送ることは決して容易ではなかった。家族は勿論、級友の支えのお陰で、今の私がこうして存在すると言える。中学生の今、注射の痛みより注射の手間、それが最も苦痛である。注射を打つのを忘れたこともあるし、インスリンの量が合わないと低血糖で意識がなくなったり、かなりの高血糖で意識がもうろうとすることもある。これに加えて感染症を拾いやすく、小学生までは、入院することも多かった。そして、食べたいものや、運動を制限されることもあった。食べ物は幾らでも我慢できたが、みんなと同じように行動できないことが、当時は悔しくて、よく泣いたものだ。また、幼い頃から『治ることのない病気』と理解していたので、自分の将来に絶望していた。
 そんなとき、一筋の光を与えてくれたのが再生医療である。今では再生医療も有名となり、iPS細胞によって患者は生きる希望を見つけた。私もその一人である。そのiPS細胞も一気に研究が進み、分化の階段まで達している。どんなタンパク質を与えたら、何ができるのか?自由に欲しい臓器を作り出す、そんな夢のような研究が、優秀な研究者らによって進められている。私は山中伸弥教授がノーベル賞を受賞される前の7月7日に京都大学のサイラ施設(iPS細胞研究所)を見学させていただいた。ノーベル賞受賞後には神戸まで足を運び、山中伸弥教授や岡野栄之教授らの講演会に参加した。最前列の席で質問ができ、教授らの貴重なご意見も伺えた。 <中略>
 私が病気になった当時、12年半前にこのような研究をいったい誰が予測したであろうか。現代、再生医療は、急速に進化を遂げている。<中略>
 この先、十年後の未来はどうなっているだろうか。研究も臨床実験が終わり、認可も降りて、患者が次々に治療を受ける光景が当たり前の世の中になっているのかもしれない。治らない病気と言われてきた幾つかの病気が容易く治る時代になっているであろう。 私たち患者は、それらの研究を期待しつつ、病気が悪化しないように現状維持し、治療をしながらそのときを待つのである。
 私たち患者は、今を必死に生きている。今日という一日を大事に生きる。病気になった私たちだから言えること。それは、「平凡な毎日を過ごせることは幸せである。昨日と同じ穏やかな一日が、また今日もやってきて、されにまた明日も続くこと、平凡に生きること、それこそが最大の喜びである。」
 患者として、研究者を目指す者として、私は今、希望を持ち、強い意志で、研究者の志を受け継ぎたい。未来への扉を開けるために。

第63回全国小・中学校作文コンクール:文部科学大臣賞「過去と未来、そして現在」愛知・名古屋大学教育学部附属中学校3年 加藤 敦也